2025年、生誕から1世紀を迎えた高知出身の芸術家・吉田左源二。ある場所に隠された作品が再び姿を現し、話題を呼んでいる。
トイレの壁に隠された名作
2026年3月、高知県立大学にある一般的な多目的トイレの壁の向こうに、ある物が隠されていたことが判明した。
壁の奥に隠されていたのは、高知出身の工芸作家・吉田左源二が手掛けた作品。大学側の不手際により10年近くもの間こうなってしまっていたのである。
高知を代表する多彩な芸術家
吉田左源二は1925年に高知県安芸市で生まれた。
吉田は漆芸や陶芸だけでなく、アラビア文字を使ったアラビア書道など幅広い分野で活躍した。
皇后雅子さまや秋篠宮妃紀子さまの御印のデザインも手がけるなど、その功績は広く知られている。
トイレ裏に隠された作品は、高知県立大学の前身である「高知女子大学」のために制作されたものだ。図書館増築の記念として作られ、建物が学生会館へと役割を変えた後も1階ロビーに展示されていた。しかし、キャンパスの整備工事に伴う多目的トイレの設置により、意図せずトイレで隠してしまっていた。
大学側の陳謝と作品の救出
大学側は「作品への敬意に欠けた対応だった」と陳謝した。
不手際を認めた大学は速やかにトイレの撤去工事を進め、7月3日、報道陣へ作品を公開した。関係者によると、表面にほこりによる汚れはあるものの目立った損傷は確認できないという。
作品には、キャンパスにふさわしいペンや本、そして高知の県花であるヤマモモが美しく描かれている。
高知県立大学の岡田哲也事務局長は、「まずは作品に損傷がなく安堵している。少しでも多くの学生の目に触れる場に移設できたら」と語った。
家族の想い
この作品の公開を誰よりも喜んでいるのが、現在、沖縄県に住む吉田左源二の次女・小倉美左さんだ。
彼女はオンラインの取材に対し、笑顔を見せながら語った。
吉田左源二の次女・小倉美左さん:
「壁の中に隠れていたために大事にしていただいたような。久しぶりに父の知らなかった作品が見えて、皆さんのおかげで再会ができたような喜びをいただいています。きっと父もすごく喜んでいると思います」
小倉さん自身、まだ実際の作品を目にしたことがないという。「今度一般公開された時にはそっと高知へ行って、見たいなと思っています」と、作品との対面を心待ちにしている様子だった。
大学側は今後、専門家のアドバイスを受けながら、展示に向けた検討を進めていくことにしている。
