酷暑だった今年の夏。その中で「爆売れ」したヒット商品のウラ側を取材しました。
ファンを内蔵した服が体を冷やし続ける「空調服」は、累計販売数およそ2000万着を記録。去年は注文数が前年の2倍に跳ね上がり、わずか1年間でおよそ140万着が売れたということです。
一方、一見すると水筒のように見える「携帯氷のう」は、魔法瓶の技術を応用し、気温40度の中でも最大およそ16時間、冷たさが持続するという優れもの。昨年度はおよそ80万本を出荷し、累計100万本を突破しました。
ともに、倒産や廃番の危機を乗り越えた末にたどり着いたヒット商品です。知られざる開発秘話に迫ります。
■ソニーの技術者が退職後に生み出した“着るクーラー”
東京・板橋区にある株式会社「空調服」を訪ねると、扉を開けると青や黒のファン付きベストやジャケットがラックにずらりと並んでいます。
工場や建設現場でよく見かけるようになったこの「空調服」は、2004年から販売を開始し、累計販売数およそ2000万着超だといいます。
開発したのは、もともとソニーの技術者だった市ヶ谷会長です。早期退職後、あるひらめきをきっかけに試作を始めました。
【「空調服」 市ヶ谷弘司会長】「部屋全体を涼しくする必要はなく、『人間だけが涼しければいいのでは』ということで、(ファンを)小さくして、体に取り付けたらどうだろうかと」
ヒントにしたのは、打ち水の“気化熱”でした。
■試作品は「タンクの水で胸のスポンジを濡らしファンで蒸発させる仕組み」も…
最初の試作品は、タンクの水で胸のスポンジを濡らし、ファンで蒸発させる仕組みでしたが、現実はうまくいきませんでした。
【市ヶ谷会長】「継ぎ目から水が漏れ、ビチャビチャになっちゃう。とにかく冷えるけど、これはダメだと」
こうした失敗を重ねた末に生まれたのが、現在の形です。
外気をファンで取り込み、タンクの水ではなく、体から出る汗の蒸発による気化熱を利用することで、体を効率よく冷やす仕組みを完成させました。
■倒産寸前を救った“建設現場の口コミ”
しかし、完成した商品がすぐに受け入れられたわけではありません。
膨らんだ形のベストを着て電車に乗った市ヶ谷会長は、乗り合わせた女子高生たちの反応に衝撃を受けました。
【市ヶ谷会長】「(空調服を着て)電車に乗ったことがあるのですが、女子高生が『おじさんが、あれ(ファンが着いた服)を着ている』と話してたんで、1回だけでやめました。売れないから、倒産すれすれまでいった」
倒産の危機を救ったのは、思わぬ場所からの口コミでした。建設現場の作業員たちの間でその効果が評判となり、瞬く間に広まっていったのです。
【市ヶ谷会長】「建設現場からバーッと広がっていった。口コミが、本当にそれ(きっかけ)です。売上が100倍も違います」
■リュックや「抱っこひも」用のアタッチメントも
建設現場でのヒットを皮切りに、さまざまな現場への導入が進み、今では1万社以上が採用しています。
近年の記録的な酷暑に加え、国が職場での熱中症対策を強化したことも追い風となりました。昨年は注文数が前年比2倍となり、ボーナスをいつもの倍にしたということです。
服以外の商品も充実しており、リュックに取り付けると背中に外気が送り込まれ蒸れを防ぐアタッチメントや、赤ちゃんを抱く人も涼しくなる抱っこひもケープまで展開しています。
【市ヶ谷会長】「開発し市場化させた空調服という会社では、より良い方向のものを、どんどん開発して、世の中に広める責務があると思いますので。確実に一般向けのも広がっていくだろうと思います」
■魔法瓶メーカーが手がけた“水筒に見える氷のう”
続いてのヒット商品は、大阪・福島区に拠点を置く魔法瓶メーカーが手がけた「携帯氷のう」です。
一見すると水筒のように見えますが、内部に凍らせたシリコン容器を入れ、首や脇の下など体の熱を持ちやすい部位に当てて冷やすためのものです。
開発のきっかけは、ゴルフ好きな山中社長の個人的な悩みでした。
【ピーコック魔法瓶工業 山中千佳社長】「私はゴルフをするとき、『布の氷のう』を使ってたのですが、本当にすぐ溶けるんですよ。魔法瓶に入れたら、(冷たさが)持つよなという発想から」
使い方はシンプルです。シリコン容器に水を入れ、冷凍庫で凍らせてから本体に収めます。魔法瓶の真空層が外からの熱を遮断し、気温40度の環境下でも最大およそ16時間、冷たさが持続するといいます。
■廃番寸前を救ったSNSの投稿
しかし、この商品もまた、発売当初は苦難の時期を過ごしました。
【山中社長】「商品化してもう2~3年経っても売れないので、『廃番』で考えていました」
状況が一変したのは、SNS上のある投稿がきっかけでした。
【SNSより】「気温36度、エアコンなし小学校に登校する小1娘に持たせたもの。携帯氷のうにして、これが大正解だった。」
この携帯氷のうを持たせたという親の投稿が瞬く間に拡散しました。わが子を思う切実な言葉が多くの人の共感を呼び、出荷数は2024年が約15万本だったものが、2025年には約80万本まで急増しました。
【山中社長】「まさかバズると思ってなかった。本当にうれしかった」
(Q.ホールインワンくらい?)
【山中社長】「『連続でホールインワンするぐらい』のうれしさ」
■一転「主力商品」へ 累計100万本を突破
その後、他社製品と比べて冷たさが長持ちするとして雑誌などにも取り上げられ、主力商品へと成長しました。
この成功を足がかりに、チョコレートを溶かさずに持ち運べる専用の魔法瓶や、なんと7日間も氷が残るというアウトドア向けクーラーバケットなど、関連商品の展開も広がっています。
売上の好調は会社の内部にも変化をもたらしました。
【山中社長】「売上が上がって、利益も出たということで、福利厚生の一環として、社員が休息できる部屋も作れましたし、ショールームもリニューアルできたのも、本当にこれ(氷のう)のおかげ」
(関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」2026年9月22日放送)
