宮城県気仙沼市の自宅を失い、移住先の栗原市で民泊施設を営む夫婦がいます。第二の人生を楽しみながら、訪れた人に命の大切さを伝える民泊です。
宮城県北部の栗原市。海から遠く離れた山間部に豊かな田園地帯が広がります。
この地に静かに佇むのが…自然体験と防災談義の宿民泊「やまざき」です。
堤勇高アナウンサー
「こんにちは」
小野寺さん夫妻
「お待ちしておりました」
民泊を営むのは小野寺徳茂さん(74歳)と、妻の恵子さん(73歳)です。
堤勇高アナウンサー
「玄関、すごくにぎやかですね」
2人の人柄を表すように、訪れた人をあたたかく出迎える、ウェルカムボード。徳茂さんが、その日にちなんだ花言葉や絵を毎日、欠かさず書いているそうです。
小野寺徳茂さん
「私の日記とか写真とか、書類は全部津波で流されてしまったので、極力ですね、最近はなんか自分の小さい時の思い出も一緒にこう入れられるような感じであればいいなと思って」
小野寺恵子さん
「頑張ってるなって思います。毎日一生懸命やってますから(笑)午後になるとはじまります」
堤勇高アナウンサー
「ここが、宿泊者が泊まる?」
小野寺恵子さん
「そうです。泊まる部屋です」
堤勇高アナウンサー
「入ってきたときに、一番最初に目についたのは、この上の波のように・・・」
小野寺恵子さん
「梁ねえ。蔵なんですよ、ここ元々がね」
2012年、栗原市に移住してきた「小野寺」さん夫妻。「やまざき」という民泊の名は前の家主の屋号を引き継いだものです。大人1泊6000円で、(2食共同調理付き)最大6人まで利用可能。客は主に県外の人で、予約は月に2~3件だそうです。採算がとれるのかちょっと心配ですが…
小野寺徳茂さん
「“金もうけの宿”よりは、“人もうけの宿”っていうふうに思い続けてね、いろんな人たちと触れ合いができて、その人たちが命を大切にするきっかけになってくれたらいいなあと」
転機は、東日本大震災でした。震災前、栗原市から直線で50キロほど離れた、気仙沼市の鹿折地区に住んでいた小野寺さん夫妻。自宅は津波で全壊し、まちは火災にのみこまれました。
小野寺徳茂さん
「できればね、あの地を離れたくはありませんでした。でもね、私たちが住んでいた土地は川のすぐそばで災害危険区域に指定されたんですね」
堤勇高アナウンサー
「民泊をしようと思った経緯は?」
小野寺恵子さん
「支援の方が、私たちがこっちに来てからも気仙沼に来てくださる方がいらして、その方がうちに泊まってそしてお連れするっていう流れがずっと続いてたんです。息子から、”どうせだからやったらいいんじゃないの”って(言われて)、自分から楽しく過ごせるように努力していこうっていうふうな気持ちで」
民泊「やまざき」の特徴の一つは、小野寺さん夫妻との自然体験。まき割りや、野菜の収穫・・・港町から移り住んだ2人も楽しみながら、学んでいる途中です。民泊のため食事は宿泊者が自分で用意することになりますが、小野寺さん夫妻が手伝ってくれます。
堤勇高アナウンサー
「焼く前はこれで一応完成…」
小野寺徳茂さん
「女将さんいいですか?」
小野寺恵子さん
「大丈夫じゃないですか…?チーズもっと…」
堤勇高アナウンサー
「まだいきます?」
小野寺徳茂さん
「わははは」
待つこと15分、ピザが焼きあがりました。
そして、食事中に始まったのが、民泊「やまざき」のもう一つの特徴・「防災談義」です。食事をしながら、ざっくばらんに、震災の経験を伝えたり、命について話し合ったりします。
実は、徳茂さんは震災時、気仙沼市立鹿折小学校の校長でした。その時の経験も率直に話します。
小野寺徳茂さん
「地震が発生しておさまって、校庭に避難しました。もう迎えの保護者がたくさん来て、連れ帰っていいですかって?いうふうなことだったので、いやここでなあ、と思いながら、でもいいかなあとかずいぶん迷ったんですけけど、混乱して危険なことがあったら困るなと思って学校の隣にあった高台に(避難した)」
切迫した状況のなか、校長として判断を迫られた厳しい経験。命を守るために、考えてほしいことがあるといいます。
小野寺徳茂さん
「とにかく、いざとなった時に、どこに逃げるんだとか、誰と行くんだとか、そういう取り決めを家族でまず話し合っててくださいねと。(例えば)津波警報になって逃げようとしたとき、隣のおばあちゃんが1人で歩けないっていうことに気づいたんですね。ここを一番皆さんに話すようにしています。堤アナだったらどうしますか?」
堤勇高アナウンサー
「たぶん理論で考えたら、逃げたほうがいいはずなんですけど…その場に立った時に感情が許すかですよね」
小野寺徳茂さん
「そういうことですよね。どうすればいいのか、いまのうちから、考えておくことが大事なのかな」
東日本大震災の発生から15年。少しずつでも、語り続けることが、未来の命を救うと信じています。
小野寺恵子さん
「難しいかもしれませんけど、でも努力していくことがね、何かになるかもしれないと」
小野寺徳茂さん
「自然災害っていつ誰にでもどこにいても起こりうることなので。危機感を持って過ごしてほしい。命を大事にしよう。自分の命、自分で守れるんだっていうようなね、ものを伝えていきたい」
