シリーズ「ラオスと広島」の第二弾です。
日本から遠く離れた異国の地「ラオス」でこだわりの「ラム酒」造りに奮闘する、日本人男性の思いに迫ります。


日本からおよそ4000キロ離れた東南アジアの国「ラオス」。
首都ビエンチャンの郊外・ナーソン村に、ある1人の日本人男性が暮らしています。

【井上育三さん(71)】
「味わってゆっくり友達と恋人と、いい時間の中にこのお酒があればいいなというのがあって、これは最初からぶれてない」

異国の地、」ラオスで初めて「ラム酒」造りを始めた福山市出身の井上育三さん、71歳。

【胡子美佳 記者】<試飲>
「あ、コーヒーの匂いがすごいけど、甘い。濃い、香りが」

およそ20年前、福山市で化学分析機の販売会社を経営していた井上さんは、単身、ラオスに移住しました。

【LAODI 井上育三さん】
「海外で仕事をしてみたかったのがあって、(ラオスには)僕が子供のころの昭和30年代の原風景があって、ここなら住んでもいいと思ったのが1つ。そういう中で何かやりたいというときにバイオエタノールの話があってサトウキビ、じゃあラム酒が造れるというのがあって(始めた)」

2006年に、ほかの日本人ら数人とともにラム酒の製造販売会社「LAODI」を設立。
独学で酒造りを始めました。
しかし、思うようにはいきません。

販売数は伸び悩み、従業員とのトラブルなどもあってメンバーは解散…そんな中、井上さんはもう一度挑戦したいと、2015年に新生「LAODI」を再出発させました。

【LAODI・井上育三さん】
「酵母も全部変えて、造り方も変えた」

井上さんの会社LAODIは、広大なサトウキビ畑を所有し、栽培、収穫、蒸留まですべて手掛けています。

【LAODI・井上育三さん】
「これ、ずっと向こうまで全部サトウキビ畑です。広いですよ。20ヘクタール。これ全部、手植え、手刈りですよ。これ触ってみてください、(葉が)バリバリです。(体は)全部隠して目だけ出して、長靴はいてでないと畑に入れないです。重労働ですよ」

11月から始まる収穫時期になると、一日でおよそ6トンのサトウキビを刈るといいます。
そして、そのサトウキビを絞った新鮮なジュースを使い世界でも希少な「アグリコール製法」と呼ばれる製法で発酵・蒸留を行っています。

【LAODI・井上育三さん】
「これがメインの蒸留器です。おいしい部分をミドルカット(抽出)する。結構、技術と勘どころがいります。スタッフが鼻でいいにおいか悪いにおいかでカット(抽出)していくんです」

商品は12種類。
アルコール度数は25度以上で、柔らかな口当たりとフルーティーな味わいで、ロックでもカクテルでも飲みやすいのが特徴です。

【LAODI・井上育三さん】
「すりガラスのビンが6種類、これが甘いリキュール。何か嫌なことがあって『きょうやっとれん!』とか言ってから、丸氷を入れて飲んで」

世界各地のラム酒のイベントなどにも参加し、試行錯誤を重ねてきた井上さん。
2016年には、転機がありました。

【LAODI・井上育三さん】
「オバマ大統領(当時)が来られたASEAN首脳会議の時に、パーティーで各国首脳に(ラム酒を)飲んでいただいて。それも自信になりましたね。本気でやるとかたちになるものですね」

世界で徐々に評価されるようになり、2020年にはイギリスで開かれた世界的に権威ある品評会で“金賞”に選ばれました。

【LAODI・井上育三さん】
「これは結構 価値がありましたね。小さいカテゴリーではなく、ラムという大きなカテゴリーの中のゴールドなので、結構うれしかったですね。これをもらえてから元気になりました」
Q:元気なかったんですか?
「なかったよ、誰も評価してくれず、おもしろくないと思っていた」

今ではラオスだけでなく、日本のほかにタイや台湾、スイスにも輸出しています。

【LAODI・井上育三さん】
「ラムフェス(イベント)へ出て、インポーターとコネクションを作ってというかたちでやるんですが、なかなか簡単にはいかないですよね。アメリカでもシカゴの販売店が扱いたいという話があるんですけど、トランプ関税で40何%、ストップしています」

それでも前に進もうとする、井上さん。支えるのは、現地のスタッフたちです。

【LAODI・井上育三さん】
「これは今、オーダーが来ているもので、ビンに詰めているんです」
【10年以上勤務の現地スタッフ】
「サトウキビでできたお酒をつくるのは、ラオス国内ではLAODIだけです。会社を大きくしていって、たくさん商品をつくっていきたいです」

井上さんの情熱は今も留まることはありません。

【LAODI・井上育三さん】
「お酒造りは毎回毎回クオリティーをあげていかないといけない。私がいなくなっても関わってくれた人がみんなブランドを背負って生活できる、生きていけるようになれば、スタッフのみなさんに幸せになってもらいたいのと、この国に対してきちっとしたものを残してもいいじゃないですか、それで、もうあとが短いので…それ以上望んでもしょうがないでしょう、と思っています」

ラム酒造りを通して国境を越えた繋がりを大切にしてきた井上さん…広島から遠く離れたアジアの国・ラオスで始めた挑戦は、これからも、続きます。

<スタジオ>
井上育三さんのLAODIのラム酒、この他、梅やパッションフルーツ風味のモノもあるそうで広島で手に入るものもあるそうです。

テレビ新広島
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