クマの出没が相次いでいます。
政府は関係省庁による会議を開き、対策を話し合いました。
すでに駆除という対処療法から一歩も二歩も踏み出して、クマと人がどういうふうに住み分けができるのか、これを真剣に考えるべき時期に来ています。
専門家はある要因を指摘しています。
5日夜、富山・砺波市の山あいに設置されたAI(人工知能)カメラが捉えた映像には、暗闇の中をのそのそと歩くクマの姿が映っています。
クマは獲物を探しているのか、暗く静まり返る山道をゆっくりと移動していました。
同じ富山県の黒部市では、美肌の湯として知られる宇奈月温泉のホテルのすぐそばにもクマが出没。
山の斜面からクマが下りてきたのです。
向かう先には親グマでしょうか。
もう1頭のクマの姿がありました。
さらに、人的被害が深刻な秋田県ではクマに襲われ、負傷者が出ました。
クマは4日朝、秋田・大仙市に出没。
男性が敷地内の小屋から出ると、体長約1.3メートルのクマに背後から体当たりされ、太ももを爪で引っかかれたといいます。
クマに襲われた男性(72):
まさか自分が…。いろんなところで(クマが)出てるとは聞いていたが、いざ目の前に(クマが)来ちゃうと、一瞬だから本当に何秒(の出来事)。
2025年度のクマ被害による死亡者数が過去最悪の13人となる中、政府は6日午後に環境省や防衛省、文部科学省など関係する9つの省庁による2回目の連絡会議を開催。
11月中旬までの見直しを目指している、クマ被害対策の政策パッケージについて話し合われました。
環境省職員:
11月中旬までということでもう時間がない。お互い一丁目一番地の政策としてしっかりやっていければと思う。
自衛隊が派遣されるなど、災害級の脅威となっているクマ被害。
凶暴化したクマを巡っては、4年前にも北海道・札幌市で住宅街に現れ次々と人を襲い、4人の負傷者を出す事件が起きました。
クマは突然、住民を背後から襲いました。
そして、住民を襲撃したクマが次に向かったのは道路でした。
襲いかかったのは、住民だけではありませんでした。
クマが自衛隊の門に入ろうとして、自衛隊員が逃げる様子が記録されています。
狂暴化したクマによる深刻な被害は他の場所でも。
今回、自衛隊が派遣された秋田・鹿角市では、2016年に“スーパーK”と呼ばれるクマが次々と人を襲い、4人の犠牲者を出しました。
さらに、暗闇で目を光らすのは“怪物ヒグマ”として日本中が恐れた「OSO18」。
北海道東部で2019年から4年にわたり66頭もの牛を襲い続け、ハンターによる捕獲作戦の末、2年前に駆除されました。
当時撮影された写真では、後ろに止まった軽自動車と大きさを比べるとOSOの巨大さを物語っています。
なぜ、山菜や木の実を食べるはずのクマが次々と人を襲うのでしょうか。
クマの生態に詳しい東京農工大学の小池伸介教授は「40年くらいかけてクマの分布域はじわじわ広がってきて、今の人とクマの距離は近すぎるわけです。クマからすると人はそれほど怖くない。あまり気にならないような存在になっている可能性があって今、手を打つ必要があるということですね」と述べました。