※VOL.1から続く。
『餃子の王将』の運営会社社長が射殺された事件の判決公判が、2026年10月16日に開かれ、殺人などの罪に問われた特定危険指定暴力団・工藤会系組幹部の男に無罪が言い渡された。
工藤会系組幹部の被告とは、一体、どんな人物なのか。記者に宛てた手紙に記していたこととは…。
「“容疑者逮捕”ではなく“犯人逮捕”」
2022年10月。『王将事件』発生から9年後、京都府警に逮捕された田中幸雄被告(59)。

『王将社長殺害事件』の真相を追い続ける『週刊文春』の西岡研介記者に届いた手紙には、警察や検察に対する不満も綴られていた。

▼田中幸雄被告からの手紙 ※提供:週刊文春編集部
「私は、逮捕されてからの3年半の接見禁止。しかも検察のいじわるによって事件に関する記事は削除というおまけまで付帯されました。いささか人権蹂躙に思えますが…」

▼田中幸雄被告からの手紙 ※提供:週刊文春編集部
「新聞等含めて全ての記事がマジックで黒く塗り潰され、どのようにこの事件が報道されたのか、全く持って知り得ておりません。ですが、想像はつきます。あれだけのストロボの閃光を絶え間なく浴びせられたのですから、おそらくではありますが、警察は所轄へ護送される私の姿を大々的に報道させたのでしょう」

▼田中幸雄被告からの手紙 ※提供:週刊文春編集部
「そして裁判の前に“容疑者逮捕”ではなく“犯人逮捕”であると印象づけたかったのでしょう。本当に酷い仕打ちでありました」

「私は決して犯人ではありません」
2025年11月、京都地裁で始まった田中被告の裁判。犯人の目撃情報など直接的な証拠がないなか、争点になったのは田中被告の“犯人性”だった。

「田中被告の公判というのは、彼が“実行犯か否か”っていうことだけが争われている。彼に誰がいつどういう指示をして、共犯は一体、誰なのか、その全体的な事件の構図を描いたのは誰なのかっていうのは、全く明らかにならない」(週刊文春 西岡研介記者)

初公判で田中被告は起訴内容を否認。法廷で「私は決して犯人ではありません」と力強い声で無罪を主張した。

一方、検察は、事件現場に落ちていたタバコの吸い殻に付着したDNAなどを証拠として田中被告を実行犯と主張した。

秘め事・暗部を明かさないのは“男の矜持”
2026年3月に開かれた被告人質問(第10回公判)で田中被告は、一切の証言を拒否。

裁判の山場となる被告人質問は異例の取りやめとなった。田中被告は、手紙に法廷で証言しないことを“男の矜持”と綴っている。

▼田中幸雄被告からの手紙 ※提供:週刊文春編集部
「ヤクザ者に守秘義務なるものはございませんが、私は一命を賭して任侠道に邁進すると心に決めた以上、その決心には一片の曇りも持たぬよう努力しております」

▼田中幸雄被告からの手紙 ※提供:週刊文春編集部
「ですから自分が無期だろうが、死刑だろうが、秘め事、暗部を明かしてしまっていいとは思いません。そういう教育を受けてきました。他の人は分かりませんが私はそういうものが、男の矜持だと思いますし、そこにロマンを感じます」

「全体的な文章から伝わってくるものもひとつなんですけど、やっぱり『何かを腹に持って、彼は今も生きているんだな』と」(週刊文春 西岡研介記者)

「やっぱりこの事件は、裏返せばですよ、僕らが知らない秘部とか暗部とかがあるんだっていうのは、逆に彼の、その手紙から確信しましたね」(週刊文春 西岡研介記者)

2026年6月に開かれた論告求刑公判(第11回公判)。

検察は、現場に落ちていたタバコの吸い殻は、第三者により持ち込まれたと考えられる余地はないと指摘。

「組織的・計画的な犯行」「背景に首謀者の存在がうかがわれることを考慮しても上限近くの刑を選択することが相当」などとして田中被告に無期懲役を求刑した。

一方、弁護側はタバコの吸い殻について「組織内の別の者が陥れようとして吸い殻を持ってくることも不可能ではない」「真犯人が遺留したとも考えられる」と主張。改めて無罪を求め裁判は結審した。

田中被告からの手紙は、こう締めくくられていた。
▼田中幸雄被告からの手紙 ※提供:週刊文春編集部
「一言、言わせて頂きます。公判では偽りなきところを述べました。私は事実を口にしただけですが、それを聞いた人がどう受け止めるかは、私の知るところではありません。令和8年7月9日 田中幸雄」

「いくら自分が無罪を主張しようと『受け入れられないんだろうな』っていうような諦めが出ている。僕自身に対してもね『あなたも私のこと無罪やと思ってませんよね』っていうのが、多分、出てると思うんですよね。これ以上、彼に聞いても、無駄とは言いませんけれども、余り成果は得られないだろうなとは思いましたね」(週刊文春 西岡研介記者)

「田中被告が有罪でも無罪でも彼の犯人性を問うだけなので、共犯はおろか、指示役、首謀者、全く分からないわけですよね。事件の全容が分からないんで、判決が出ても、いずれの判決が出たって、もやもやしたままずっと終わる。人が1人殺されている事件なのに関わらず、未解決事件として終わる可能性があるわけですよね」(週刊文春 西岡研介記者)
※VOL.3へ続く。
(テレビ西日本)

