2026年の箱根駅伝で、1年生ながら過酷な山の難所・5区に抜擢され、全国にその名を轟かせた高知県出身のランナーがいる。国学院大学2年の髙石樹選手だ。
8月、1年ぶりに故郷の高知に帰省した髙石選手と、母校である高知工業高校の後輩たちとの合同練習に同行し、強さの秘密に迫った。
重圧の箱根デビューと青学エースとの対決
髙石選手は2025年に高知工業高校から国学院大学へ進学。粘り強い走りが持ち味であり、全国高校駅伝の坂道などで力を発揮した実績が評価され、1年生にして箱根駅伝の往路最終5区に抜擢された。
当時の心境について「自分のミスでチームの順位に影響してしまったら申し訳ない。絶対に外してはいけないレースだったので怖かったが、しっかり自分の責任を果たそうという感じだった」と明かす。
本番では3位でタスキを受けたが、5区の区間記録を2分も縮めた青山学院大学のエース・黒田朝日選手に一気に抜き去られた。圧倒的な力を見せつけられ、心に火が付いたという。
当時、髙石選手は「ついていかなくてもいいと指示があったが、このまま終わるのは嫌だなと思った。ここが正念場。これ以上1秒でも青山学院さんに差を付けられないようにゴールしようと思った」と奮起。
結果として、20.8キロを1時間10分5秒という1年生での歴代最速タイムで駆け抜け、チームの往路4位、総合2位に大きく貢献した。
軽さとピッチが生み出す「風のような」走り
この夏、1年ぶりに高知へ帰省した髙石選手。高知工業高校・陸上部の後輩たちを前に「自分も夏合宿の合間のジョグとなりますが、しっかり目的を持ってやろうと思っているので、強くなれるよう考えて行っていきましょう」と声をかけ、1時間の練習に汗を流した。
髙石選手の武器は、身長159センチ、体重43.5キロ、体脂肪率わずか6%という体の軽さにある。本人も「体重が軽いほうが足へのダメージが少なく、一歩にかかるロスが少ない。ピッチ(一定速度)で動かせてタイムも伸びていくのではないか」と自身の走りを分析する。
この日、1時間かけて行ったメニューは8キロのジョギングと400メートル走10本。8キロを終えた直後の400メートル走でも普段の試合に近いスピードを見せ、その速さはカメラで追った記者が「きつい。めちゃ速い。風のように速いね」と漏らすほど。まさに風のごとく、100メートル走のように感じるスピードだったという。
隣で走っていた高知工業2年の岩下幾海選手も「自分がクールダウンしているときに動きを見させてもらったが、結構軽めで動けていて跳ねる感じだった。これが大学生なのかと学びが多い」と驚きを口にした。
原点にあるのは人一倍の負けん気とストイックさ
鮮烈な箱根デビューを果たした髙石選手だが、意外にも中学までは帰宅部で陸上とは無縁だった。高校時代に出会った陸上で才能が開花したのだ。
高知工業時代の大和田賀仁監督は「入ってきたときは右も左も分からない純粋な小学生みたいな形だった。だんだん走り方を覚えていきながら、一番は『自分が勝ってやろう、強くなってやろう』という意志が非常に強い選手だった」と評価する。
当時を知る高知工業3年の前田昊志郎キャプテンも、「与えられた練習以上に走って、先生から走るのを止められても走るぐらい自分にストイックだった」と話す。
過酷な日々を越えて
現在、髙石選手の1日のスケジュールは過酷だ。朝5時半に起床してまず1時間ほど走り、朝食や授業を経て、午後から再び2、3時間の練習を行う。1日平均30キロから40キロも走破するという。
将来の夢はマラソンに転向して日本記録を作ることだが、その前に成し遂げたい目標がある。「箱根を走る選手はあまり高知県にいないと思うので、しっかり存在感を出してアピールしていきたい。地元高知への恩返し含め、箱根駅伝総合優勝を目指して頑張ります。応援お願いします」と力強く語った。
髙石選手の走りは、高知の後輩たちに大きな勇気を与えている。さらなる活躍に期待したい。
