高市総理が「私の知恵袋」と称してきた簗和夫農林水産大臣が辞表を提出、事実上の更迭となりました。
発端となった“予算カット”発言に加え、公職選挙法違反の疑いが浮上する中で一気に加速しました。
政治ジャーナリストの青山和弘氏が独自取材をもとに一連の裏側を解説。
“更迭”の決め手は予算カット発言ではなく、選挙中のシャトルバス無料送迎問題だったと指摘します。
■ 決め手は「予算カット」発言ではない
そもそもの発端は、簗大臣が地元で行ったとされる“予算カット”発言でした。自身の選挙で支持しなかった首長がいる自治体の道路予算を、「大幅にカットした」という内容で、税金を“報復の材料”に使ったかのように受け取られる発言として大きな批判を浴びました。
簗大臣は当初、「誤解を招くような発言だった」として釈明しましたが、3日後には一転して撤回・謝罪に追い込まれました。
青山氏は独自取材に基づき、この予算カット発言だけでは更迭には至らなかったと分析します。
【青山和弘氏】「予算カット発言については、『実際には予算に影響を与えなかった、背伸びして(話を)盛りすぎてしまっただけだ』という防衛ラインで乗り切れると思ってきたし、ずっとそのラインできていた。
ところが一転、更迭になった背景には、“予算カット”発言に上乗せするような形で、シャトルバスの問題が出てきた」
更迭の決定打となったのは、選挙中に支持者をシャトルバスで無料送迎したとされる問題です。
駐車場から演説会場までバスを使って有権者を無料送迎したとされ、公職選挙法に触れる可能性があります。
【青山和弘氏】「国民の税金の使い方の問題とは桁が全く違いますが、公職選挙法に触れる、法律に触れる可能性はある。
これに対する簗さんの説明が安定しない。担当していた秘書さんもだいぶ入れ替わっていて、簗さんは秘書に対しても高圧的な発言が目立っていたという取材結果も出ていた。
その中で、“法律違反”については守りきれない、これが最後の引き金になった」
■ 高市総理の答弁が一変「阿吽の呼吸」で辞表提出へ
簗大臣が“自ら”辞表を提出しましたが、青山氏は「事実上の更迭」だと見ています。
【青山和弘氏】「シャトルバスの問題が出てきてからというもの、高市さんの答弁での言いぶりがすっかり変わりました」
それまで高市総理は「しっかりと説明をした上で、襟を正して職責を全うしてほしい」、「とにかく働いて仕事で返せ」と続投を支持していたものの、予算委員会で「発言が事実なら不適切でダサいと思います」、「行政の運営をしていっていいのかどうか、私はしっかりと考えさせていただきます」と発言。
さらに「仮に違法性が大いに疑われると判断したときには、人事上のことも躊躇しない」と更迭をにじませる言葉を続けました。
【青山和弘氏】「簗さんもきっちりとした説明がどうやら難しいという現状の中で、一種、“阿吽の呼吸”で辞表を出さざるを得なくなった。そしてそれを受け入れたということ」
■ アンケート人事の落とし穴
そもそも、なぜ簗氏が農水大臣に任命されたのか。
青山氏はその背景に、高市総理が閣僚人事の際に重視した“役職希望アンケート”の問題点を指摘します。
【青山和弘氏】「高市総理は今回の閣僚人事を決める際に、このアンケートを重視し、一種の「能力主義」で選んだと言っている。 ただこれには、実は大きな落とし穴がある」
閣僚の中には出身省庁の大臣にそのまま就任した例が5人おり、自分が詳しい分野をアンケートに記入しやすいという構造的な偏りが生じていたといいます。
【青山和弘氏】「このアンケートは、自分が自分を推薦するもの。 閣僚の名簿を見ても、5人の閣僚は、自分の出身省庁の大臣にそのままなっている。
なぜかと言えば、自分がそこで働いていたんだから、このアンケートにいろいろ書くのは得意に決まっている。能力主義と言えば聞こえはいいし、それは別に悪いことではないが、決して政策に詳しいだけが大臣の資質ではない。
これまでは推薦や、色んな人の声を聞いて、政策にはそんなに詳しくはないかもしれないけど、政治家としてリーダーシップがあるとか、これまで黒子で頑張ってきた、そういったことも1つの理由になってきた。
今回、「政策に詳しい」ことだけで選んでしまったから、簗大臣という人がどういう政治家として資質を持っているかといったところが抜け落ちてしまった結果なのではないか。
党内に人脈の少ない高市さんが、自分が出したアンケートに頼ってしまった。その落とし穴がここに出てしまったということも言えるのではないか」
■任命前の“身体検査”では資質までは分からない
【青山和弘氏】「身体検査といっても、それほどすごいことをするわけではない。過去の犯罪歴であるとか、どういった報道がされていたかとか、そういったことはもちろん調べられます。 官僚の情報もありますので。ただ、その人の本当の評判とか、仕事の仕方とか、そういうものは分からない。
さらに今回、アンケートで決めるというのは、まさに高市さんが独断でやったこと。よく言えば、高市さんが他の人に相談しないで決めたこと。
だからこそ高市さんは『自分の間違いを認めたくない』という思いも強く働いた。 だから後手に回ってしまった。
高市さんは、この前の国会が終わった際、『反省点は特にないと』言い切った人。つまり『自分のやっていることは正しいんだ』という思いの強い、非常に強気な総理大臣です。
その強気さが、簗さんを守りたいという思いにつながって、結局、(“予算カット発言”の”)報道が出てから2週間。こうやって傷口を広げる結果になってしまった」
■地元でも…「簗さんの姿勢そのものに疑問符」
高市総理が周りの人の声をを聞いてたら、簗大臣は任命されなかった可能性があると青山氏は指摘します。
【青山和弘氏】「簗さんは農水行政に精通してる、これは間違いないこと。ただ農水官僚に聞いても、かなり高圧的な発言で、これまでも厳しく言われてきたということはいくらでも話が出てくる。
地元でも今回、選挙で落ちて比例復活した。保守分裂選挙になった、1つの原因は簗さんの姿勢にあったということも地元を取材すればいくらでも出てくる。
こうしたことを、高市さんがどう受け止めたかどうかまでは分かりませんけれども、そういった情報が入っていたのかどうか。ここは今後、高市さんが政権運営をしていく中でも重要なポイントになってくる」
そのうえで、大臣に“政治家”が就くそもそもの意義と重要性を指摘します。
【青山和弘氏】地元の事情はあるんですけれども、かつて簗さんを担ぎ出した、県議会の大物とかも今は“対抗馬”の方にいってしまった。県内の色んな事情もあるにせよ、簗さんの姿勢そのものに、疑問符が付けられたということもあった。
そういった事情も全て勘案するのは、総理大臣には難しいとは思いますけど、一定程度、政策に通じてれば大臣になれるというのは、私はやっぱり違うと思う。 政治家をトップにつける理由は、リーダーシップであったり、国民の代表としての資質が問われる。 ここは忘れちゃいけないポイントだと思います」
(関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」2026年10月15日放送)
