岸田首相は26日、新型コロナの法律上の位置づけを、現在の「2類相当」から季節性インフルエンザと同じ「5類」へ、5月8日から引き下げる方針を固めた。

「4月1日」スタートの案なども浮上していた中で、なぜ、一見中途半端にも見える「5月8日」になったのか。

フジテレビ政治部・伊藤慎祐記者が解説する。

「キリが良い」4月1日スタート案はなぜ立ち消えに?

政府は27日、新型コロナについて、5月8日にインフルエンザと同じ5類に引き下げることを正式決定します。

なぜ5月8日というタイミングになったのか。岸田首相は20日、「5類」への移行時期を「原則この春」と話していました。

この記事の画像(12枚)

「この春」というのがいつなのかが焦点となっていましたが、政府内で検討されていた案は実は3つありました。

「A:4月1日から  B:5月1日から  C:5月8日から」この3つです。

今回決まった5月8日以外は、4月1日も5月1日も月のはじめで、キリが良いように感じますが、実は政府も同じように考えていて、当初は、新年度が始まる「4月1日」スタートを「キリが良い」として検討していました。

ところが、政府内から「感染状況がどうなるか分からない」という意見や、地方の自治体から「準備に3カ月かかる」といった不安の声が出たため、「4月1日」スタート案は立ち消えになりました。

そこで、5月スタートを検討するわけですが、なぜ1日ではなく、8日なのか。

コロナが5類に移行すると、これまでコロナ患者を受け入れてこなかった一般の医療機関でも受け入れを始めることになります。

さらに、患者や濃厚接触者も自宅待機などの行動制限の必要がなくなります。

ここでカレンダーをご覧ください。

今年のゴールデンウィークは、4月29日から5月7日までで、5月1日はキリの良い数字ですが、連休の真っ只中なんです。

政府内からは、人の動きが活発になる連休中に行動制限をなくすと、感染が拡大するという恐れが指摘されました。

さらに、連休中は多くの医療機関が休みになることにより、受診に影響が出ることを懸念する声も上がりました。

そこで、連休中にスタートする5月1日案ではなく、連休明けの5月8日案が採用されたわけです。

岸田首相の地元・広島でG7サミット その前に…

政府にとっては、感染を再び拡大させないことが最重要ですが、それだけではないんです。ここで、注目のウラ情報がこちら。

「統一地方選とG7サミットを意識」

統一地方選というのは、今年4月9日と23日に、都道府県の知事や議員などを選ぶ大型の地方選挙です。

この統一地方選の準備は地方自治体にとっては大変な作業で、5類引き下げを4月1日にすると、引き下げの準備と選挙の準備が重なり、厳しいという事情がありました。

ただ、こういった実務面以上に、4月1日を避けたい理由があったようなんです。

その理由について、ある政府関係者は「選挙前に大きな変化はない方が良い」と語っています。

どういうことかというと、5類に変更する際には、様々な混乱が生じる恐れがあります。

それが選挙の直前だと、与党の選挙に悪い影響が出てしまう懸念もあり、もしかしたら、それを避けたいという思惑もあったとみられるんです。

また、政府は「5類」に引き下げる際には、1カ月程度前に、本当に移行していいのかどうか、感染状況などを最終確認する考えです。

5月8日の1カ月前というのは、まさに統一地方選挙が行われている時期ですよね。この日程だと、もし選挙の前に感染状況が悪化した場合でも、移行の時期を見直すことも可能で、選挙への悪影響を最大限抑えることもできます。

さらに、岸田首相が最も重視していると言えるのが、5月19日から21日の間、地元・広島で行われるG7サミットです。

今月、岸田首相のG7各国への訪問に同行した関係者は、「マスクをしていたのは日本だけだった」と心配していたんです。

そこで、サミットまでに5類に引き下げることで、マスクの着用が必ずしも必要ではない状況を作りたいという思惑も見てとれます。

また、4月1日や5月1日に引き下げると、サミット前に感染が拡大してしまう可能性もあるため、こうしたリスクを避けたかった狙いもあるようです。

(「イット!」1月27日放送)