大相撲の「床山」の世界に飛び込んだ少年についてです。御嶽海と同じ長野県上松町出身で、出羽海部屋に入門。2026年6月、故郷の木曽で行われた合宿に、初めて床山として参加しました。家族や地元の応援を受け、一人前の床山を目指す16歳を追いかけました。
■力士の証し「髷」を結う職人
力士の証しともいえる髷(まげ)を結う職人のことを、相撲の世界では「床山」と呼びます。
2026年、その「床山」の世界に飛び込んだ16歳の少年がいます。長野県上松町出身の「床空(とこそら)」さん、本名・小川大空さんです。
2026年春、中学を卒業し御嶽海と同じ出羽海部屋に入門しました。
上松町出身「床山」・床空さん(16):
「(床山の仕事でどんなことが一番楽しい?)全部ですね。櫛(くし)を使ってそろえたりとか、そういうところは楽しい」
力士は髪の油を落とさないため、1週間に1回ほどしか髪の毛を洗えません。だから稽古後の髪結は力士にとって大切な時間です。
小城ノ浜:
「1日の流れの中で一番気持ちいい時間ですね、頭やってもらうのが。毎日洗えないので、こうやって頭をかいてもらっているときが一番いい」
■力士目指すも…「体格の壁」
16歳でなぜ床山の世界に進む決意をしたのかー。
床空さんは小学生のころ、地元の相撲クラブに入り、中学も相撲部に入部。御嶽海のような力士になることを目指して、励んでいましたが―。
床空さん:
「体が小さい分、大きい相手と相撲を取ったら吹っ飛ばされるとか、悔しいなと思っていて」
身長が伸びず「体格の壁」を感じるように。そんな時に思い出したのが出羽海部屋の床山、「床力」さんとの出会いでした。
床空さん:
「5歳のときに、家族で(犬山の)宿舎に来て、床力さんが頭やっているところを見て、床力さんに『将来は(相撲をやっていた)お兄ちゃんの髷(まげ)を結ってやりなよ』って言われて、それで床山っていいなと思って」
■力士支える姿に憧れて
力士ではなく床山にー。
決意した床空さんは2024年の出羽海部屋の木曽合宿の際に、床力さんに直談判。中学卒業後、すぐに入門。
2026年6月に研修を終えて正式に採用され、「床山」としての人生をスタートさせました。
床空さん:
「力士を支えるのがかっこいいなと思って、そっちの方が魅力的だと」
故郷を離れて半年。部屋での生活にも慣れ、兄弟子たちともなじんできました。
一方で、ふとしたときに思い出すのは家族や友人のことです。
床空さん:
「家族とか友達のことを思い出すと、やっぱり寂しいなとは思いますね。親たちは何しているだろうとか、家族はどうしているだろうなとか」
■半年ぶりの再会に母は…
6月、木曽町で行われた出羽海部屋の木曽合宿。床空さんにとっては半年ぶりのふるさとです。
母・理恵さんとも久しぶりの再会です。
母・理恵さん:
「(顔つきが)変わりましたね、あと太った。木曽から行くとき、1月は62キロだったんですけど、今は70キロあるというので、がっしりしています」
床空さん:
「(久々に会えて)うれしい。あまり変わっていなかったです」
■普段はできない関取の髪結いに挑戦
再会に笑顔を見せたのも束の間。部屋に戻ると「床山」としての仕事が待っていました。
床力さん:
「出羽ノ龍関のちょんまげ、うまいことできたことないもんな」
床空さん:
「はい」
御嶽海:
「あと30分はかかるよ」
床空さん:
「そうっすね」
床力さん:
「普段は、『関取衆』は僕がやっているので、あまり触ることのない出羽ノ龍関のちょんまげを、特別にきょうはやらせてもらっている」
関取は十両以上の力士のこと。部屋では、御嶽海と出羽ノ龍の2人です。
十両・出羽ノ龍:
「(出来栄えは?)いいんじゃないですか。でも覚えたてなので、これから勉強していく」
■御嶽海も期待「看板に恥じぬよう」
“地元の子供”として参加したこともある木曽合宿。憧れの先輩、床力さんに「床山になりたい」と伝えた場所でもあります。
床空さん:
「(当時は)入れるか分からなかったので、床山として立てることはうれしい。(髪結を)やっているかっこいい姿を(地元の人にも)見てもらいたいです」
床力さん:
「(地元の)期待も大きいと思うので、より一層仕事も頑張ってくれるんじゃないかと」
同じ上松町出身の御嶽海も“後輩”の様子を気にかけていました。
御嶽海:
「合宿に一緒に参加できたのはうれしいですし、こっちがドキドキしますね。(どういうドキドキ?)ちゃんと覚えてもらえるかなとか、出羽海部屋という名門に入ってきたということは、看板を背負っていますから、それに恥じないようにやってくれるかなというドキドキですね。(御嶽海の髷を結う日は近い?)いやいや、ほど遠いですね」
「床山」として仕事に励む息子を、初めて見た理恵さん。
母・理恵さん:
「初めてだったんですよ、全部整えるのを見るのが。これだけ結えるようになったんだって。みんなによくしてもらってるので、愛される床山さんになってもらえるといいかな」
■故郷で決意表明「立派な床山に」
合宿では地元との交流が恒例です。相撲クラブの子供たちとの稽古や、力士が赤ちゃんを抱っこして土俵の土を踏ませる“赤ちゃん土俵入り”も初めて行われました。
そして床空さんも地元出身ということで―。
床空さん:
「皆さん、こんにちは」
観客:
「とこそらー!」
床空さん:
「私は今年6月に床山として入門しました、小川大空改め『床空』です。よろしくお願いします。大相撲のことは右も左もわかりませんが、一日も早く立派な床山になれるように頑張るので応援よろしくお願いします」
「床山」として初めてのあいさつでした。
祖父・杉本秀芳さん:
「すごく良くなったなと思って。大空(床空)がそばにいて、みんな話を聞いて、大空自身も話をしてやって、これだけになったなと思って、うれしい」
■力士も、床山も憧れの“大銀杏”
愛知・犬山市。
名古屋場所初日を4日後に控えた7月8日。
「床山」として初めての本場所に臨む床空さん。
いつか自分の手で結いたい髷があります。十両以上の「関取」にだけ許された髷「大銀杏(おおいちょう)」です。
※大銀杏:髷の先端をイチョウの葉のように大きく広げて結う
出羽ノ龍:
「力士が一番最初に入門した時はみんな、大銀杏結いたいって憧れで入ると思うので、みんなの憧れのちょんまげの形ですね」
御嶽海:
「特別の中のまた1個上、2個上。大銀杏というのは、そのくらい特別なもの」
■16歳の挑戦 修業は続く
力士にとっても床山にとっても特別な存在の「大銀杏」。簡単に結えるものではありません。
床力さん:
「(大銀杏を結えるまで)一般的には5年〜10年って言われていますね。ずっと僕らも修業で、きょううまくいったって日は、1場所に1回あればいい方」
床空さん:
「かっこよかったです。自分は大銀杏結えないんですけど、やっぱり憧れます」
「床山」として歩み始めたばかりの16歳。憧れの「大銀杏」を結える日を目指して修業の日々は続きます。
床空さん:
「大銀杏は憧れ。力士ではないけど、床山だけど。自分も早く一人前の床山になって、大銀杏を結えるようになりたい」
