約3割が「仕事が原因で死にたいと思った事がある」
テレビや映画、舞台などで活躍する芸能人。
その俳優ら約2600人が加入している日本俳優連合が、俳優や声優などを対象とするアンケート調査「フリーランス芸能従事者の安全衛生に関するアンケート」を9月18日から実施し、中間集計経過を11月1日に公表した。
このアンケートには現場での安全や食事などについての他、「仕事が原因で死にたいと思った事はありますか」という設問もあり、回答があった178人のうち、約3割にあたる52人が「ある」と回答したことが分かった。
「ない」と回答した人は126人だった。

様々な役柄を演じ、見る人を楽しませてくれる俳優の仕事は、華やかな仕事のようにも思える。
しかし「仕事が原因で死にたいと思った事がある」人が約3割いるということで、この理由としてはどのようなことが考えられるのだろうか?
そして、「仕事が原因で死にたい」と考える、芸能従事者を減らすためには、どのような対策が必要なのか? 日本俳優連合の理事で女優の森崎めぐみさんに話を聞いた。
アンケート調査を実施した理由
――アンケート調査を実施した理由について
フリーランスの保護が、内閣府「全世代型社会保障検討会議」や厚生労働省「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」などで謳われております。こうした流れの中で、日本俳優連合でも当事者として実態調査が必要だと考え、実施しました。
――今回は中間集計。最終的な集計結果はいつ頃、発表する予定?
特に予定しておりません。通常、中間集計を発表して、引き続き、長めにアンケートの受付をしております。

「仕事が原因で死にたいと思った事がある」の理由
――「仕事が原因で死にたいと思った事はありますか?」という質問に対して、約3割が「ある」と回答。この結果をどのように受け止めている?
私自身、現場で仕事をしているときにかなりハードだったことがあり、やむを得ない結果だと思います。
――「仕事が原因で死にたいと思った事がある」人が約3割もいる。この理由として考えられることは?
この仕事(芸能従事者)は大人数の団体でする作業ですが、その都度チームが集まって解散する、短期的なプロジェクトであることが多いので、友人などができにくく、相談しづらい状況です。
このようなことから生まれる孤独感や、フリーランスの仕事の性質上、失敗が許されず、プレッシャーが大きいです。このような理由から、やむを得ないと思います。
相談窓口がない、公的な相談窓口に行っても、「労働者ではない」と言う理由で相談にも乗ってもらえないことも原因の一つではないかと考えております。

苦しい状況をカウンセリングで乗り越えた
――森崎さん自身は、女優の仕事が原因で死にたいと思った事は?
あります。
――そのような非常に苦しい状況をどうやって乗り越えた?
カウンセリングが非常に有効でした。カウンセラーと一緒に、客観的な意見を聞きながら悩みを整理できたので、自分で自分の力で回復することができました。
カウンセリングは医療行為です。この良さを多くの方に知っていただきたいと思っています。

年内に相談窓口を設置予定
――芸能界では自殺とみられる訃報が相次いだ。こちらはどのように受け止めている?
コロナにおける芸能人の状況は非常に厳しいです。2月26日のイベント・公演などの自粛要請から、仕事も収入もほとんど途絶えています。
日本俳優連合が実施した他のアンケートでは、自由記述の中に「死ぬ」と言う文字が非常に多く散見されました。警鐘は鳴らしていましたが、このような事態になり、非常に心苦しく思っております。
――「仕事が原因で死にたい」と考える芸能従事者を減らすためには、どのような対策が必要?
メンタルケアが必要だと考えています。年内には相談窓口を設置する予定です。
――年内というのはいつ頃を予定している?
メールの相談窓口は、文化庁の継続支援事業の企画として考えています。その期間に合わせて年内と考えています。そのほか、カウンセリング窓口などについては、準備が出来次第と考えております。
――相談窓口では相談者に対して、どのような対応をしようと考えている?
メンタルケアとして、臨床心理士やカウンセラーに対応していただきます。内容については守秘義務を守っていただき、プライバシーに配慮して、決して外部に漏れることがないように厳重に対応していこうと考えています。
孤独感やプレッシャーを抱えていても、相談窓口がない。これが、俳優や声優などフリーランスの芸能従事者の現状で、こういった現状を変えるためには「メンタルケア」が必要だという。年内にも設置予定だという相談窓口によって、一人でも多くの人のケアをしてほしい。
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