6月10日に実施された「セブンカフェスムージー」のスーパーセール。
定価300円~400円前後のスムージーが“半額”で楽しめるとあって、お客さんが殺到。1日限定というのもあり、行列や買い占めなど各地で多くの混乱を巻き起こした。
「この数年、コンビニの大型キャンペーンといえば『デカ盛り(増量)』や『1個買うと1個もらえる』が中心でした。そこへついに「半額セール」が登場したのです。まだ多くの課題を抱えていますが、大きな効果をあげています」
と分析するのは、コンビニ業界に精通する流通アナリストの渡辺広明氏。詳しく聞いた。
ついに“半額キャンペーン”が登場
【流通アナリスト 渡辺広明氏】
定価販売が基本のコンビニは、キャンペーンも「値引き」ではなく、「抽選でチケットが当たる」「くじが当選すると商品がもらえる」といった形で行われてきました。
ここ数年は、見た目のインパクトから人気の「デカ盛り」や「1個買うと1個もらえる」がキャンペーンの中心でしたが、昨年から数回にわたり、セブンイレブンがおにぎりやパンなどを大幅値引きする「スーパーセール」を実施。商品によっては40%以上も割引になるとあって、かなりの反響を呼びました。
そして今月、ついに“半額セール”に打って出たのです。
定価販売のコンビニで“半額”というのは、かなりのインパクトです。「揚げ物半額」「スムージー半額」と、お客さんが殺到しました。
利益が減るからやりたくないはずだが…
コンビニは本来、値引き販売をやりたくありません。
なぜならコンビニの店舗のおよそ98%は「オーナーが経営するフランチャイズ加盟店」。さまざまな契約形態があるものの、本部とオーナーが利益を分けるケースがほとんどなので、値引きによる利益の減少が経営に影響しやすく、薄利多売は本来は向かない施策なのです。
基本的には、過度な値引き販売、しかも半額セールなどしたくありません。
それなのになぜか。
背景には「コンビニの低迷」があると考えられます。
日本フランチャイズチェーン協会の発表によると、2025年の「コンビニ来店客数」は前年比0.2%減の163億4142万人。コロナ禍の影響が出た2021年以来4年ぶりの減少で、今年に入ってからも減少傾向が続いています。
売り上げは4年連続で過去最高を更新し、客単価も伸びています。しかしこれは物価高の影響が大きく、全体としては非常に厳しい環境だといえます。
特にセブンイレブンは集客の減少が目立ちますから、思い切ったキャンペーンに打って出ることになったのだと思われます。
3つのキャンペーンを比べると…
「半額セール」「デカ盛り」「一個買うと一個もらえる」この3つのキャンペーンのうち、最も集客力が期待できるのは「半額セール」です。
「半額セール」は分かりやすいのです。買おうと思っていたものが値引きされているとお得感でうれしくなりますし、興味があったものが半額だと「ちょっと買ってみようかな」となりやすい。
「デカ盛り」は、見た目のインパクトや楽しさで人気ですが、「こんなにたくさんいらない」という人も多く、対象者が限られます。「お値段そのままで増量」だけでなく「増量するけど値段も上がる」場合もあり、後者だとますます購入者が限られるでしょう。
「1個もらえる」は、メーカーの協賛なので、店が商品を選ぶことができません。対象の商品がお客さんにとって「欲しいもの」なら売れますが、たいして欲しくないものならメリットを感じず購入につながらないのです。
やはり、“直接的なお得”である「半額(値引き)」が、一番お客さんに響くのではないかと思います。
客も店も不満で「課題山積み」
反響を呼んでいる「半額セール」ですが、課題も山積しています。
一番の問題は“品切れ”です。店舗によっては早々に売り切れになり、買えなかったお客さんからは当然不満が出ます。
セブンの場合は、本部が店に発注数の上限を設けたので、「注文したいのにできない」というオーナー側からも大きな不満が出ました。店はがんばってたくさん売りたいのに、本部が仕入れさせてくれないのです。
5月の「パンのスーパーセール」の時も発注制限がありました。朝限定のセールだったので早い時間に売り切れ、日中に売り場から品物がなくなりました。
そうなると、本来、ほかの時間帯に定価で売れたはずものが欠品で売れません。「チャンスロス」を起こすという別の問題も出てきてしまうのです。
全国2万店の発注数を予測するのが難しいことは分かります。
しかし、売り切れで客が不満を持ち、店がチャンスロスを起こすというのは、店舗の希望発注数に応じて納品出来るなど、本部はすぐに対策を考えないといけない大きな問題だと思います。
スムージー半額セールの混乱に関しては、厳しい言い方ですが「現場を分かっていないキャンペーン」だったように思えます。
ただ販売するだけでなく、専用マシンで調理しなければいけません。完成まで70秒とはいえ、洗浄など前後を合わせると1人、数分はかかりますから、長蛇の列ができるのも当然です。
また、大量購入して翌日以降に専用マシンで調理した人もいたようです。こうなると、売り切れで買えない人が出るだけでなく、衛生面の問題も発生します。
せめて「個数制限」と「後日のマシン利用禁止」を統一ルールとし、事前告知をわかりやすくするべきだったのではないでしょうか。
人気商品の半額セールは、お客さんにはとてもうれしいキャンペーンです。しかし、対策をしっかり考えた上で実施しないと、反響が大きい分、マイナスも大きくなります。
成功のカギは“限定”と“やりすぎない”
今のように、日程や時間を限定するやり方は非常に良いと思います。
“限定”は「今しか買えない」「ここでしか手に入らない」といった付加価値がつき、購買意欲を刺激します。
また、時間を絞ることで、呼びたい客層が明確になります。
『揚げ物半額』を夕方限定でやったのは「夜ごはんの総菜として買ってほしいから」。
『パンの値引き』を朝限定でやったのは「朝ごはんと昼ごはん用に買ってほしいから」。
「この時間にお客さんに来てほしい“集客”という目的」と、「こういうお客さんに買ってほしいという“客の新規開拓”」。この2つの狙いにいい結果が出ていると思います。
避けなければいけないのは“キャンペーン漬け”になること。
例えばローソンの「からあげクン1個増量」は、最初は「お得だ」と思って購入しても、頻繁に実施されるようになって「増量期間」が長くなってくると、「6個じゃなきゃダメ」となってしまうのです。
キャンペーンは短い期間やるから効果があるのであって、キャンペーン漬けになったらアウトです。「回数や時期、期間を絞る」「商品のカテゴリーを広げる」などメリハリをつけながら、お客さんも店も満足する形への進化を期待したいと思います。
(流通アナリスト・渡辺広明氏)
取材:高知さんさんテレビ

