札幌市に住む中島晴都くん。特別支援学校の高等部に通う16歳です。
「なんだか気になるね」(父親・中島哲さん)
「(取材班を見て)写真!」(晴都くん)
「写真じゃなくてカメラ」(母親・靖子さん)
「動画だよ」(哲さん)
「小学生の時に同じのを何回もやっていたら、とても手先が器用になって」(哲さん)
「ずっとつきっきりで同じものを何度も切ったりしながら練習して、今では学校で先生に褒められるくらい」(靖子さん)
晴都くんには知的障害と発達障害があります。納得がいくまで、ひとつのことに集中します。
集中が途切れると、今度はじっとしていられません。
人の多い場所や大きな音も苦手で、周囲の環境がストレスになります。
このストレスが原因で3年前、中学部の時にスクールバスに乗ることができなくなりました。
「朝、行き渋りが結構増えて」(靖子さん)
「周りの子どもたちの声とかが(バスの)狭い空間の中で飛び交っていることが多分気になったんだろうなと思います。ごめんね、嫌な話、思い出させるの嫌だよね」(哲さん)
父親の哲さんは、晴都くんがいる前では当時のことに触れたくないようでした。
何があったのか、職場で話を聞くことができました。
「頭突きとか、自分でもコントロールできないフラッシュバックによる他害が出たのは、中学2年生の時ですかね」(哲さん)
当時、晴都くんは自宅の壁などをたたくようになったといいます。
スクールバスの混雑や教室の狭さなどがストレスの原因でした。
少子化が進む中、特別支援学校に通う児童生徒が増えています。なぜなのでしょうか。
「早くに(障害が)分かるようになって、より手厚い環境を希望して特別支援学校を選択するということが増えてきた」(北海道教育大学 釧路校 戸田竜也 准教授)
児童生徒の増加に追いついていない現実。元教員は、学校の狭さが問題になっていると話します。
「(児童生徒の増加で)教室が足りなくなる。そうすると特別教室をつぶして普通教室に変えていかざるを得ない。私がいた札幌市内の学校では、図書室がなかった時がありました」(特別支援学校の元教員 藤田明宏さん)
文部科学省によりますと、教室が不足している特別支援学校は全国で3000以上、北海道で100を超えています。
UHBが独自に行ったアンケートでは、特別支援教育に関わる教員の68.6%が「児童生徒の増加は課題だ」と答えました。
これは大阪の特別支援学校です。教室に窓がありません。
児童生徒が増えたため、教材などを保管している部屋を教室として使っているのです。
北海道では、1つの教室を区切って使っているケースもありました。
「(教室を)パーティションで区切る場合は、一番音が気になる。隣(の教室)でパニックになった子がワーってなったときに隔てられてるけれども、こっちにいる子どもたちも落ち着かなくなってしまう」(藤田さん)
児童生徒が増える一方で、教員は不足しています。
「ほとんどの小中学校で支援学級が設置されていて、すごく規模が大きくなっていると感じます」(中学校の特別支援学級 担当歴16年の教員)
「先生の数が足りていない。休職、辞職の後の穴埋めの先生がすぐに来ることは今はまずない」(小学校の特別支援学級 担当歴15年の教員)
こう話すのは小中学校の特別支援学級を担当する教員です。
児童生徒が増えると、1人の教員が複数の学年を受け持つこともあるといいます。
「(例えば)1年生に教えている間、他学年の子には『プリントをやっててね』と。ある程度やったら渡っていく。でもマンツーマンでついてあげないとできない子もいる。教える側の人数が増えるといい。手厚く見てあげられる」(小学校の特別支援学級 担当歴18年の教員)
専門家は、現場の教員に問題が丸投げされていると指摘します。
「先生が担う役割や責任をもう少し小さくしていく。専門家と協働するような学校の在り方に変わっていかないと、学校自体がこの後大変なことになっていくんじゃないか」(戸田准教授)
晴都くんが2026年に進学した高等部は校舎が広いため、大きなストレスは感じていません。しかし…
「中学生も来て、倍くらいになった時に、どれくらいのスペースになるのか想像がつかない。不安がないといえばうそになります」(父親・哲さん)
児童生徒が増えすぎたため、2028年から晴都くんの高等部の校舎に中学部を設けることが決まりました。
