イギリスを拠点に活動する正体不明のストリートアーティスト、バンクシー。その作品は世界中の壁に出現し、社会風刺や反戦の強いメッセージで知られている。10月10日から金沢エムザで開かれる『バンクシー&ミスター・ブレインウォッシュ展』では、そんな彼の作品約100点以上が一堂に会する。中には、過去に14億円で落札された作品の版画や、1,650万円で購入できる直筆サイン入りの希少な一枚も。バンクシーが認めたもう一人のアーティスト、ミスター・ブレインウォッシュの作品と共に、その魅力に迫る。
世界中の街角や壁に、予告なく作品を残していく正体不明のアーティスト、バンクシー。社会風刺や反戦といったテーマを扱い、その作品は常に世界的な注目を集めている。そんなストリートアート界の巨匠の作品を集めた展覧会が、10月10日から金沢エムザの8階で開かれる。会場にはバンクシーの版画作品など、約100点以上が展示される予定だ。
展覧会の担当者である本間靖一郎氏は、バンクシーの作品の魅力について、そのメッセージ性にあると語る。特に有名な作品の一つが、多くの人が一度は目にしたことのある『風船と少女』だ。
「皆さんもご存じのとおり、『風船と少女』はバンクシーの代名詞のような作品です」と本間氏は説明する。通常、風船は丸く描かれるが、この作品ではハートの形をしている。これは「愛や夢、希望」を象徴しているという。少女の手から離れて飛んでいく風船だが、そこには「努力をして頑張ったら必ず掴めるんだよ」という、希望を与えるメッセージが込められているのだ。可愛らしい絵の中に込められた深いメッセージ性が、バンクシー作品の大きな魅力の一つといえる。今回展示される中には、風船がイギリスの国旗であるユニオンジャック柄になった珍しいバージョンもある。
展覧会の中でも特に注目される作品の一つが『フラワースロワー』だ。火炎瓶を投げつけようとする若者の姿が描かれているが、その手にあるのは火炎瓶ではなく、色鮮やかな花束だ。
この作品の背景には、バンクシーが若い頃に目の当たりにしたパレスチナとイスラエルの紛争がある。本間氏によると、バンクシーは戦地まで出向き、若い青年たちが火炎瓶を投げる姿を見たという。その光景から、「それでは何も解決しない、愛を送りましょう」という思いで、火炎瓶を花束に描き変えたのだ。この作品が元々描かれた場所は、国境を隔てる壁の上だった。
この作品の価値は計り知れず、2021年にニューヨークのサザビーズで開催されたオークションでは、スプレーアートで描かれた『フラワースローワー』が14億円という驚異的な価格で落札された。一つの作品に込められた平和への願いが、それだけの価値を持つということの証明でもある。
今回の展覧会では、作品を鑑賞するだけでなく、一部を購入することも可能だ。中でも最も高額な作品は、1,650万円の値が付けられている。
その作品は、ドーナツのキッチンカーを警察官たちが警護しているという構図だ。本間氏は「キッチンカーを警護する必要が本当にあるでしょうか」と問いかける。これは、バンクシーによる警察への皮肉が込められた作品であり、「過剰な警護」をテーマにしているという。
この作品が特別なのは、メッセージ性だけではない。作品の隅にはシリアル番号と共に、バンクシー本人の直筆サインが入っているのだ。本物であることの証明であり、その価値をさらに高めている。庶民にはなかなか手が届かない金額かもしれないが、実際に足を運んで本物の作品を購入できる機会は非常に貴重だ。
会場では、バンクシーに認められたフランス出身のアーティスト、ミスター・ブレインウォッシュの作品も展示されている。鮮やかな色合いで、ユーモアと風刺を融合させた作風が特徴だ。
展示されているオリジナル作品は、版画でありながら手彩が加えられた一点物。作品の中にはバンクシーへのオマージュが散りばめられており、『風船と少女』や『フラワースロワー』、『ラフナウ』のチンパンジーといった、バンクシーの代表的なモチーフが登場する。本間氏は「バンクシーを崇拝している形の作品」だと解説する。
この作品の裏側には、ミスター・ブレインウォッシュのサインと、王冠のマークの中に彼自身の指紋が押されている。さらに「1分の1」という表記もあり、これが世界に一つしかない一点物であることを示している。また、彼は2025年にウォルト・ディズニーと正式契約を結んでおり、会場にはミッキーマウスをモチーフにしたポップな作品も並ぶ。
本間氏は、展覧会を訪れる人々に向けて「バンクシーにしてもブレイン・ウォッシュにしても、作品にはメッセージがきちんと出ています。それをご自分の目で確かめて、十分楽しめるイベントだと思いますので、ぜひご来場をお待ちしております」と呼びかけた。
会場内では、作品をプリントしたトートバッグやTシャツなどのグッズも販売されている。ストリートアートの持つ力強いメッセージを、ぜひ会場で体感してみてはいかがだろうか。
