上司から「お前」と呼ばれたことはないだろうか?

「『お前』なんて呼ばれ方をする職場では働けない」と言って、会社を辞めたという新入社員がネット上で話題となっている。
 

「お前」で会社を辞めた新入社員

 
 
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「僕は親にも『お前』なんて言われたことはありません」
「『お前』なんて呼ばれ方をする職場で僕は働けないです。」

新入社員が入社早々、会社を辞めると言い出した理由は、なんと「『お前』と呼ばれた」からだという。

これは、あるバラエティー番組で吉本興業所属の芸人が、吉本を退職したという新入社員のエピソードとして披露したもの。

この発言を受けてネット上では「辞めるほどではない」や「上司がお前って言ったらパワハラ案件なんだが」などと賛否両論が沸き起こった。
 

実際に「お前」を使っている人は…?

 
 

銀座にいた新社会人に「お前」問題について聞いて見ると、「『お前さぁ』って言われたら、顔には全然出しませんけど、嫌だと思います。ぞんざいな扱いに感じるので」という意見。

また他の男性は「これから職人さんが多い建設の現場で働くんで、そう言われるのもしょうがないかなと思っています」と諦めムードを口にしていた。


では、上司に当たる年齢の人たちは、部下のことをどう呼んでいるのだろうか。

「部下を呼ぶときは、『さん付け』で呼んでます。なるべく『〇〇さん』とか『〇〇ちゃん』とか呼ぶようにして、逆に『お前』って言わないようにしています」と答える男性や、「昔は『お前』っていう人も多かったですね。それが原因で辞めちゃう人がいるのであれば、気にした方がいいと思います」という意見。

上司に当たる人々は、言葉に気を使っているという人がほとんどだった。
 

パワハラの境界線を調査

 
 

そもそも、この芸人の話したエピソードは本当なのだろうか?

吉本興業に確認したところ「少なくとも過去3年間で、「お前」という呼ばれ方をしたことが原因で辞めた人はいない」との答えが返ってきた。

しかし、このエピソードが話題になるということは、言葉についての問題意識を持っている人も多いのかもしれない。
そこで「パワハラの境界線」について、新紀尾井町法律事務所の江口大和弁護士に聞いた。
 

 
 

●名前の呼び捨て
パワハラに当たらない。

●名前を呼ばずに「君は…」とか「お宅は…」
パワハラに当たらない。

●人種や宗教などをもじった差別的な呼び名
当然アウトで、呼んだ瞬間にパワハラになる。

●身体的特徴を揶揄するような、変なあだ名
これも一発でパワハラになる。

●「お前」に「さん」をつけた「お前さん」
実はこれ、笠井アナウンサーが部下によくする呼び方だが、これはセーフ。

●今回話題となってる「お前」
これは場合によってはパワハラになるという。

●「貴様」「てめぇ」
「お前」と同様、場合によってパワハラになる。


この「場合によって」の場合とは、「お前」などと呼んだ部下に対して、続けてどのような言葉を投げかけたのかによってパワハラかどうか変わってくると江口弁護士は解説する。
 

 
 

「お前」の後に、どんなことを言うとパワハラになるのだろうか。

パターン別に江口弁護士に見解を聞いた。

 
 

●お前は新人だからずっと判子だけ押していればいいからな
パワハラに当たる。
能力に比べて、過少な仕事を指示するような発言で、「お前は新人だから」も侮辱の意味を持つという。

●お前、時間は守れ!お客様が待ってるんだぞ!
パワハラに当たらない。
教育的な言葉を述べているため。

●新人「あの…書類の確認を…」 上司「なんだお前 今忙しいから置いとけ」
パワハラに当たらない。
相手を攻撃をするために言っている言葉ではないため。

●お前は1年目なのに有給を取るのか
パワハラに当たる。
「有給」についての発言がパワハラにあたり、「お前は1年目なのに」も侮辱の意味を持つということだ。


こう並べて見てみると、呼び方でパワハラかどうか決まるわけではなく、やはり発言の内容に注意しないといけなさそうだ。
また、発言をする相手との関係性によっても、それがパワハラに当たるかどうか変わってくるという意見もスタジオで聞かれた。

自らの発言がパワハラに当たらないよう、普段から相手の気持ちに立ち、気をつけて発言することが必要だ。
 

(『とくダネ!』ヤマサキ調べました・4月23日放送分)
 

とくダネ!
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