“稼げる”日本ラグビーに!W杯熱狂の中でカリスマ名将が訴えた危機感と夢

カテゴリ:芸能スポーツ

  • “ラグビー界のカリスマ”清宮氏が永田町に登場
  • 赤字体質脱却と2021年のプロリーグ創設構想
  • W杯や東京五輪をきっかけにスポーツ文化を定着できるか
歴史的勝利によって日本中が歓喜に包まれた(9月28日・パブリックビューイング)

永田町でも吹き荒れたラグビー旋風

日本代表の快進撃により列島中が沸きに沸いているラグビーワールドカップ。優勝候補アイルランドからの歴史的勝利によって日本中が歓喜に包まれたが、永田町もその例外ではなく、その興奮は10月1日に行われたある会合でも冷めやらなかった。

「アイルランドに勝っちゃったねえ」などと出席者が喜びを共にしていたその会合は、超党派の『スポーツ議連・スポーツレガシーの在り方に関する検討プロジェクトチーム』だ。来年に迫った東京オリンピック・パラリンピックと、それに向けた国内でのスポーツの盛り上がりをレガシー(遺産)として、その後のスポーツの普及や環境整備に繋げていくことを目的としている。冒頭に座長を務める遠藤元五輪相は次のように挨拶した。

「先日のアイルランド戦がありまして、こうして今日、ニコニコ顔で出席をさせていただきました。こうしたラグビーの盛り上がりが次のオリンピック・パラリンピック、確かもう297日くらいですか、300日切りましたし、その後のマスターズと、日本のスポーツの発展になお貢献していただきたいと思っております」

スポーツ議連・スポーツレガシーの在り方に関する検討プロジェクトチーム(10月1日)

国会内でカリスマ監督が語った「涙の勝利」と「日本再開催」

日本ラグビーフットボール協会の副会長に就任した清宮克幸氏

その言葉を受ける形で登壇したのが、2019年7月に日本ラグビーフットボール協会の副会長に就任したばかりの清宮克幸氏だった。清宮氏といえば選手としての活躍は勿論、監督として名門早大ラグビー部を復活させ大学日本一に導き、日本ラグビー最高峰のリーグであるトップリーグでもサントリーやヤマハ発動機ジュビロの監督を務め、日本選手権を制するなどしたラグビー界のカリスマだ。プロ野球・日本ハムの清宮幸太郎選手の父としても知られる。

監督として名門早大ラグビー部を復活させた清宮氏(時事)

清宮氏はアイルランド戦について「すごい試合を見てしまいまして、こんなに僕に涙が出る余地があったんだっていう感動的な試合を日本代表がしてくれた。多くの人にラグビーの良さを伝えられた一日だった」と振り返った。その上で、この大会での競技場への来場者数がここ1週間で延べ42万6236人、チケット販売率で97%に達したことなど具体的な数字を挙げ、日本で大会を開催したことへの手応えを強調しつつ、「もう一度この日本でワールドカップ開催を目指す」と語った。

アイルランド戦での歴史的勝利に清宮氏も涙を流した(時事)

名将が口にしたに日本ラグビーが抱える深刻な問題

一方で清宮氏は、やや硬い表情を浮かべて次のように述べた。

「衝撃的な数字なんですけども、過去12年のうち、7回の赤字決算。企業に依存したトップリーグ。色々な項目でなんとも情けない文字が書かれています」

清宮氏が、ワールドカップ後の日本ラグビーの姿を考えていく必要があるという中で訴えたのは、現在の日本ラグビー界の赤字体質への危機感だった。

清宮氏は、「過去12年のうち7年が赤字決算」であることや「チケット売上の6割が企業購入」だといった具体例を示しながら、トップリーグの企業依存体質や、ラグビー協会自体の不安定な財政基盤などがその原因だと指摘した。さらに、世界における日本ラグビーの立ち位置を端的に表しているとして、次の数字を紹介した。

「実は世界で3番目に大きな金額を払っているのが日本、286億円。しかし、収益は38億円で10位です。世界で3番目にお金を使っているのに商売が下手なんでお金が全く稼げていない」

プロリーグ創設で飛躍、赤字体質脱却を

さらに清宮氏は、日本のスポーツ市場の収益例として、プロ野球が約1800億円、サッカー・Jリーグが約856億円だと紹介。日本のラグビーも『プロリーグ』を創設することで日本ラグビー界全体の収入増をはかるべきだとし、2021年秋をメドに世界最高峰のラグビーリーグの開幕を目指すと強調した。日本ラグビーのプロリーグ創設についてはこれまで何度も議論されてきたが、今まさにW杯効果で沸騰しているラグビー熱の“余熱”を利用して、一気に実現にこぎ着けたいということだ。

清宮氏はこの他にも、ラグビー日本代表の選手強化やラグビーの普及教育に必要な予算の欠乏、オリンピック種目である7人制ラグビーの国内大会が存在しないといった現状を指摘。それが日本ラグビーの一層の強化や飛躍を困難にし、国内での認知度が上がらない理由だと訴えた。また、日本の急激な人口減少と少子高齢化も、ラグビー界が抱える大きな課題の1つだとした。

清宮氏の熱のこもった話を聞いた国会議員からは、「ラグビーに対する国内の盛り上がりを取り込んで頑張ってもらいたい」といった声が多く挙がる一方で、プロリーグ創設に関しては「難しい課題も抱えている。少し時間をかけて形を作っていくべき」と、焦りは禁物だとする声も聞かれた。

ワールドカップや東京五輪により“スポーツ文化定着”のレガシーを

また会議では、ラグビーだけにとどまらず、国民が今後さまざまなスポーツに触れ、参加するためには、「スポーツを健康で安全に行える環境整備」が重要だとして、小中学校の体育館へのエアコン設置の徹底や、運動公園の夜間利用のための照明設置の必要性なども議論された。

今回の日本代表の快進撃によるラグビー熱を、一過性でない「ラグビー文化」として定着させられるか。あるいは東京五輪をきっかけとして盛り上がるであろうスポーツ熱を、「スポーツ文化」として暮らしの中に定着させられるかどうか。熱狂の中でも未来を見据え、格好のチャンスを逃さないための取り組みが問われている。

フジテレビ政治部 福井慶仁

取材部の他の記事