重い病気や障がいのために医療的なケアを日常的に必要とする人たちがいます。
厚生労働省の調査によりますと、医療的なケアを必要とする子供がいる家族の7割が、「いつまで続くかわからない日々に強い不安を感じる」と回答しました。

しかし、家族は日々のケアに追われその不安をほかの人たちと共有できる場はあまりないと言います。
そんな家族を支えようと、医療的ケアを必要とする子供の母親たちが動き始めました。

「同じ立場でしか分かり合えないことがある。」
家族同士の新たなつながりが模索されています。

仙台市泉区のカフェで始まったライブ配信。

「ほのぴあライブ始めたいと思います。よろしくお願いします!」

毎週水曜日と金曜日、午前10時半からYouTubeで配信されている「ほのぴあライブ」。
配信するのは、医療的ケアを必要とする子供の母親、5人です。

子供の年齢も8才から30才とさまざま。
この日は、17才の娘を育てる日下さんと8才の娘を育てる川代さんの担当です。

今回のテーマは、「寝たきりの子供たちの散髪・着替え・身だしなみの整え方」。
寝たきりでも乱れにくい髪型や散髪方法、子供の体の状態に合わせた着替えのテクニックなど、自分たちの経験やそれについて感じていることなどを話しました。

川代さん
「これジッパーなんですけれど、すぐ上げられて着替えやすいのあったらすぐ買う。フードのない、パーカみたいな。」
日下さん
「これ気切(気管切開)していてもいいよね。」

日下さん
「太郎さん(から質問)。夏は甚平、夏以外は毎日気温に合わせたカーディガン。」
川代さん
「甚平いいですよね。私も結構甚平着せます。紐で肌に優しいし。」
日下さん
「病院着みたい。」
川代さん
「そうそう。でも病院着みたいってことは脱ぎ着させやすいということなんですよ。」


そしてこの動画は配信している場所にも、伝えたいメッセージが込められています。

「ちょっとレアでもいいなら、強火で焼いていただいて…。」

この場所は、社会福祉法人「あいの実」が運営するカフェ。
動画を配信している母親たちは、全員このカフェで働いています。
医療的ケアが必要な子供がいても、「働ける」ことを伝えたかったと言います。

この配信を企画した「あいの実」の久保潤一郎さんです。
日ごろ、医療的ケアが必要な人の通所施設などを運営していますが、保護者同士のつながりの少なさを感じこの配信を思いついたと言います。

あいの実 久保潤一郎専務理事
「自分と同じような悩みを抱えている人がいることに気づいてもらえるかと思って始めた。もともと孤立しがちな方たちですけれど、より広く情報が必要な方たちでもあるはず。でもなかなかそこがうまくいっていない。お母さんたちが持っている多様な情報は、本当に皆さん必要としているのではないか。」


そして、その思いはお母さんたちが一番よく分かっていることでもあります。
日下さんも川代さんも、特に子供が幼いころは、気持ちを分かり合える人との出会いはあまり無かったと言います。
障がいのある子供が通う療育施設でさえ孤独を感じていました。

娘が脳性まひを患う 川代葉月さん
「共通の話題についていけないのがすごく心細くて。言葉の発達を促す関わりとかトイレトレーニングどうしてます?って話をされた時に、うちの子はこの先話すことも無ければ一生、おむつが取れることもない。孤独な感じ。同じ土俵にすら乗れない。」

そして親同士で気持ちの共有ができた時のことをこう振り返ります。

娘が低酸素脳症を患う 日下綾さん
「共感や経験を教えてもらうこと自体すごく励みになった。やっぱり、マイノリティーじゃないですか。当事者じゃないと本当にわからない。」

動画では、子供についての情報だけでなく、「障がいがあるとわかった時の親の気持ち」や、「子供と離れて一人でお風呂に入る時のこと」など、同じ境遇の親だからこそ分かり合えるリアルな気持ちや日常が語られています。

配信は、去年6月から始まり、今では58本の動画を見ることができます。(インスタグラムでも投稿)


日ごろ動画を見ているという清水さんと小澤さんです。
ともに4歳の娘を育てている二人にとって、この配信は「子育ての道しるべ」になっているそうです。

娘が急性脳症を患う 小澤七星さん
「私たちの子供はまだ4歳ですけれど、これから就学の時につまづく壁や18歳で成人した時、そのことを経験されているお母さんの生の声が聞けることは今まで無かったので、ほのぴあのお母さんたちに出会えたことは私たちの道しるべになっていると思います。」

娘が脳性まひを患う 清水美紀さん
「本当にありがたくって、そして、カフェに行けば会える身近さがあって本当に安心して子育てができるようになった。」

あいの実 久保潤一郎専務理事
「同じ悩みを持っている方がいるという安心感がすごくあるようで、私もこの問題を聞いてみたかったとかどうしようかとちょうど思っていたとか、そういう声がある。誰かに助けてもらっているではなくて、本当に助け合い。助けられるし、助けも与えるというのが本来の姿だと思う。こういうスタイルが根付いていくと住みやすい地域になっていくのではないか。」

同じ悩みを抱えているのは一人ではない。悩みながら子育てをしてきた母親たちの言葉だからこそ、生み出せるつながりがそこにはあります。

動画を見ているお母さんたちも「共感できるから見ていて楽しい」と話していました。
また実際に動画を見て解決出来た悩みもあったということです。
医療従事者や福祉事業者とではない家族同士のつながりの大切さを感じました。

そしてこの取り組みは、1月28日(水)にリアルイベントとして仙台市内で開催します。
オンラインだからこそのメリットもありますが、イベントは直接会って話をする貴重な機会となりそうです。

仙台放送
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