好成績は良好なコンディションを維持した結果
5月2日、3日にスカイホール豊田で「りそなグループ B.LEAGUE 2025-26 シーズン」のB1リーグ第36節が行われ、シーホース三河は越谷アルファーズをホームに迎えた。
CS(チャンピオンシップ)のホーム開催がかかる最終節。三河はGAME1を83-75で勝利し、8年ぶりとなるCSクォーターファイナルのホーム開催を決めた。GAME2は越谷のシュート確率が素晴らしく75-98で敗れたももの、レギュラーシーズンを43勝17敗の好成績で終了。これはライアン・リッチマンHC体制になってから最高の勝率であり、長崎ヴェルカ、宇都宮ブレックスに次ぐ全体3位という堂々たる成績でシーズンを締めくくった。
この躍進の裏には、選手たちのコンディションの良さが挙げられる。今シーズン、多くのチームが主力選手、特に外国籍選手の長期離脱に苦しむなか、三河は怪我によるトラブルが非常に少なく、安定した状態でシーズンを戦い抜いた。
「多くのスタッフが、シーズンを通して選手たちを健康でフレッシュな状態に保つために素晴らしい仕事をしてくれました。練習の強度やオフのタイミングなど、あらゆる面でスタッフが密接に関わり、徹底して取り組めたことが非常に大きかったと感じています。特にアダム(・ペトウェイ)は、この分野において世界でもトップクラスの存在です。彼のようなスタッフをチームに招き入れ、共に活動できていることは本当に幸運です」(ライアン・リッチマンHC)
コンディション維持の要因は、チームスタッフの尽力だけではない。「3年間の積み重ねも大きい」とキャプテンの石井講祐は語る。
「(リッチマン体制)1年目はコンセプトの理解や落とし込みに時間がかかり、練習時間も長くなりがちでした。一方、今シーズンは練習時間が短く、パッと集中してやって終わることが多かったです。3年間ほぼ変わらないメンバーでやっていて、ある程度の対策やコンセプトを伝えれば大枠を理解できるので、練習量をコントロールできました。(長期離脱が少なかったのは)コーチ陣による練習量の調整、トレーナー陣のトレーニングやケア、そして選手自身のセルフケアなど、いろんなことが上手く重なった結果と思っています」
1年目で土台を作り、3年目で花が開いた。まさに選手・スタッフを含むチーム全員で掴み取った結果と言える。
「特別なゲームだからこそマインドセットが大切」石井講祐
今週末、いよいよCSがスタートする。三河は、クォーターファイナルで琉球ゴールデンキングスとの対戦が決まった。琉球の印象について石井は「フィジカルなゲームになる」と話す。
「レギュラーシーズンでは勝ち越していますし、天皇杯でも勝利していますが、CSはまた別物です。本当にフィジカル勝負になると思うので、どれだけ気持ちで負けずに戦えるか。最後は肉弾戦のような展開になる気がしているので、そのフィジカルバトルに心で負けない準備をすることが大切と思っています。見えないところの接触を嫌がらず、やり続けられるかどうかが本当に重要」
これまで千葉ジェッツ、サンロッカーズ渋谷でもプレーし、大舞台での経験が豊富な石井。特別な試合になればなるほど、その経験が生きてくる。自身の糧となっている試合を尋ねると、2018-2019シーズンのファイナル(千葉J vs A東京)を挙げた。このシーズン、千葉Jは全体勝率1位で天皇杯も制覇。石井自身も3Pシュート成功率45.2%で個人タイトルを獲得していた。最高の状態で迎えたCSファイナルだったが、千葉JはA東京に67- 71で敗れた。
「シーズンを圧倒的な成績で勝ち抜き、絶対に優勝すると信じて疑いませんでした。でも、僕個人のメンタリティが『自分がシュートを決めたい』という気持ちに寄ってしまっていたんです。CSに入ってシュート本数が減り、得点が取れていない焦りから、『決めないとヤバい』というメンタルに入っていて…。それが自分には合わなかった。当時の千葉Jはファーストプレーを選手が決めていて、僕は自分がシュートを打つプレーを伝えたんです。今振り返ると、それは間違いでした。動機が『チームのため』ではなく『自分が決めたい』だったから」
石井は続ける。
「それまでは得点が少なくても、ディフェンスやルーズボールで貢献できていて、プレータイムももらえていた。チームのピースとして、相手に流れを渡さないようにやり切るのが自分だったので。それなのに、あのファイナルに関してはマインドセットが失敗した。後悔ではないんですけど…学びになった試合です」
翌シーズン、石井は渋谷へ移籍。そこでも天皇杯優勝を果たせたのは、「あのファイナルでの学びがあったからこそ」と振り返る。
「特別なゲームになればなるほど、普段通りのプレーは難しくなる。『ヒーローになりたい』といった、大舞台ならではの心境になると思うので。それを理解した上で、どう結果を出すか。その覚悟を持つことが大切です。感じるプレッシャーもシュートタッチの良さも、当日になってみないとわかりません。いろいろな感情をひっくるめて、今の自分の状態でどう戦うか、自分の役割をやり切る覚悟を持つことが一番必要だと思う」
戦術も大切だが、最後に勝敗を左右するのは「気持ち」や「心構え」なのだろう。リッチマンHCも同様のことを話していた。「戦術の機能には、十分な努力、競争心、そして勝利への意志が伴っていなければなりません。勝敗を分けるのはディテール(細部)。リバウンドやルーズボールへの執着、そしてハードにプレーすること」と。
負ければ終わりの過酷なトーナメント。1試合でも多く、このメンバーでの戦いを見届けたい。それがファンの切なる願い。
「ホーム開催は、本当に大きなアドバンテージがあると思っています。最後の数分、数点差という場面になれば、皆さんの声援が頑張る力になります。最後の最後まで、私たちと一緒に戦ってほしいです」
Bリーグの現体制のラストシーズン。シーホース三河は悲願の頂点へと突き進む。