400年以上に渡って銅の加工技術を代々受け継ぐ職人が仙台にいます。
城の装飾に始まった加工技術は調理器具や食器など様々な形で現代に受け継がれています。

創業・慶長元年(1596)。
400年以上に渡って銅の加工技術を受け継いでいます。

仙台藩主・伊達政宗が城の装飾などのために呼び寄せた大阪の「田中」という地域の銅職人「善蔵」が初代です。
善蔵は、土地を与えられ「田中」の名字を名乗ることを許されるなど、職人としては破格の扱いを受け、通称「田善」として仙台の町に根付きました。

伊達政宗の霊廟・瑞鳳殿には一対の「大香炉」が置かれています。
17代目にあたる田中善次郎が政宗の没後400年にあたる1976年に奉納したもの。
「貞山公御用銅師田善」の文字が刻まれ、その関係性が分かります。

「田善」の19代目、田中善さん。

タゼン社長・田中善さん
「文政六(1823)年(とある)。何があったかは分からないが、うちの記念事業だったらしくてこの道具はずっと残されている。やっぱりこれもういい肌している。これを銅に転写させている。今はこういうパイプのつるつるしている状態ですけれど、これをここの上に叩いていくことによって、この跡が移築されていく、転写されていくそういう工程。」

銅は叩くことでその形が定まっていくといいます。
昔の道具の上で叩くのは、独自の手法で、道具に付いた槌の跡が新しい銅に写され、表面に独特の風合いが生み出されます。

銅は、金属の中では比較的軟らかく、切る、曲げる、伸ばすなど加工に適しています。
また、熱伝導性が高く、抗菌作用や耐食性もあるため古くから調理器具や食器としても広く使われてきました。

田中さんは、「伝導性」こそが銅の本質だと話します。

タゼン社長・田中善さん
「目に見えないものを通すという、伝導するというのが銅の本質だと思っている。情報だったり電気だったり熱だったり。あとは人の気持ち・思いだったり、願い、祈りだったり、そういったものを通してくれると本気で私自身『銅師(あかがねし)』として思っています。」

田中さんは今年、新たな拠点を作りました。
現在会社は、住宅設備やリフォームなど幅広く事業を手がけていますが、銅の魅力をもっと発信しようと展示販売やワークショップを行っていくといいます。

この日は関西から来たという人が銅の加工を体験していました。

ワークショップ参加者
「昔の技術をこうやって今の若い人たちが体験できるのは、若い人からしたらすごく新鮮なことなので、こういう取り組みがもっと増えると面白いと思う。」

タゼン社長・田中善さん
「銅によって生かされたというような、本当に銅が先生であるなというところから学んできたところがあるので、その感覚を今の時代になって、しかも国籍問わず地域を問わずいろんな方々に共鳴していただけるというのは、職人冥利に尽きる。こんなうれしいことはない、だから幸せな感じがする。」

400年以上受け継がれた職人の技。技術だけでなく思いも「伝導」させていきます。

仙台放送
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