約1年の休館を経て、広島県呉市の大和ミュージアムが今年4月にリニューアルオープンした。山と海に囲まれ、かつて旧海軍鎮守府が存在した海軍の街としての歴史を持つ呉は、戦艦大和を生んだ地もある。1945年に沈没した大和の記録と技術を後世に伝えるため、2005年の開館以来、市民やファンに愛されてきた当館は、資料の更新や展示の深化を目的に展示を大幅に見直した。

開館当日の熱気

テープカットの場には全国から来館者が駆けつけ、長年のファンやリピーター、深夜から並ぶ熱心な見学者の姿も見られた。埼玉や兵庫など遠方から訪れた人々は、模型の精度向上や展示内容の充実を称賛し、ミュージアムへの期待と愛着が変わらず強いことを示した。

大和ミュージアム リニューアル開館記念式典の様子
大和ミュージアム リニューアル開館記念式典の様子
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リニューアルの背景

館長の戸高一成氏は、リニューアルの背景を「20年の蓄積の中で新たに明らかになった資料や事実を反映させる必要があった」と説明する。戦時を知る証言者が年々減るなか、記録と展示の精度を上げることは喫緊の課題だ。そこで今回、展示の物理的な更新と来館者の体験を高める工夫が施された。

大和ミュージアム 戸高一成 館長
大和ミュージアム 戸高一成 館長

変更点1:模型の精緻化 ~10分の1模型の細部修正~

リニューアルの大きなポイントは三つ。まず象徴的存在の10分の1模型だ。外観は変わらないように見えるが、呉市の潜水調査などで得られた新データを反映し、艦首の菊の御紋のサイズや艦橋上部の細部などを修正。模型の忠実度がさらに向上した。

艦首にある菊の御紋章 改修前と改修後
艦首にある菊の御紋章 改修前と改修後

変更点2:展示フロアの再編 ~3階が科学技術展示室へ~

次に、3階の展示が全面刷新され、これまでの造船中心の視点に加え、呉・広地域で製造された航空機の実物資料やエンジン、プロペラなどが並ぶ科学技術展示室へと生まれ変わった。大和という戦艦だけでなく、地域が育んだ幅広い技術史を伝える場が拡張された。

3階「科学技術展示室」
3階「科学技術展示室」

変更点3:体験型展示の拡充 ~触れて動かす学びの場~

最後に「見て・触って・動かして」体験できる展示が充実したことだ。実物の砲弾に触れることができるコーナーや、操船機器に触れて操作できる体感型の演出により、子どもから大人まで能動的に学べる仕掛けが増えた。

リニューアル後、「見て・触って・動かして」体験できる展示が増えた。(中央:大和ミュージアム学芸員 濱名翔平さん 左:テレビ新広島(TSS)野川諭生アナウンサー)
リニューアル後、「見て・触って・動かして」体験できる展示が増えた。(中央:大和ミュージアム学芸員 濱名翔平さん 左:テレビ新広島(TSS)野川諭生アナウンサー)

その他の変更点

こうした大きな変更点のほかにも、館内全体でデジタル資料を増やし、展示総数もリニューアル前から約300点増加したほか、1階の呉の歴史展示室では展示ケースの下に空間を設けることで、車椅子の人もより近くで展示が見られるようにするなど、ユーザビリティを高める工夫や改修も各所に施された。

展示の意義と今後

こうした改修は、単なる展示の美化ではなく、歴史を「自分ごと」として考えるための仕組み作りでもある。戸高館長は「歴史の尊さと、繰り返してはならない側面の両方を示し、来館者一人ひとりに深く考えてもらえる施設にしたい」と語る。証言者の減少という現実を踏まえ、資料と体験を通じて記憶を次世代へつなぐ役割を強める意図が明確だ。

戦艦大和
戦艦大和

テレビ新広島

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