こちらの男性は、気仙沼市議会議員の遠藤秀和氏です。今年4月の選挙で当選したものの、その後、「市内に居住の実態がない」などとして、市の選挙管理委員会から、当選無効の判断を下されていました。
そして、8月24日、決定を不服とした遠藤氏の審査申し立てについて、県の選管は「棄却する」と裁決しました。
記者リポート
「このあと開かれる選挙管理委員会定例会で、遠藤市議の申し立てについて審議が行われます」
県の選管に申し立てをしていたのは、気仙沼市の遠藤秀和市議(58)です。
遠藤市議の住民票は気仙沼市にありますが、家族は登米市で生活していて、気仙沼市の選管は「電気の使用料などから気仙沼市内で生活をしているとは認められない」などと当選の無効を決定。
遠藤市議は今年6月、県の選管に審査を申し立てていました。
公職選挙法では地方議員に立候補するためには、「投票日から逆算して、3カ月以上、その自治体に住む必要がある」と定めています。
そして、24日…
「はい、遠藤です」
県選管は、「申し立てを棄却する」と遠藤市議に直接、伝えました。
結果を受け、遠藤市議は仙台放送の単独取材に対して、次のように述べました。
気仙沼市 遠藤秀和市議(58)
「今回の裁決は厳粛に受け止めたい。結果は大変残念ですが、まずは裁決書の内容と判断理由を十分に精査したい」
一方、気仙沼市の選管はコメントを発表し、「市選管の判断が認められたものであり、判断した責任を強く感じていたので、深く安堵している」などとしています。
お伝えしたように、県選管は24日、遠藤市議の申し立てを棄却しましたが、市選管が当選無効の判断を下した大きなポイントが、「居住の実態」です。
市選管は「実態がなかった」とする一方、遠藤市議は「2拠点生活には事情があった」と主張しています。
農家と打合せを行う、遠藤秀和市議。
気仙沼市出身で市役所の職員などを経て、4年前の市議選で初当選。今年4月に再選を果たしました。
議員活動を終えて向かうのは、登米市にある妻の実家です。
気仙沼市 遠藤秀和市議(58)
「正直、義務です。早く帰って介護しないと、義理の母にも迷惑をかける」
実家に到着すると、重度の障がいがある、次男の陽大さんが、デイサービスから帰ってきます。
気仙沼市 遠藤秀和市議(58)
「45キロの息子を86歳のおばあさん(義母)が抱っこすることは無理。妻とおばあさんだけでは難しい」
陽大さんが就寝する、午後9時まで入浴や食事をサポートします。
気仙沼市 遠藤秀和市議(58)
「日中の活動から、色々な作業から、基本的には気仙沼で行って、こちら(登米市)には息子の介護をメインに帰ってきている」
遠藤市議は2021年、選挙への立候補のため、住民票を気仙沼市に移し、単身生活していました。
気仙沼市と登米市の『2拠点生活』が始まったのにはあるきっかけがありました。
気仙沼市 遠藤秀和市議(58)
「義理の父から『俺が次男を見てるからとにかく頑張ってこい』と、そういう風に…励ましの言葉をもらったが、その父も2年前に他界しまして、その父がいなくなってから、この2拠点生活が始まったのかな」
一方、市の選管が当選無効の判断の根拠としたのが、電気の使用状況などを踏まえた「居住の実態」です。
市選管によりますと、気仙沼市の自宅の午後7時から翌午前7時までの電気使用量を調べた結果、1時間あたりの待機電力使用料を超えた時間があった日は、1月が対象の6日のうち2日。2月が28日間のうち9日、3月は31日間のうち13日に留まりました。
寝泊りする場所を生活の中心と考える過去の判例に基づき、「気仙沼市内で生活をしているとは認められない」などと結論づけました。
一方、遠藤市議は公職選挙法の解釈では「寝起きする場所を住所とする」としている一方で、『特別の事情のない限り』ともしているといいます。
その上で、「過去の例ばかりではなく、生活の実態を見て判断してほしい」と訴えます。
気仙沼市 遠藤秀和市議(58)
「次男の介護が特別の事情に当たらないのか。介護のために来てやっているので」
選挙制度に詳しい専門家は、生活実態を証明するには「客観的な数値」は重要になると指摘します。
拓殖大学 河村和徳教授
「自宅で寝ていると、電気や水道を使うので、そういったところで間接的に情報を判断することになる」
一方、「交通網の発達」、「生活の多様化」などを踏まえ、今後の議会のあり方を検討する必要があるとも指摘します。
拓殖大学 河村和徳教授
「生活の空間が、1つの自治体に収まらない時代になっている。将来、議員のなり手不足が顕著になっていくし、子育てをしている、親の介護をしている人は議員をやるなという誤ったメッセージになりかねない。バランスを時代に合わせてアップデートする必要がある」
