長野県の伝統的工芸品「戸隠竹細工」についてです。戸隠そばの「そばざる」に代表される竹細工で、6月、展示販売会が開かれています。初めての生産組合主催で、職人たちは「竹細工の魅力を伝えたい」と、気持ちを込めて作り上げました。
■”竹”のコーヒードリッパーや花かご
花瓶を入れる「花かご」。コーヒーを抽出する時に使う「コーヒードリッパー」も。
竹を編んで作った長野県の伝統的工芸品「戸隠竹細工」の商品です。
6月6日から長野市戸隠の「戸隠竹細工センター」で、展示販売会の「編人展」が始まりました。
戸隠中社竹細工生産組合・徳武利文さん:
「普段見られない形のものも出てきますので、それも一つの見どころ」
■「戸隠そば」に欠かせない竹細工
戸隠といえば「そば」。そばが盛られているのが戸隠竹細工の「そばざる」です。
戸隠そばには欠かせないものとして、代々受け継がれてきました。
展示販売会では、「そばざる」をはじめ、16人の職人が持ち寄った自慢の竹細工、約40点が並びます。
客(長野市内から):
「すごいですね。どうやって作ってるのかなと思います。そばはこの竹ざるじゃないかなと思うんで」
3年ぶりの開催で生産組合が主催するのは初めて。
個人で販売していた商品を1カ所に集め、戸隠竹細工のPRと販売促進、職人の技術力向上につなげる狙いです。
戸隠中社竹細工生産組合・徳武利文さん:
「竹細工をいろいろな人に知ってもらいたいというのと、竹細工職人の方が世代を超えて、実際に目で見ることによって技術の向上があるのかな」
■職人・中川昌也さんが受け継ぐ技術
出品した職人の一人、「手力屋」の中川昌也さん(53)。
店は竹細工が最も盛んな中社地区にあります。
店に併設された工房で作っているのは、展示販売会に出品する「野菜かご」です。
手力屋・中川昌也さん:
「性に合ってますね、もくもくとやるのが。自分の作品ができあがった、そしてそれが売れるというのが醍醐味です」
■材料は雪に耐えた「ネマガリダケ」
戸隠竹細工の材料は、地区や近隣の山で採れた「ネマガリダケ」です。
北信濃では、サバ缶と一緒にタケノコ汁にして食べられますが、戸隠では、竹細工の材料にするため採取が禁止されている山もあります。
雪の重みに耐え育ったネマガリダケは丈夫で、それが戸隠竹細工の特徴につながっています。
手力屋・中川昌也さん:
「粘りがあって丈夫です。真っすぐの孟宗竹とかに比べると作りづらいと思うけど、ちょっと無骨な方が戸隠のかごらしいですよね」
戸隠竹細工の歴史は今から400年以上前の江戸時代。
山深い戸隠では米が作れず、生えていたネマガリダケを年貢として納め、農閑期の仕事として竹細工が作られるようになったといわれています。
■「職人の使命」亡き父の跡を継ぐ
中川さんの曽祖父から代々、竹細工職人となり、先代の父・綱昌さんが、60年ほど前に店を構えました。
綱昌さんは、主力だった農作業の道具だけでなく、かばんなど新たな商品を次々と考案し、発展させてきました。
しかし、2025年12月に他界。3年ほど前から手伝いで一緒に作っていた次男の昌也さんが跡を継ぎました。
手力屋・中川昌也さん:
「小さいころから親父を見て、見よう見まねで、遊びの延長でやっていた感じ。先祖代々の所に生まれたからには引き継がないと、という使命、思いでやるようになった。今は面白くてしょうがなくて、親父のようなかごを作れるようになりたいというのが一番」
■飼育員と竹細工職人の二つの顔
長野市の開発公社に勤める中川さんは、普段、茶臼山動物園で飼育員として働いています。
仕事が休みの日には市内の自宅から戸隠の実家に戻り、竹細工に没頭しています。
手力屋・中川昌也さん:
「男親と息子ということであまり会話がなくて、今でもこれ聞いておけばよかったというのがいっぱいあって、心残りもあります。技術的なこととか、もっと昔話を聞いておきたかった」
作業開始から約8時間―。
手力屋・中川昌也さん:
「はい、上手にできました」
出品する「野菜かご」が完成しました。
父・綱昌さんの竹細工の特徴であるシンプルな見た目ながら丈夫で実用性がある商品を追求しています。
■戸隠竹細工の「火を消さない」
手力屋・中川昌也さん:
「草取りに使うかごとか、親父も得意としていたので、自分も得意であり続けたい。そばと並んでの戸隠の“売り”なので絶やしてはいけないもの。うちの火、戸隠竹細工の火は消しちゃいけないと」
生産組合によりますと、全盛期には100人以上いたという職人も、現在は33人。
市の補助金を活用してPRを行った効果もあり、最近、20〜30代の若手も数人、加わりました。
2025年、店を継いだ中川さんは、今回作った「野菜かご」を含めて3点出品しています。
手力屋・中川昌也さん:
「他の職人さんの作ったものを見て、切磋琢磨できて非常にプラスになる。親父から受け継いだ技を使っているところがいろいろあるので、そこを見てわかってもらえれば」
客(新潟から):
「竹も一本一本くせ、個性があるでしょうから、同じものは2枚となくていいですね。非常におそばが映えておいしく感じて、ぜひ受け継いでいっていただきたい」
戸隠中社竹細工生産組合・徳武利文さん:
「自然の素朴さと丈夫さと、伝統の技術もあるので、併せて見ていただいて。見に来た方が普段の生活の中で、普通に使っていただけるようになればいい」
職人のこだわりと伝統の技が詰まった竹細工の展示販売会は、6月28日までの開催です。
