農業の高齢化や担い手不足が深刻化する秋田で、ドローンを使った稲作の新しい形が注目を集めている。苗を育てず、種を直接田んぼにまく「直まき」をドローンで行う取り組みが5年間続けられ、その成果がまとまった。どれほど省力化につながり、収量はどう変わるのか。実験の結果から、秋田の農業に広がる可能性が見えてきた。
直まきに挑んだ背景と技術開発
農業用ドローンは長らく農薬散布が中心だったが、導入コストを考えると「もっと活用したい」という声が現場から増えていた。そうした中で注目されたのが、苗を育てずに種を直接まく「直まき」との組み合わせだった。
秋田県立大学の西村洋特任教授は、この作業をドローンに置き換えることで大幅な省力化が見込めると判断し、県立大、大仙市、大館市の機械メーカー・東光鉄工の産学官の体制で研究が始まった。
実験では、東光鉄工が製造したドローンに散布ルートをプログラムし、日本版GPS「みちびき」を用いて位置の精度を高めた。狙った場所に種を落とせるようにし、苗作りや田植えの工程を省略する仕組みをつくり上げた。
研究チームは4シーズンにわたり、作業量、時間、コスト、収量などを丁寧に検証した。
作業負担と時間、コストで示された効果

実験でまず明らかになったのが、省力化の効果だった。
従来の移植栽培では、田植え機の準備や操作に複数人が必要だったが、直まきでは操縦者と補助の2人で作業が完了した。苗を育てる作業が不要になるため、春の農繁期に集中しがちな作業のピークを平準化できる点も大きい。
作業時間も短縮された。1ヘクタールの作業時間は、直まきが1時間、移植は2時間という結果になった。苗作りの数週間が必要ないことも含め、作業全体の効率は明らかに向上した。
コスト面では、育苗に必要なハウスや資材が不要になったことで設備費が削減できた。作業人数が少なくて済むため、人件費の削減効果も見込めた。
これらの点から、小規模農家でも取り入れやすい可能性が示された。
収量の改善と条件不利地での可能性
最も気になる収量については、初年度こそ大幅な減収となったが、ドローンの改良や散布方法の調整を重ね、2年目以降は改善に向かった。

直近3年間の平均では、移植栽培より3%ほどの減収に収まった。
西村教授は「苗作りが不要になるメリットを考えれば、一定程度に収まったと捉えるべき」と話す。
さらに、ドローン直まきの新たな可能性として、中山間地や不整形の田んぼなど、いわゆる“条件不利地”での活用が見えてきた。大型機械が入りづらい場所でも、ドローンなら上空から作業できるため、地形に左右されにくい利点がある。
広がる関心と今後の期待
もちろん課題も残る。
発芽がそろいにくい、雑草が増えやすい、鳥害を受けやすいといった問題がある。
それでも、県立大学などが実験結果をマニュアルとして公開すると、多くの農業関係者から問い合わせが寄せられた。
西村教授は「ドローンで農業ができる姿を見せられれば、若い世代の農業参入にもつながる可能性がある」と期待を寄せる。
直まき栽培は現在、全体のごく一部にとどまる。しかし、ドローンとの組み合わせで省力化・時間短縮・コスト削減が実現できる可能性が見えてきた。人手不足が深刻な秋田の農業にとって、新しい選択肢になる技術だ。
この取り組みがどのように広がり、秋田の農業にどんな変化をもたらすのか。今後の展開が注目される。
(秋田テレビ)
