価格高騰・生産量の問題などコメをめぐってさまざまな議論が続くなか、それぞれに夢を描いて「コメ農家」を志す農林大学校の学生たちを取材した。
創立から71年、新庄市の東北農林専門職大学附属農林大学校は、“農業県山形”を支える多くの人材を輩出してきた。
2年間の全寮制で、授業や実習だけでなく寝食も共にする。
(稲作経営学科2年・鈴木星名さん)
「高校ではまわりに農家をやっている友達がいなかった。“家族が農家”という人がいて、一緒に学べるのは楽しい」
果樹・畜産など6つある学科のうち「稲作経営学科」は1・2年生あわせて15人。
「どうしたら食味の良いコメを作れるか」「気候変動に左右されず収量を確保するには」などコメ生産のイロハを学ぶ。
(稲作経営学科・石塚和主任指導員)
「これ1回だよね? 流す量を増やさなければ開けておいても大丈夫」
(稲作経営学科1年・工藤翔太さん)
「これ何回もやらないとモミが取れない。脱穀するやつ。実家が農業をやっているが、今まで部活でできなかった。これからやる、けっこう楽しい」
(稲作経営学科1年・渡辺新太さん)
「稲がいつのタイミングで穂をつけるのか、全然知らずにここに来た。実家の農業の手伝いをし始めたのが高校に入ってから。力仕事しか任されなかった」
「おいしいコメを作りたい」「もうかる農業をしたい」と、学生たちの思いはさまざま。
(稲作経営学科1年・市川晄雅さん)
「『農業はもうからない』と言われていたからしたくないと思っていたが、コメの価格が上がってきて、もうかる農業が今はできると思った」
学ぶのはコメ作りだけではない。
“経営者の視点”を持って農業に取り組む力を養うことも重要。
(農業簿記の講義)
「経営者が目指すべきことは“利益を出す”ということと、“経営を安定させるために出資を受ける”、この2つ」
11月1日に行われた学校最大のイベント「農大祭」では多くの人が列を作った。
学生が育てた果物や花・加工品などがお手頃価格で販売されるとあって、お目当ての商品を買い求めていた。
稲作経営学科が販売したのは、もちろんコメ。精米したての新米だ。
「1人5袋までなんです。2キロ5袋」
自分たちで育てた「つや姫」「雪若丸」と、もち米の「こゆきもち」。
3銘柄を約200キロ用意した。
(コメを買った人)
「つや姫5袋を買った。家が近所なんですけど、楽しみにしていた」
新米は飛ぶように売れ、販売開始からわずか20分、あっという間に完売した。
(稲作経営学科1年・庄司怜夢さん)
「イチから始めて、最終的に消費者に届けるという。笑顔で買ってもらい、笑顔で食べてもらうというのが目標だったので、感動した」
そして模擬店で提供したのは、焼きおにぎり。
炊き立ての「つや姫」を一つひとつ心を込めて握り、「農産加工経営学科」の手作りみそを塗ってこんがりと焼き上げた。
これも大人気で、追加で精米しなければならないほど、440個を販売した。
「おいしい。ほとんどこの子が食べた。コメがおいしい。新米も買おうと思ったが売り切れてた」
この日は、頑張る学生たちを一目見ようと訪れた家族の姿もあった。
(学生の家族)
「大変なことも多いが、収穫してうれしいこともある。楽しさを学んでほしいと思って農林大学校に入ってもらった。楽しく勉強しているみたいで良かった」
手塩にかけて育てたコメをおいしく食べてもらう。
農林大学校での学びや生活を通じて、学生たちは「食を支える農業」の大切さを実感しているようだ。
(稲作経営学科2年・赤坂銀志さん)
「思っていたより多くて、これだけ売れてうれしい。人に食べてもらうと作りがいがある。やっててよかったと思う」
(稲作経営学科2年・土門結音さん)
「体育館から出てくる時に『おいしかったよ』と言ってくれた。うれしかった」
学生のお父さんのインタビューの中で、「楽しさを学んでほしいと思ってこの学校に入ってもらった」という、非常に象徴的なコメントだと感じた。
農業にはいろいろな大変なことがあると思うが、学校生活を通して、やりがい・楽しさを学んで、日本の未来を支えてほしい。