急速に進化するAIが今、エンタメ業界に激変をもたらしています。
「AI俳優」が演じるドラマが急成長を見せる中国。
その現場を取材しました。
ミステリアスな世界観が印象的なドラマ。
2026年4月に中国で配信され、大きな話題となったAI生成ドラマのワンシーンです。
鬼気迫る演技をするのは、全てAIで生成された「AI俳優」です。
AI技術が急速に進化する中、中国では今、AI俳優を起用した1話1分ほどのAIショートドラマが急増しています。
中国当局によりますと、2026年1月から8月に公開されたショートドラマは2025年1年間の13倍に当たる43万作品で、その9割以上が「AI作品」です。
こうしたAIショートドラマの制作拠点にFNNのカメラが入りました。
上海にある制作会社「上海水木青洲科技有限公司」は2026年、実写ドラマからAIドラマに大きくかじを切りました。
脚本や映像の演出をAIで処理するため、実写では70人から80人のスタッフが必要でしたが、数人で制作が可能になりました。
制作現場に入ると、実写の撮影現場とは違い本当に静かで、聞こえてくるのはキーボードをたたく音だけでした。
上海水木青洲科技有限公司 CEO・趙凌彬氏:
以前は1本に60万元あまり(約1400万円)かかっていた作品をAIなら3万元台から5万元(約70万円~120万円)で作れます。
この激変の引き金となったのが、TikTokの中国の親会社「バイトダンス」が2026年2月に発表した動画生成AI「Seedance2.0」です。
上海水木青洲科技有限公司 制作チーム責任者・姜正博氏:
動画制作にもAIを使います。AIに「世界トップクラスの監督です」と役割を与え、カット割りや秒数、BGM等を列挙するよう指示します。
すると、カメラワークはもちろん、セリフや効果音まで細かな演出案をAIが提案。
脚本と登場人物の画像を入力するとわずか数分で動画が生成されました。
こうした作業を繰り返し、修正を加えながら1分の動画を2~3時間で仕上げていきます。
一方、この急速な「AI」シフトは「実写ドラマ」に“負の影響”ももたらしています。
“中国のハリウッド”とも称され、数々の名作を生んできた世界最大規模の映画スタジオ「横店影視城」。
多くの観光客でにぎわっていますが、この日に取材班が出会ったドラマ撮影チームはわずか1組だけでした。
地元メディアによりますと、2026年1月から5月に受け入れた撮影チームは、2025年の同じ時期に比べ少なくとも半減したといいます。
街で出会ったスタントマンに聞くと「去年は仕事が途切れませんでした。今年は数カ月仕事がありません」と話します。
俳優の報酬にも暗い影が差しています。
俳優:
去年は(1日の報酬が)1万元(約24万円)を超えていた俳優が、今年は2000元(約4万7000円)、1000元(約2万3000円)になっていることもあります。本当にこの仕事が好きで実力のある人を選別することになるのだと思います。私はずっと演技を続けたいんです。
2025年に比べ仕事が6割減ったという実写ドラマの監督は、「手探りです。AIを試しています。本当に置き換えられる日が来たら、自分が何をすればいいか分かりませんから」と複雑な胸の内を明かします。
急速に発展する動画生成AI。
中国のドラマ業界だけでなく、今後、日本を含めた海外の映像制作も大きく変える可能性がありそうです。
