周囲の視線が冷たい...なんてことないですか

自分では思いあたる節がないのに、なぜかみんなの視線が冷たい...。何かやらかした?

このような経験をしたことがある人もいるのではないだろうか。もしかするとそれは、あなたの何気ない言動が周囲に快く思われていないからかもしれない。

例えば、神経系の症状とされているのが「ミソフォニア」(音嫌悪症)と呼ばれるもので、一般的なそしゃく音やタイピング音に強い嫌悪感を抱えてしまうこともある。パソコンのエンターキーを「ッターン!」とたたく音が、耐えがたい人もいるのだ。

キーをたたく音が苦手な人もいる(画像はイメージ)
キーをたたく音が苦手な人もいる(画像はイメージ)
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そして「ミソフォニア」とまでいかないまでも、他人のちょっとした言動で嫌な気持ちになる人は意外と多いかもしれない。

「あの人そうかもな…」と自分ではなく周囲に思い当たる人がいる場合もあるだろう。それでは、周囲を怒らせやすい人や誤解されやすい人に共通点はあるのだろうか。

今回はコミュニケーションを研究する、一般財団法人「日本コミュニケーショントレーナー協会」の椎名規夫代表理事にお話を伺い、共通点やその要因などを探ってみた。

語気、態度、視線などで損をしている

――まず、周囲を怒らせてしまう人の言動などにパターンってあるの?

周囲を怒らせたり、誤解される人は、無意識のうちに不快感を与えていることが多いです。語気が強かったり、態度がよくなかったり、視線が厳しかったりなどですね。

人間同士の交流は、相手に伝える「情報」その「伝え方」で成り立っています。そしてコミュニケーションで大切なのは、この伝え方の部分です。例えば、同じ言葉で話しかけたとしても、声の質やトーン、態度などでその印象は変わってしまいます。

同じ情報を伝えても、伝え方が不器用なばかりに損をしているところがあります。


日本コミュニケーショントレーナー協会・椎名規夫代表理事
日本コミュニケーショントレーナー協会・椎名規夫代表理事

――そのような人に共通する要素はある?

協会としての経験則で言わせてもらうと、落胆をあらわにしたような語気、他人を疑うような視線が無意識に出てしまっている人は特に誤解されやすいですね。

また「極端に自信がない人」と「極端に自信がある人」が多いようにも感じられます。

極端に自信がない人は、話し言葉の語尾が聞き取れなかったりして、周囲に何を伝えたいのかが理解されにくい。逆に極端に自信がある人は、周囲の話を聞いているつもりがアドバイスしてしまう、自分の正しさを押し付けてしまいがちですね。


――なぜそうなってしまう? 怒らせてしまう人は何が違う?

人間は個々の性格や遺伝の違いがあるので、一概には言えません。

ただ、幼児期の生育環境が影響している可能性はあるでしょう。

脳は右半球(右脳)と左半球(左脳)で役割が違い、左半球は言語機能など、右半球は直感や外部情報の判断などに影響するとされています。このうち、コミュニケーションに強く影響するのは右半球です。場の空気を読んだりする能力ですね。

神経科学では、右半球の成長は幼児期の経験が重要とされているので、小さなころにその分野の学びがうまくいかないと、大人になってからも苦労する可能性があります。


――とはいっても、幼児期の子供にはどうにもできないのでは?

その通りです。なので、周囲の環境や家族の接し方が重要になってきます。親やきょうだいは、優しさや思いやりを育めるようにゆっくりと優しく接してあげるべきですし、右半球の成長に役立つようなプログラムなどを、学ばせることも一つの手段です。


大人になってからでも改善はできる

――大人になってからではどうにもできないの?

大人になってからでも改善はできます。代表的な方法は、過去の失敗や周囲を傷つけた出来事を振り返り「反省すること」です。私たちが無意識に出してしまう人格や価値観は、脳の反射的な反応から呼び起されるとされています。

この脳の反応は「オキシトシン」というホルモンで改善できるとされています。オキシトシンは“愛情ホルモン”と呼ばれていますが、反省することでも分泌されるので、自分の至らない部分を見つめなおすだけでも、人格や価値観を少しづつ改善できます。


――実際にはどう行動すればよい?

まずは、自分がなぜ周囲を怒らせているのか、誤解されているのかに気づくところから始めるべきです。それに関連する過去の失敗をあえて思い出し、どうすれば改善できるかを考えてみましょう。反省するプロセスを重ねることで、変わっていけるはずです。

ただ、自責の念が高まりすぎると「周囲と関わりたくない」という感情につながることもあるのでネガティブになりすぎないことも重要です。反省するときは、成功体験や自分のよい部分も見つけるなどして、バランスを取りながら改善につなげましょう。


ストレスにならない範囲で反省することが大切という(画像はイメージ)
ストレスにならない範囲で反省することが大切という(画像はイメージ)

周囲は気付きを促すサポートをしてあげて

――では、周囲にはどのように接したらよい?

周囲を怒らせてしまう人、周囲の人どちらにも伝えたいのですが、誰しも未熟なところはあると考えてはいかがでしょうか。怒らせてしまう人は「未熟だから誤解された」と素直に謝罪する。周囲の人は「未熟だからしょうがない」と許す気持ちを持つべきです。

人間関係や人格の問題は短期的に解決できるものではありませんが、怒られる人がよい方向に成長できれば、周囲にもよい影響が出てくると思います。


――周囲の人間が、怒らせてしまう人にできることはある?

周囲を怒らせてしまう人は、自分がそんな行動や言動、態度をしていることに気付けていないことが多いです。そのため、気付きを促すサポートをしてあげるべきでしょう。

例えば会社の場合、上司が定期的な面談をすることで、本人が問題の所作があったときのことを振り返ったり、その場面を再現したりすることで気付きにつながることがあります。ただそのときは怒らないであげてください。誤解があることを理解しつつ、協力する姿勢で接してあげましょう。


周囲を怒らせる人も、それで悩みを抱えているかもしれない(画像はイメージ)
周囲を怒らせる人も、それで悩みを抱えているかもしれない(画像はイメージ)


周囲を怒らせやすい人はもしかすると、意図せずに発している、語気、態度、視線などが不快感を与えてしまっているのかもしれない。ただ、過去の失敗の振り返りと反省で改善することもできるとのことなので、身に覚えがある人はできる範囲で取り組んでみてもよいだろう。

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プライムオンライン編集部
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