少子化の影響で高校の統廃合が進む中、離島や中山間地域にある高校などでも生徒のニーズに応える教育を行えるような取り組みを新潟県が進めている。県が進めるオンライン授業の現場と生徒の声を取材した。
対面では「ニーズ満たせない」 佐渡の高校で“オンライン授業”
新潟市内からフェリーと車を使って約4時間…。
佐渡市の南に位置する全校生徒57人、1学年1学級の県立羽茂高校。ここで行われているのがオンライン授業だ。
生徒たちが見つめる先は黒板ではなくモニター。この日は、地理総合の授業を18人の3年生全員が受けていた。
なぜ対面ではなく、オンライン授業なのか。
羽茂高校の近藤美津子校長は「かつては1学年3学級あり、教員も30人ほどいた。今はすべての教科・科目のニーズを満たすということは現有勢力では叶わない」と話す。
新潟県内の全日制の公立高校の生徒数は25年度、3万3413人で5年前に比べ5000人ほど減少。これに伴い、334あった募集学級も300を切っている。
この学級数の減少が教員の数にも影響。
例えば、全校生徒57人で3学級の羽茂高校と全校生徒が1000人を超え、27学級ある新潟南高校で比べた場合、非常勤講師を除く教員の数は羽茂高校が13人に対し、新潟南高校は70人となっている。

小規模化が進み、離島や中山間地にある高校は専門教員を置けない問題が生じているのだ。
近藤校長は「一生懸命勉強したい生徒は、少子化になっても必ずいる」という。
学校の小規模化進む中“多様な学び”提供へ オンライン教育に力
このような課題を解消して教育環境を整えようと26年4月、新潟東区にある県立碧高校内に設置されたのが、県遠隔教育配信センター『NーPORTA』だ。
県遠隔教育配信センターの田邉康彦所長は「学校の小規模化が進んでいく中で、どうしても教員の配置、人数も限られてくるので、多様な学びができるよう、教育環境の充実を図る」と説明する。
県は2021年度から実証実験としてオンライン教育を導入。5年間の実績を重ねて配信拠点を設けた。

配信センターには6つの配信ブースが常設され、1週間で約100コマの授業を届けているという。
専任の配信教員を11人常駐させることで、25年よりも11校多い22校を対象に40科目の授業を展開することができるようになった。
「オンラインでも興味引きつける授業を」生徒からの評判も上々
教師歴20年目の小林伸輔さん。地理の専門教員だ。
通信制高校でオンライン授業を担当していた経験もあり、デメリットも把握した上で授業を組み立てていると話す。
「対面よりも集中できない生徒もいると思うが、オンラインでも声かけ、発問で興味を引きつける授業をやろうと心掛けている」
この日の授業のテーマは『観光』。タブレット端末や動画を駆使して双方向の授業を届ける。

オンラインだからこそわかりやすく。
生徒たちからも「動画をたくさん使ったり、個別学習が多かったり、学びを得られている」「オンラインの方が対面する圧がないのでリラックスして受けられる」などの意見があり、評判も上々のようだ。
「もっと学びたい」オンライン授業きっかけに“大学”進学目指す生徒も
「この学校にいる先生ではないので新しさがあってすごくモチベーションになる」と話すのは、3年生の加藤迅青さん。
オンライン授業をきっかけに大学進学を目指すようになったという。
「去年の化学の授業がオンラインで、そこで化学がおもしろくて、もっと学びたいなと思った。専門的なところで気になる部分を先生に質問するのが楽しかった」
羽茂高校はオンライン授業を導入した25年度、6年ぶりに国公立大学の合格者を輩出した。
近藤校長は「オンライン授業で科目をしっかり確保していたことが影響しているのではないかと思っている。大学での学びも多様なものが増えてきている。生徒の学習の希望も広がってきている」と話す。

これまでは1人の教師が物理・化学・生物・地学の理科4科目を担当する時期もあったということだが、現在は教師の負担も減っている。
教育現場の改革に取り組む遠隔教育配信センター『NーPORTA』。
今後は資格講座などにも取り組んでいく考えだ。
オンライン授業が教育格差をなくし、子どもたちの可能性を広げている。

