「それって、ホント?」と言いたくなるマナー、多くありませんか?
新入社員のキャトウさんも、そんな“もやもやマナー”に悩まされるひとり。

大事な会議、バッチリ成功させたい!
意気込んで会議室に一番乗り……席は選び放題?いいえ、そんなわけがありません。

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誰がどこに座ればいいの?悩んだキャトウさん。「何か違う…」と思いつつも、気付けば全員集合写真のような並びに…
SNSにも「新人なので一番下座に行きたいのに、どこだかわからない…」「円卓ってどうすればいいの!?」とお悩みの声が。
そこで今回のテーマは…

さっそく、国内外の企業や大学などでのマナーコンサルティングや人材育成などのマナー指導を行っている、マナーコンサルタントの西出ひろ子さんにお話を聞いた。

まずは、一般的な会議室の場合から。

テーブルを挟んで向かい合わせに6席が並び、入口の向かい側には景色の見えるガラス窓。
自社3人対、お客様3人で自社、お客様ともにそれぞれ3人の役職が違うパターンで見ていきたい。

西出氏:
大前提として、国際儀礼を用いるような設定ではなく、一般的なビジネスシーンにおいて様々な状況に遭遇なさる皆様のために、日常で使える席次をお伝えいたします。

席次の一般的な基本ルールに則ると、入り口から最も遠い席が最上席となりますので、 お客様の役職の高い順に D→E→F。自社は、A→B→Cとなります。

まずは、基本的なルールとして、入口から遠い席が上座にあたる。
この部屋の場合、入口から遠い窓側一番奥の席(D)に、お客様のうち最も役職が高い方が座ることになり、続いてE、Fの順に座っていただくのがいいだろう。
自社側も入口から遠い席A、B、Cの順に並ぶのが基本的な席次だ。

しかし、必ずしも「入口から遠い席=上座」ということになるわけではない。
たとえば、3席の中央にメインで話す人が座る場合や、部屋からの眺めを考慮する場合もある。


西出氏:
役職が最上位の方や、メインで商談を進める人が、真ん中に座ることも多いため、その場合は、

お客様 E→D→F 自社 B→A→C

という場合もあります。
大切なことは、お客様の役職順に合わせて、自社の人がその向かいに位置することです。

西出氏:
訪問した際には、先に、先方がどのように座っているか、によっても変わります。
もし、先方(受け入れ側)の役職がもっとも高い方が、真ん中に位置していれば、訪問側も同様に合わせます。


また、今回のように、景色の見える窓がある場合などは、その景色が大変良い景色であれば、ご案内する際に、「本来ですと奥におすわりいただくのですが、景色をお楽しみになるのであれば、こちらでも」と、先方に伺い、相手様にお好きな場所をお選びいただいてもよろしいかと思います。

さらには、お客様が言いにくい場合もあることを考慮し、窓側の席にあらかじめ、担当者のPCなどを置いておくと、一般的には下座にはなりますが、おのずと、お客様には景色を楽しんでいただける側に座ってお待ちいただく、ということも実際にあります。

基本の席次を知識として知っておき、状況に合わせて、きちんと、一言、コミュニケーションをとり、双方、理解の上、臨機応変に対応すれば、問題になることはないでしょう。

ただし、若手が一言もなく、上司や先輩よりも先に上座に座るようなことはNGです。


たとえば、本来“下座”にあたる席でも、良い景色が楽しめるなど、お客様にとって心地よく過ごせそうな席なら、おすすめして失礼にあたることはないだろう。
基本となる「上座・下座」は存在するが、シチュエーションによって柔軟に考えるのがよさそうだ。

一般的なビジネスシーンにおいて、円卓を使用しての会議の機会は少ないかもしれないが、実は円卓の席次ルールは結構複雑。
前述の“四角テーブル”を囲むパターンとは少々異なってくる。

西出氏:
円卓の場合も席次は存在し、状況に応じてその席次が変わることがあります。

しかしながら、現実的に、円卓を使用する場合は、もともと、地位や立場関係なく、皆さんが同等の発言力を持って意見交換をしましょう、というような場合に使用されることが多くある、という点をご理解いただいた上で、今回ご説明するのは、会食ではない商談時における円卓の席次です。

まず、部屋の中心の位置・最奥となるAの席にお客様のうち最も役職が高い方が座る。ここを基準に、円卓の場合の席次ルールに則って考えていくと…


西出氏:
一般的なビジネスシーン、商談などにおける席次ルールに則る場合、お客様はA→F→Bとなりますね。
役職が最も上の人がAの席。Aを基準に、西洋では右上位のため、次席はAの右隣、その次は左隣となります。

自社の人はD→C→E。
自社の最も上の人が、相手の最上位のAの向かいのDの席に座り、そこを中心として、次席は右隣、その次は左隣となります。

西出氏:
とはいえ、相手の二番手(Fの席)の隣に自社の三番手が、相手の三番手(Bの席)の隣に自社の二番手がくるため、これが気になるということで、EとCを入れ替えると考える場合もあります。

西出氏:
しかし、そうすると、自社の二番手が入り口に最も近い席になり、三番手の方が入り口より遠い席となるため、部屋の構造からいくと、おかしい、違うのでは、という考え方にもなります。

相手の位の横に同等の位の人を座らせることを優先させるのか、部屋の構造の元々の席次のルールを優先させるかは、それぞれの考えに応じて良いと思います。


さらに、気心知れた相手などの場合は、 先方の最上位の方の右隣に、自社の最上位の人が座ることもあります。この場合は、

相手 A→B→C
自社 F→E→D

とすれば良いでしょう。

西出氏:
さらに、親睦を深める会合などの場合は、となりに他社の方と交互に座ることもあります。

西出氏:
ただし、人によっては、1番手同士が隣り合わせで、互いの表情がよく見えない、などと思うこともあるかもしれません。受け取り方や感じ方は、人それぞれありますね。


「円卓ならみんな平等?」と思ったキャトウさんは残念ながらハズレ。

西出氏によると「会議の場合と食事の場合、食事でも国際儀礼のプロトコルと中国料理、中華料理を食べる場合などでは、そのルールなど状況に応じて異なりますので、一概に言えないというのが正直なところです。食事でも、ご夫婦での参加なのかなどなど、本当に様々なシチュエーションで席次は変わります」とのことだ。


西出氏:
円卓の場合も、基本スタイルは知っておきつつも、その時の状況や、相手様やみんながもっともしっくりと心地よく会談ができる席に座ることが大切なことと思います。この場合も、互いがその場で会話を交わすコミュニケーションがあれば、問題はないでしょう。


たとえば、“四角テーブル”の場合でも、テーブルのレイアウトや状況によって、右の席が左に比べて上位なのか、それとも部屋の奥の席が上位なのかなど、何を優先させるかに応じて、席次は変わってくるというので、柔軟に捉えるのが良いだろう。

では、仮に下座に座っていても、相手から上座をすすめられたら移動をしてもいい?


西出氏:
「恐れ入ります」といって、上座に座って問題ありません。
むしろ、そうするほうが、すすめた相手の顔をつぶしません。 気心しれた同士であれば、「お心遣いありがとうございます。しかし、このままでまったく問題ありませんので、このままでお願いします」などとお伝えしても良いですね。

相手様に失礼のないように、と席次に悩まれる方も多くいらっしゃいますが、最低限、失礼にならない位置を理解しておき、そのほかは、そのときの状況などに応じて、先方のご意向などを伺ったり、その場で理由を説明しながら指定の場所にお座りいただいたりしながら、安全かつ心地よくお過ごしいただける席にご案内することが大切なことと存じます。
ビジネスシーンでは、席次よりも大切なこともあります。心地よく良い商談ができ、その内容に互いに理解や納得し合え、お互いにWIN-WINの関係を築ける場になることを願っています。


今回の“もやもやマナー”、基本のルールはしっかりおさえた上で、コミュニケーションを楽しんで。

(漫画:さいとうひさし)

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プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。