2020年11月3日に迫ったアメリカ大統領選挙。FNNプライムオンライン編集部では、専門家が現地の情勢を本音で語り合うオンラインイベント『ガチトーク』を6週連続で開催中。

10月28日(水)に開催された第5回では、アメリカの大学生ら若者の本音と投票行動、そして選挙後のシナリオについて議論した。アメリカ政治・外交、国際政治を専門とする慶應義塾大学総合政策学部の中山俊宏教授とフジテレビ報道局の風間晋解説委員の2人に加え、コロンビア大学政治学部准教授の彦谷貴子氏をゲストに迎えてガチトークを展開。その内容をお届けする。

大統領選に対するアメリカの大学生たちのホンネ

フジテレビ・風間晋解説委員:
彦谷さんはずっとコロンビア大学で教えていらっしゃいますが、アメリカの若い人は選挙をどう見ているのでしょう。

コロンビア大学・彦谷貴子准教授:
授業で学生たちに聞いたところ、ほとんどが投票済み。今回はコロナもあって郵便投票を選ぶ人も多いといわれており、きちんと届くかが心配なので早めに投票する傾向に。またNY市内も土曜日から投票所が開いています。これからの予定の学生も含め、(有権者の学生は)100%が投票すると言っていました。

風間:
学生たちの出身州や投票場所は?

彦谷:
ここニューヨークに6人、中西部に7人、残りは留学生。それぞれが地元州で投票。でもあまり激戦州で投票した学生はおらず、1人がミズーリ州だったかな。

風間:
コロンビア大学に入るような学生は、みんな民主党支持なのじゃないですか?

慶應義塾大学・中山俊宏教授:
保守派色の強い大学もあるが、コロンビア大学では保守派の人は違和感を覚えるのかも。

彦谷:
確かにコロンビア大学はトランプ大統領に名指しで批判されたり、アイビー・リーグ(アメリカ北東部の8校の名門私立大学の総称)の中でもリベラルの印象が強いと思う。しかし大学としては、支持政党によって居心地が悪くならないようにと考えており、私も学生に対して決めつけないように注意している。

ただニューヨークに住むような学生は多様な空間が好きだったりして、調査したわけではないけれど、ほかのアイビー・リーグに比べても民主党に投票する学生が多いのではないかという気がします。

コロンビア大学・彦谷貴子准教授
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風間:
彦谷さんのクラスの学生は投票率100%だと。もともと若い人は投票に行かない傾向があるが、今回は違うのでしょうか?

彦谷:
予測は難しいが、長期的な傾向をみると20歳代以下の投票率は上がっています。

学生に聞いたところでは、投票に行かない背景には動機とシステムの問題がある。動機の面は強まっている。ヒラリー氏が負けたとき、当時高校生だった女の子が女性に対する「ガラスの天井」を感じたとか。友達がもし不法移民なら追い出されてしまうかもしれないとか。大統領によって世の中が変わるのだという実感。だからこそ投票しないといけないと思ったと。

またシステムの面でも、コロナにより家でSNSに触れる時間なども増え、投票方法についての情報も豊富に見られる。これらを考えれば、投票率は上がるのでは。

中山:
今回、トランプ大統領を再選させてはいけないというネガティブな動機が強い。オバマ大統領のときはポジティブな気持ちだったのと逆。どれほどの危機感なのか、これを動機にどれほどの人が投票所に行くのかが分かれ目になる。

風間:
トランプ氏にイエスで投票所に行くか、ノーで行くか、どちらが強いか。

中山:
相手を否定して自分の支持を獲得するトランプ氏の強さもまた「ノーの強さ」。二つの拒否勢力が戦っているような感じ。

慶應義塾大学・中山俊宏教授

彦谷:
2016年11月にトランプ大統領が当選した選挙当日は、私が9月にコロンビアに来た直後でした。授業中も沈鬱だったり泣き腫らしている学生がいたり、辛かったらセラピストに会うよう指導したほど。相当な衝撃だった。コロナの影響で直接感じる機会が少なく、学生が今回はどう思っているかという点はわからないが。

中山:
確かに、2017年の就任式直後に彦谷さんに呼んでもらってコロンビア大学で講演したが、お葬式みたいな雰囲気だった(笑)。これはやばいな、と。

選挙後の混乱シナリオに対し、楽観的な見方も出始めている

風間:
選挙後のシナリオについて、8月あたりにあった悲観的な空気が楽観論に変わってきているという話がある。

彦谷:
楽観論とは言い過ぎかもしれないが……。8月ごろに報道された「悪夢シナリオ」はいくつかあった。郵便投票が全部捨てられてしまい、怒った若者が立ち上がり、トランプ大統領がBLMに対して行ったような制圧をして混乱するとか。負けたトランプ大統領が往生際悪くホワイトハウスを離れないとか。「そのときは軍が介入して引きずり出すべき」と退役軍人の方が投書して、それが軍から反発を受けたり。そんな想定が出るほどだった。

それに比べれば楽観的な話も出てきた。トランプ発言も弱気になってきたので、負けてゴネないとは思わないが、逃亡してくれるのでは、という話も。

中山:
「バイデン氏はもう大丈夫では」という雰囲気はあり、それがある種の楽観論に。ただ2016のこともあるから断言はできないのかも。

トランプ大統領が敗北宣言しない場合のシナリオはどうなるか

風間:
視聴者からの質問。トランプ氏が先んじて勝利宣言をやり、郵便投票の開票を途中で打ち切り、民主党は続行を提訴するが最高裁が却下、というシナリオはある?

フジテレビ・風間晋解説委員

中山:
そうなっても驚かない。開票には時間がかかるから、敗北宣言が決定的に重要。トランプ氏がそれをせず、時間稼ぎをして混乱させることを目的とする可能性もある。

彦谷:
コロンビア大学で政治学を学ぶ学生たちの中でも、それが一番心配されるところ。早く開票結果が出るフロリダ、ノースカロライナ、アリゾナあたりでバイデン氏が勝ってくれるといいんだけど、と皆が思っている。

ペンシルベニアでの黒人射殺事件の影響はどちらに転ぶか

風間:
26日にペンシルベニアで黒人男性が警察に射殺された事件の影響は。

彦谷:
たぶん一連のBLMに対するトランプ氏の反応を問題視している人は投票に行くだろうが、変に反発が拡大してトランプ氏の口実にされるのも困るという気持ちも民主党支持者には働いているでしょう。影響はまだわからない。

中山:
事件への反応で暴動が起こると、トランプ氏の掲げる「法と秩序」が鮮明になる。もし警官の問題行動が明らかになればバイデン氏に有利。どちらに転ぶかはわからない。

風間:
実際に暴動や略奪の映像が出始めているが、どっちに転ぶかはまだわからないと。

■ガチトーク第6回 11/4水 19:00開催! 特別ゲスト:三浦瑠麗(国際政治学者)

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第5回「アメリカ大統領選ガチトーク」特別ゲストにコロンビア大学政治学部・彦谷貴子准教授が参戦!