夏山シーズンの最盛期、北アルプス・剱岳で山岳事故が相次いでいる。富山県警山岳安全課の担当者は「山に行けば気温は低いだろうと、行ってみたら天気がいい日は日光をさえぎる場所がない」と警鐘を鳴らす。富山県内では熱中症や低体温症による遭難が相次いでおり、登山者への注意喚起が急務となっている。

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稜線から約150メートル下の谷で遺体発見

富山県警によると、7月30日から北アルプス・剱岳で行方不明となっていた埼玉県の無職、鈴木聖志さん(70)が、8月2日午後6時20分ごろ、剱岳の標高およそ2750メートルの谷で遺体として発見された。県警のヘリコプターによる捜索で発見され、死因は外傷性ショックだった。

鈴木さんは1人で入山したとみられ、7月29日に山小屋に宿泊。翌30日に剱岳への登頂を予定していたとみられるが、夕方になっても別の山小屋に到着しなかったため、「宿泊予定の客が到着しない」との通報が寄せられ、行方がわからなくなっていた。

遺体が見つかったのは、上級者向けのコースとされる北方稜線からおよそ150メートル下の谷。県警は鈴木さんが稜線から滑落したとみて、当時の状況を調べている。

7月の遭難者は34人、熱中症が深刻な要因に

夏山シーズンを迎えた富山県内では、山岳事故が後を絶たない。県警のまとめによると、7月の1か月間だけで県内の遭難者は34人にのぼり、うち3人が死亡、16人がケガをした。去年7月の遭難者は45人と、近年は高止まりの傾向が続いている。

その背景の一つとして浮かび上がるのが「熱中症」だ。富山県内の夏山ではすでに3人が熱中症になっており、救助された人の多くが「あまり水分をとらなかった」と話しているという。

県警本部山岳安全課の柳沢義光警部は、その理由についてこう指摘する。「あまりトイレに行きたくないので、水分をとらない傾向がある」。標高が高く日陰の少ない山岳地帯では、日光を遮る場所がなく、気温が低いという思い込みが油断につながりやすい。県警は登山中の適切な水分補給を強く呼びかけている。

「低体温症」の脅威、雨具の性能が命を左右する

暑さへの備えと並んで、もう一つ見落とせないリスクが「低体温症」である。7月28日には、福島県の68歳の男性が薬師岳の登山道で倒れているのが発見され、死亡が確認された。司法解剖の結果、死因は低体温症だったことが明らかになっている。

山では天気が急激に変化する。汗や雨で衣服が濡れると、体温が急速に奪われる危険がある。柳沢警部は装備の重要性をこう強調する。「雨具はゴアテックスなど、性能のいいものを。ビニール製のものだと、外の雨は防げるが、中で汗をかいて逃げないので、自分の汗でどんどん濡れてくる」。

高性能な雨具の着用が、低体温症を防ぐうえで大きな差を生むことになる。

電波発信機の無料貸し出しでいち早い救助を

こうした事故への対応として、富山県警は今年6月から、登山者の位置情報を把握できる小型の電波発信機の無料貸し出しを開始した。室堂と剱沢の2つの警備派出所で利用でき、登山者の場所を県警がリアルタイムに確認できる仕組みだ。いち早い救助につなげるため、県警は登山者に積極的な活用を呼びかけている。

夏山の魅力とともに、リスクもまた高まる季節である。水分補給、適切な雨具、そして位置情報の共有—身近な備えの積み重ねが、山での命を守ることにつながる。

(富山テレビ放送)

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