年末の大掃除シーズンを迎え、家に眠る不要品を整理する方が増えています。
そんな中、フリマサイトで意外なものが高額で取引されていることが判明しました。
それは政治家や著名人の名刺です。高市総理大臣、菅元総理大臣、安倍元総理大臣の名刺など、現内閣がそろったセットまで売買されているのです。
■不要品が“お宝”に変わる大掃除シーズン
クリスマスイブを過ぎると、年末に向けてやってくるのが大掃除の季節です。
街では不要品を処分する人たちにインタビューすると、「セカンドストリートに服を出したのと金を売りました。1万円くらいで売れました」、「大昔のゲームとか。動作確認もできないようなものでも、出した途端に売れたりします」と、様々な声が聞かれました。
大掃除で出た不要品を売ってお金にする人が増えているようです。
良品買館東大阪店の樫山裕子店長によると、最近は従来のブランド品や家電だけでなく、様々なジャンルのものが持ち込まれているとのことです。
【良品買館東大阪店 樫山裕子店長】これはちょっとどこの国だろう?というものも買い取りはします。巨大なくす玉が出てきたよとか、『倉庫を掃除していると出てきたよ』って」
樫山店長は「11月、12月は非常に買い取りは忙しくなります」と話します。
ニッセイ基礎研究所によると、家の中で1年以上使用していない”不要品”の価値は、金額換算すると全国でおよそ91兆円。国民1人あたりだと平均で71.5万円にものぼるということです。
■高額で取引される「政治家の名刺」
いわゆる“隠れ資産”をフリマサイトで販売する人が増えている中、調査すると驚きの商品が見つかりました。それは政治家の名刺です。
【記者リポート】「インターネット上では多くの政治家の名刺が売られています。こちらでは歴代の内閣総理大臣の名刺がセットで売られていて、すでに売り切れとなっています」
高市総理大臣をはじめ大臣らの名刺が大量に出品され、セット販売も見られました。
価格も高額で、田中角栄元総理大臣のものとされる名刺は、なんと5万5000円。商品の説明には「昭和の時代を感じさせる一枚」と書かれています。
また、政治家だけでなく大企業の社長の名刺も売買されているのです。
■名刺が売られていた政治家の反応
取材班は実際に名刺が売られていた元衆議院議員の左藤章さんを取材しました。
名刺が売られていることを伝えると、左藤さんは驚きの表情を見せました。
【左藤章元衆議院議員】「あっ、私の名刺…。びっくりしました。名刺が売られているとは考えてなかった」
交換したばかりの名刺と出品されたものを比べると「前」と「元」が違うだけでした。左藤さんの名刺の価格は税込みで2200円です。
【左藤章元衆議院議員】「目的が分からない。お金になるかもしれないが、理解ができない」
価格について聞かれると「分からないですね、相場が(笑)。総理していた方は、もっと高いんでしょうね」と話しました。
■吉村大阪府知事の名刺も出品
さらにフリマサイト上を見てみると、大阪府の吉村洋文知事の名刺が9000円ですでに購入されていました。
この事実を知らされた吉村知事は驚きの反応を示しました。
【大阪府 吉村洋文知事】「えっ、そうなの!? そんな価値ないですよ。初めて聞きました。僕の名刺そんな価値ないので、出品しないでください」
さらに吉村知事は「人と人との関係で、名刺というのは渡しているわけですから、それを誰かに渡したり転売するのは、信頼関係を損なうものであると思う。出品するのは、やめてもらいたい」と強く主張しました。
フリマサイトのメルカリではメールアドレスや電話番号などの個人情報が記載されている出品については削除する対応を取っています。
■高市総理の名刺は1枚1万円 名刺取引の背景にある需要と市場
では、名刺を買う人の目的は一体何なのでしょうか?
取材班はオンラインショップで骨董品を取引きし、名刺も扱っている男性に話を聞きました。
【名刺の取引きをした“骨董品店”の店主】「名刺はちょこちょこ入ってくるし、売り買いしたことはあります。総理の高市さんが、大臣の頃の名刺とか売ってもらった」
この店主はこれまで軍人の東郷平八郎の名刺などを売っていて、高市総理の名刺も今後、販売を検討しているとのことです。
【名刺の取引きをした“骨董品店”の店主】「やっぱり著名人の名刺は需要はあります。名刺以外にも年賀状とか、書簡とか、有名人が相手方に送ったものは色んな所から出てくる。有名人が関わってる物のコレクターはいます。高市さんの名刺だったら、1枚1万円ぐらいは付けようかなと」
プライバシーの問題に詳しい専門家は、詐欺などの犯罪に悪用されるリスクを指摘した上でこう話します。
【専修大学ジャーナリズム学科 山田健太教授】「基本的に名刺の意味合いは、”目の前の人”への情報の開示で、広く公開をするという意味合いではないということが、大きなポイント。数万円という単位で取引されてる事例があるならば、十分マーケットとして成立していると思います。今後広がっていく可能性は高いと思います」
■名刺取引の法的問題と橋下徹さんの見解
スタジオでは橋下徹さんが、名刺取引の法的問題について解説しました。
まず自分の名刺が取引されていたらどう感じるかを問われると、橋下さんはこう答えました。
【橋下徹さん】「僕はメールアドレスとか電話番号入れてないので、価値がつくかどうかわかんないですけど、僕は自由にしてもらっていい。いいんじゃないの。それを売ってそれがお金になって経済が回るんだったらいいのかなと思いますけどね」
しかし個人情報保護の観点では違反になり得ると指摘します。
【橋下徹さん】「個人情報だと、そこは違反になり得るところはありますね。その本人の同意なく。これ個人情報です。吉村さんが言ったように、本来はやるべきではない。僕みたいに『自由に』と言う人もいれば、『やめてほしい』という人の方が多いかも分からないです」
橋下さんは若い世代が名刺交換をしない傾向にあることにも触れました。
「若い世代は名刺の交換やんらないらしいですよ。僕、子供に聞いたんですよ。そしたら、携帯電話同士を非接触で情報をやりとりするから、『何で紙なんかやりとりすんの古い!』って言われちゃった」
デジタル時代になっても、逆にアナログな名刺に価値が生まれるという意見に対して橋下さんは興味深い見解を示しました。
【橋下徹さん】「でもビットコインとかも価値があるかどうかわかんないものに、値がついて、あれで経済回るんだから。ほんと政治家の名刺ぐらいで、それが経済的な利益になるんだったら、『無』の物から『有』が生まれるということで僕はいいことだと思うんだけど、なんで吉村さん駄目とか言うんだよ」
ただし一般の人の名刺については「嫌な人もいるからそれはやらない」ということを原則とすべきだと述べ、政治家と一般人で扱いを分けるべきとの見解を示しました。
【橋下徹さん】「一般の人のやつはもう駄目ですよ」
今後も拡大の可能性がある著名人の名刺の取引。法的な問題はないとしても、個人情報保護や信頼関係の観点からは議論の余地がありそうです。
(関西テレビ「newsランナー」2025年12月24日放送)