上諏訪芸妓の新たなスタートです。芸妓になる夢をかなえた女性が2026年春、大学を卒業。地元・長野県諏訪市に戻り、本格的に「芸の道」を歩み始めました。仲間も増える予定で、「諏訪にかつての華やぎを」と決意を新たにしています。

■「たおやかな舞」で華やかな世界へ

たおやかな舞い姿。

「上諏訪芸妓」の美代遥(みよはる)さん(22)です。

4月12日、大正琴の若手奏者とのコラボレーションで、観客を華やかな世界に引き込みました。

観客:
「しぐさとか、素晴らしいですよね」
「今まで芸者さんは見たことなかったので、すごく良かったです」

上諏訪芸妓になって3年目の美代遥さん。

2026年春、本格的に芸妓の道を歩み始めました。

上諏訪芸妓 美代遥さん:
「社会人としては1年目なので、お勉強することがごまんとあるんですけど、やっぱり自分が始めたことですし、ここは踏ん張らなきゃいけない」

■「諏訪×東京」「芸妓×大学生」

「大学生の美代遥でーす」

2025年に取材した、素顔の「美代遥」こと、前橋亜季さんです。

当時は中央大学文学部の4年生。

地元・諏訪で芸妓として活躍する一方、東京で学業、サークル、アルバイトなど充実した大学生活を送り、「諏訪」と「東京」、「芸妓」と「学生」を両立させていました。

前橋亜季さん:
「大学に来て、こうして好きなことやりながら夢をかなえられてる」

■夢を諦めず「芸妓一本」へ

中学生の頃、大奥が舞台のドラマで華やかな着物姿に憧れた前橋さん。

日本舞踊や三味線を習い、芸妓を目指すように。

高校入学前には京都の置屋での修業にも挑戦しました。

一方、高校卒業後は大学進学を選択。「哲学」の世界にひかれ、学びを深めたいと思ったからです。

しかし、「芸妓」を諦めた訳ではありません。

東京でも日本舞踊の稽古に通うなど、「芸妓」になるための鍛錬を続けました。

大学2年生だった2024年に、地元の「上諏訪芸妓」の組合に登録。

ほぼ毎週、お座敷での仕事があるたび諏訪に通い、「芸妓」と「大学生」。二刀流で活躍してきました。

そして、2026年春、無事に大学を卒業。

この先は「芸妓一本」で生きていこうと決断したのです。

■花街の衰退…先輩ゼロからの復活

前橋さんの新たな生活が始まりました。

前橋亜季さん:
「諏訪大手見番といいまして、今からここで支度をして仕事に出ます」

「諏訪大手見番」は料亭や旅館に芸妓を派遣する、いわば「事務所」です。

昭和20~30年代には300人近い芸妓が所属し、温泉街を盛り上げた「上諏訪芸妓」。

しかし、時代と共に花街の文化は衰退。

前橋亜季さん:
「こちらが稽古場になっています」

前橋さんが芸妓デビューしたとき、先輩はゼロ。

商工会議所などの協力を得て、一人で「上諏訪芸妓」を復活させた形です。

■「生活していけるか」抱える不安

仲間を増やしたい―

そのための一歩として、2025年から、一般の人向けに日本舞踊の稽古を企画。

これからは、「大手見番」を盛り上げることが自身の役割と感じています。

上諏訪芸妓 美代遥・前橋亜季さん:
「芸妓さんを一本でやるっていう(までの)助走期間が、準備期間が2年あったのがすごく良かったなと。いざ自分がやろうとしたときにぶつかる壁がものすごく成長材料になったなと」

一方で、就職した同級生と比べて、安定していない状況に、不安を抱えています。

上諏訪芸妓 美代遥・前橋亜季さん:
「本当のことを言えば、やっぱり不安が大きくて。生活していけるんだろうか、これをずっと何十年も続けていくべきなんだろうか、不安と葛藤とすごくごちゃごちゃで」

■元・舞妓が「見習いさん」に

そんな前橋さんの支えとなる存在がいます。

上諏訪芸妓 美代遥さん:
「見習いの『まるちゃん』です」

丸山理奈さん(23)。2025年秋から大手見番に通う「見習いさん」です。

着付けをすませ、前橋さんが上諏訪芸妓「美代遥」に。

仕事前に踊りを確認します。

すでに美しいしぐさが身についている丸山さん。

実は16歳から京都の置屋で修業していた元「舞妓さん」です。

22歳で一度はその世界を離れましたが、知り合いから耳にした美代遥さんのSNSを見たのが転機になりました。

見習いさん 丸山理奈さん:
「ものすごく楽しそうにやっているなっていうのがすごく印象的で、思い切ってもう一回頑張ろうっていう気持ちになりました」

上諏訪芸妓 美代遥さん:
「私を見て声をかけてくれたというのが一番うれしいですね。泣いちゃう。ふふふ」

見習いさん 丸山理奈さん:
「お一人で頑張ってきた分の力がすごいなって。一緒にいさせていただいて、楽しい気持ちもありますし、ついていきたいって思える姉さん」

■「2人でできる」大きな励み

丸山さんは、仕事の際は実家のある埼玉から諏訪に通い、秋には上諏訪芸妓として「店出し」する予定です。

稽古も、お座敷もたった1人で奮闘してきた美代遥さんにとって、仲間が増えたことは大きな励みになっています。

上諏訪芸妓 美代遥さん:
「ニーズに応えられるようになったのが一番。そろっててきれいだなとか、掛け合いがあるなとか、見て楽しんでいただける。2人でできるっていうのがものすごくありがたいし、楽しいなって思ってます」

■地元も期待「文化の伝承を」

この日は、社会人として最初の仕事へ。

満開の桜が雨に打たれる中、毎年恒例、諏訪商工会議所の「観桜会」です。

雨で踊りの披露は中止になりました。

宴席を回り、盛り上げます。

地元の男性:
「木遣り、昔鳴いてたもん、こんくらい(幼い頃)から」

諏訪ということで話題に上るのはやはり、2028年に控えた「御柱祭」。

地元の男性:
「ぜひ盛り上げていただきたいと思いますね」

上諏訪芸妓 美代遥さん:
「木遣りも鳴いて、頑張りたいと思います!」

地元の観光関係者も美代遥さんの活躍に期待しています。

諏訪湖温泉旅館協同組合・伊東克幸 理事長:
「昭和の時代には戻れないと思うんですけど、新しい文化の伝承をお願いしたいという期待があります」

■新たな挑戦 琴奏者とコラボ

4月12日、美代遥さんにとって新たな挑戦となる舞台が。

プロの大正琴奏者・心馬さんとのコラボレーションです。

共に、2026年春大学を卒業し、本格始動する22歳の若手同士。

♪「春雨」

琴の音色に合わせて舞う美代遥さん。観客を魅了しました。

上諏訪芸妓 美代遥さん:
「意外と親しみやすいんですよっていうのを感じていただきたいし、美代遥さんきれいだった、おもしろかった、今度会ってみたいなと思っていただけたらいいな」

観客:
「視線の一つ一つからすごく細かくて感動しました」
「美代遥さんがこれから大手町をもう一回、復活させてくれることに期待してます」

■「上諏訪芸妓」の華やぎを再び

芸妓の道を突き進むことを決めた美代遥さん。

自身の芸を磨きつつ、「上諏訪芸妓」の華やぎを取り戻したい。

そのための「新たな一歩」を踏み出しました。

上諏訪芸妓 美代遥さん:
「(目指すのは)諏訪の芸妓さんを呼ぼう、じゃなくて、諏訪の芸妓の美代遥がお気に入りだからちょっと呼んでいい?って(なるように)。そのためにはやっぱり、仲間を増やさなきゃいけない。諏訪が栄えていくのに合わせて、私たちも栄えていけるようにしていきたいと思います」

長野放送
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