リングの上で北方領土の返還を訴える、元島民3世の女性レスラーがいます。
彼女の夢は、いつか北方領土のリングでロシアの選手と一緒にプロレスの試合をすることです。
「北方領土志発島(しぼつとう)元島民3世、七星!」(リングアナ)
根室市で開かれたプロレスの試合。
『未来にひびけ、四島へのゴング!』と題し、プロレスをきっかけに北方領土問題を知ってもらうのが狙いです。
企画したのは、根室市出身のプロレスラー、七星さんです。
アンドレザ・ジャイアントパンダで有名なアマチュア団体、地元の新根室プロレス出身。
「北方領土でプロレスをやりたい!」(北方領土元島民3世 七星さん)
東京でプロデビューし、現在は大阪の団体に所属。
9月にチャンピオンになり、この日は凱旋試合に。
試合前日、同じ団体のフライング・ペンギン選手と納沙布岬を訪れました。
「ようこそ、東の端っこへ」(七星さん)
「来てしまいましたね」(にわ女子プロレス社長 フライング・ペンギン選手)
「来てしまいました。ようこそ。きょう見えるね。いい日だわ」(七星さん)
「水晶島とかも、きょう、めちゃくちゃ天気いいから」(七星さん)
「平べったいやつ?」(フライング・ペンギン選手)
「そうそうそうそう。北方領土は4つあって、私のルーツは志発島ね。(歯舞群島で)一番大きいやつ」(七星さん)
「父方の祖母が引揚者で、父親が元島民2世で、私が3世。ちっちゃいときから、ホント物心つく前からずっと島の話を聞かされて。自然と元島民なんだなという意識はありましたね」(七星さん)
北方領土問題とは、第二次世界大戦の終戦前後、当時のソ連が占領した択捉島・国後島・色丹島・歯舞群島の北方四島を、日本が返還するよう求めているものです。
ロシアはいまも領有権を主張しています。
「北方領土の活動ってどんなものか。もっと激しいものだと思っていた。『返せ、この野郎』みたいな。プロレス的な感じかなと思っていたら、意外と穏やかで、平和に行こう。プロレスと通ずるものがある。お互いを信頼し合って技を受けたり、技をかけるほうも相手の信頼が」(フライング・ペンギン選手)
「自分の中では、(納沙布岬に来るのが)墓参りみたいな、やらなきゃならないな、みたいな。ここに来て決意を新たにというか。自分がやるべきこと、自分にしかできないことを、また見つめ直す場所だなって思っています」(七星さん)
覆面の下に秘めた思い。
七星さんの活動はリングの上だけではありません。
「根室市ってロシア人と仲が良くて、色んな標識にロシア語が書かれている」(七星さん)
現在、拠点としている静岡県で、子どもたちに北方領土問題について講話をしています。
静岡県下田市では1855年、択捉島とウルップ島の間を日本とロシアの国境と定めた日露通好条約が締結されました。
この条約で、北方四島は日本の領土として確認されました。
根室の会場には、小さなファンの姿もありました。
この日のために、十勝から駆け付けました。
「これ、自由研究で手縫いでマスクを作ったんですよ」(ファンの女の子)
七星さんに憧れ、2025年の自由研究はプロレス調査です。
「(Q七星さんの魅力は?)かわいいのと強いのと、最初に見たときに憧れた。北方領土を調べてきました」(ファンの女の子)
北方領土にも関心を持つようになりました。
七星さんの活動に、元島民をはじめ、上の世代も期待を寄せています。
「3世、4世の人たちは本当に斬新なアイデアとかたくさん持っている。多様性のある、多角的に見て、いろんなことをやってもらえる。すごくありがたく思っている」(千島歯舞諸島居住者連盟根室支部「かけはしの会」後継者 時野春美会長)
「元島民1世の7割が亡くなっている。次の世代に返還運動をつなげることが一番大切。そういう意味では、このプロレスは非常に有意義な事業だと思う。(Q.ちなみに市長はプロレス大好きですか?)プロレス大好き。力道山時代だけど」(根室市 石垣雅敏市長)
会場には120人が集まりました。
この中には、元島民1世の姿も。
「選手の動きが速い。国にも、もう少し北方領土のことに早い動きを見せてもらえればと思う。いままでロシアとの関係が思わしくないので、それはそれとして、私たちの大切な領土ですから。自分たちはもう歳だから、87歳にもなれば、もう気力も体力も無くなっている。こうやって(イベントを)やってもらえれば、若い力をもらえる。明日につながるものがある」(元島民1世)
試合後のトークショーでも、北方領土問題が中心です。
「私、和泉市で市議会議員をやってますので、市議会議員として何かできないのかなと思うので、根室市長と後で熱く語り合おうと」(大阪府和泉市議でもある スペル・デルフィン選手)
「七星さん、僕はね、北方領土でプロレスがしたいんです」(岩崎孝樹選手)
「真似しないでください。それ、私の」(七星さん)
「でも、それは猪木さんが言っていた。猪木さんが参議院議員の時に」(スペル・デルフィン選手)
七星さんの夢。
「北方領土でプロレスをやりたい!北方領土でプロレスをやるのが夢」(七星さん)
なぜ、ここまで必死に北方領土問題に取り組むのでしょうか。
きっかけは、ある事件でした。
「北方領土の返還要求運動を始めたきっかけは、自分の父親がロシア側に拿捕されたということがあった」(七星さん)
2019年12月、根室市の3つの漁協に所属する漁船5隻、計24人の乗組員がロシア側に拿捕されました。
北方領土周辺でタコ漁中に、操業日誌にある漁獲量を上回るタコを取ったことが、ロシア側が拿捕した理由でした。
この中に七星さんの父親もいました。
もう生きては帰ってこられないものと、その時は覚悟したといいます。
「こういう経験をしてしまった。だったら自分が他の人たちに起こらないように、啓発運動を続けていこうと思ったのがきっかけ」(七星さん)
2026年7月、七星さんは元島民と一緒に洋上慰霊に参加しました。
「私たち3世、4世にもっともっと頑張ってもらいたいという声をすごくもらう。80年以上続けてきた返還要求運動を、止めるも、やめるも、動かすのも私たち世代だと」(七星さん)
北方領土問題をどう前に進めていくのか。
最も大切にしているのは、やはり。
「プロレスって無限の力があると思う。見ていると元気が出るし、闘いもお互いにリスペクトがあって成り立つスポーツ」(七星さん)
「同時進行じゃないと面白くないので、北方領土だけでもすごいことだけど、プロレスラーと並行してやっているっていうのが、私の中では面白いことだと思う。そこは並行してやっていきたい」(七星さん)
いつか北方領土のリングで、このアナウンスが流れる日を目指して。
「北方領土志発島(しぼつとう)元島民3世、七星!」(リングアナ)
