石川県小松市にある航空自衛隊小松基地で、戦闘機がF-15からF-35Aに更新されることに伴い、周辺の騒音区域が42年ぶりに見直されることになった。F-35Aの高いエンジン出力により、移転の対象となる区域は従来の3倍以上に拡大する一方、住宅の防音工事の補助対象区域は縮小され、対象から完全に外れる自治体も出るなど、地域によって明暗が分かれている。住民からは「町会が分断される」といった不安の声が上がり、地元自治体も市街地の空洞化を懸念している。
42年ぶりの見直し、背景に最新鋭戦闘機F-35A

1984年以来、42年ぶりに航空自衛隊小松基地周辺の騒音区域が見直される。2026年10月13日、近畿中部防衛局の五味賢至局長が小松市の宮橋市長を訪れ、騒音度調査の結果を取りまとめたことを報告した。

今回の見直しの背景には、最新鋭ステルス戦闘機F-35Aの配備がある。小松基地では2025年からF-15戦闘機に代わるF-35Aの配備が始まり、2029年度までには約40機が配備される計画だ。これに伴い、防衛局は2026年3月まで騒音の変化を調査していた。

その結果、住宅の防音工事の対象となる「第一種区域」は、現在の約6400ヘクタールから約5000ヘクタールへと約20%縮小されることが分かった。戦闘機の運用方法の変更や飛行回数の減少が要因として挙げられている。その一方で、基地に近く移転の対象となる「第二種区域」と「第三種区域」は、F-35Aのエンジン出力が高くなったことから、範囲が合わせて3倍以上に拡大した。
拡大する移転対象区域、懸念される「市街地の空洞化」
騒音区域の見直しは、特に基地を抱える小松市に大きな影響を及ぼす。防音工事の対象となる第一種区域の範囲は大きく変わらないものの、移転対象となる第二種・第三種区域が大幅に拡大されるためだ。

この結果を受け、小松市議会の全員協議会では議員から、「地元に残りたいとか、ここを離れたくないとか、いろんな思いもあると思う。特に二種・三種区域には、ある意味直接的な交付金の形を取るとか、手厚いことをぜひやって欲しい」と、きめ細やかな支援を求める声が上がった。

小松市の宮橋市長も「今後の街づくりに大きな影響が出てくる。移転に伴う市街地の空洞化が考えられますし、コミュニティの維持をどうしていくのかということも考えられる」と危機感を示し、「移転先を市内に確保できるような体制を国に対して求めていきたい」と述べた。防衛局側は「影響が街の方にもあるということは当然しっかりと認識しなければならない。できることについてはできる限り取り組んでまいりたい」と応じている。
「あまりに大雑把」周辺町会の説明会で不安と不満の声

10月14日、防衛省は小松基地周辺の105の町会などで作る協議会の理事会に対し、説明会を実施した。しかし、冒頭を除いて非公開で行われた説明会では、住民側から不安や不満の声が相次いだという。

出席した理事からは、新たな区割りによって町会が分断される可能性を懸念する声や、より詳細な情報開示を求める意見が出された。「これだとあまりにも大雑把すぎて分かりにくい。防衛局からの発表があれば、それは修正が効かないという説明も受けたので、それまでに何とかしたいと思うけど、どうしたらいいのか」と、戸惑いを隠せない。
また、別の理事は「ある程度決まったら、もう変わらんみたいなのをポンと出して来るだろう。それはやっぱり何とかならんのかな。もうちょっと地元の意見を聞くとかね」と、不信感を口にした。
「詳細は告示まで明かせず」防衛省は“客観的データ”強調

住民から噴出した不安の声に対し、防衛省側は「いろんな不安とか、そういったものについて、しっかりと受け止めてご説明をして真摯に対応していきたい」と述べるに留め、新たな騒音区域の詳細については、今年度中に予定している告示まで明かせないとの姿勢を崩さなかった。
担当者は「実際どの時点で公表するかというと、そこは告示の時点で発表する。調整をする性質のものではないと考えておりまして、客観的な騒音をもとに科学的・客観的に決めていく」と説明。あくまで客観的な騒音データに基づいて決定されるものであり、住民の意見によって変更するものではないことを強調した。この姿勢が、住民感情との溝を深めている側面もある。
「電話もできない」騒音と「仕方ない」補助対象外の声
今回の見直しで移転対象の第二種区域に入る可能性がある町会は4つある。住民が減っていくことへの心配は現実的な問題だ。騒音の程度について尋ねられた住民は「もう電話しても電話できません。完全ストップ。テレビも聞こえない」と、日常生活に深刻な支障が出ている実態を語る。

一方で、見直しによって全域が防音工事の補助対象から外れることになった川北町の住民からは、比較的冷静な声も聞かれた。補助がなくなることについて、ある住民は「仕方ない。それしかないです」と話し、また別の住民は「飛んでなければいいかなと思う。別にそんなストレスが今すぐかかるかといったらそこまでは」「たまに夕方飛んできますけど、そんなに苦にはならない。(補助が)無くたって私は良い」と、現状を受け入れている様子だった。

防衛省は今年度中に新たな区域を告示した後、1年半の周知期間を経て、2028年秋ごろからの適用を目指している。この周知期間中、現在補助対象となっている住宅については防音工事の希望を受け付ける。また、新たに区域内に含まれた地域については、適用日までに建設された全ての住宅が防音工事の対象となる。国の安全保障政策が、地域住民の暮らしに大きな問いを投げかけている。
(石川テレビ・10月13日、14日放送)

