令和元年9月11日。第4次安倍再改造内閣が発足するこの日の朝を特別な思いで迎えた1人が、衆院当選8回で復興大臣への起用が決まった田中和徳氏だ。
衆院当選5回以上が大臣適齢期と言われる中、当選8回の田中氏は、いわゆる「入閣待機組」の一人で、今回待望の初入閣となった。
安倍首相は今回の人事で、小泉進次郎氏を環境大臣として入閣させることで「挑戦」の姿勢を打ち出した一方、麻生副総理や菅官房長官を留任させ、政権の骨格は変えず「安定」を維持した。実は今回の田中氏の入閣はこのどちらにもあてはまらない。
安倍総理は今回の組閣でも昨年の総裁選で自らを支持した派閥に一定の配慮を見せた。その「配慮」に当てはまるとも言えるのがこの田中復興相である。党内第2の勢力を誇る派閥の麻生派は今回「田中さんの入閣が最優先」とし、派閥の長である麻生副総理は、先週末にも安倍首相の私邸を訪れて働きかけた。他にも多くの幹部が「何とか田中さんの入閣を」と繰り返し働きかけていた。こうした周りのお膳立てを経て、初入閣を果たしたのだった。
どのようにして田中氏は入閣を知ることになったのだろう?
今回FNNは新内閣発足の朝に田中氏を直撃!思いを聞いた。さらに、同じ神奈川県選出の政界のプリンス、小泉進次郎環境相についても語ってくれた。
午前8時。川崎市にある田中氏の地元事務所は電話がひっきりなしに鳴っていた。支援者からのお祝いの電話だそう。田中氏自身の携帯も鳴りやまない。
「事務所の電話も深夜にも関わらず鳴りますし、支援者からも仲間の国会議員からも、ありとあらゆる電話があって…まだ継続中で鳴りっぱなしです。メールはまだまったく返信もできていないので、これから返信したい」
そう話す田中氏の顔には自然と笑みがこぼれていた。当日の朝はごく簡単な食事と牛乳で済ませたそう。気になる安倍首相からの「初入閣」連絡は一体どんなものだったのだろうか?
「きのうの午後3時すぎに、総理から『閣僚の予定者の中の一人として指名させていただきます』と電話がありました。『ありがとうございます』と伝えました。」
しかしその時は復興大臣であることは伝えられず、ポストについてはまた後で連絡すると言われたそう。そして午後9時。運命の電話が鳴る。
(安倍首相)『今ポストが決まったので電話をしました。復興大臣をお願いします。』
(田中氏)『ありがとうございます。頑張ります。』
この瞬間、田中復興相が内定したのだった。
当初、復興大臣には復興政務官の経験もある小泉環境相が就任するのではないかという観測もあった。環境と復興。今後の連携について聞くと、小泉家とは縁があることを語ってくれた。
「小泉さんは同じ神奈川県ということもあり、かつてはお父さんの小泉純一郎先生にご指導いただきました。そのご子息ということで親しみを感じています」
進次郎氏と初めて会ったのは進次郎氏の初出馬のときだったそうだ。
「初めて会ったときはかわいい青年、男前だな、お父さんよりも男前イケメンだなと思いましたね。」
そして、同じタイミングでの閣僚となることへの期待も口にした。
「政界のサラブレッドというか、期待に応えて頑張ってほしいし期待をしています。若い大臣ですし、国民的な任期も高い政治家ですから、期待通り頑張っていただきたい、特に結婚されましたしお子さんも誕生されると伺ってますしね。家庭と両立ということで新しい人生のスタートであろうと思いますので、日々の生活も大事にしていただき、充実した日々を送っていただければと思います。」
また、今後の進次郎氏との連携についても意欲を示した。
「東北の復興は豊かな自然、豊かな生活を発展させるのが復興の一番大切なこと。東日本大震災の関係や福島原発のみならず、環境省の仕事とぜひコラボレーション、力を合わせていきたいです」
そして田中氏自身は復興大臣としてどのように取り組むのか。
「第一は東日本大震災の復興、これは物理的な復興だけでなく、皆さんの心が復興することが大切です。一方で日本は自然災害が多い国です。自然災害に打ち勝つことで、日本の歴史や文化は発展してきました。各地の起こり得る災害に対して、しっかり復興できる国だと世界に示したい。今と未来、この2つを合わせて対応していきたいです。」と決意を示した。
一方で「復興より議員が大事」と発言し桜田元五輪相が発言し辞任するなど、「心の復興」が軽んじられているのではないか質すと、「発言は残念だったと思う。政治家としてどのように伝えるかということは非常に重要です。私も閣僚の一人として言葉を慎重に、ですが伝えるべきことは丁寧に説明もしないといけません」と緊張した面持ちで語った。
「物理的な復興だけでなく、心が復興することが大切」と繰り返した田中新復興相。その言葉の通り、被災者の心に寄り添った仕事ぶりを見せられるか注視していきたい。