地震の大きな揺れで発生する液状化対策について考えます。
能登半島地震で液状化の被害が出た富山県内5つの市は、対策工事の費用について「住民負担ゼロ」の方針を先月示しました。
工事に必要な住民合意に向けた議論が各地で進むことになるのか、その参考として相次ぐ地震で液状化の被害に見舞われている新潟県を取材しました。
先月28日に開かれた県のワンチームとやま連携推進本部会議。
能登半島地震により液状化の被害に見舞われた5つの市のうち、これまで高岡市の出町譲市長だけが示していた住民負担ゼロの方針が氷見、射水、富山、それに滑川の4つの市でも合意に至ったとの報告がありました。
費用面での負担が解消され、対策工事に必要な住民合意に向けた協議がそれぞれの地域で進むことが期待されています。
県内同様、能登半島地震による震度5強の揺れで液状化の被害に見舞われた新潟市。
   
市は対策工事の費用負担を住民に求める方針を示し、協議が難航しています。  
そうした中、能登半島地震で住宅6棟に液状化被害が出た新潟県柏崎市を訪ねました。
北川辰雄さん夫婦、家族7人で住んでいた家が液状化で大きく傾き、この秋、建て替えた家が完成したばかりです。
*北川辰雄さん    
「こっちから向こうへ下がった」  
      
*北川博子さん     
「傾き(沈み)は24センチ。解体は公費。(建てる費用の)市からの補助はほんの1割に満たない」        
能登半島地震直後に撮影した庭の写真です。
大量の地下水があふれ出た液状化の被害、実は、この時が初めてではありませんでした。
*北川辰雄さん      
「たまげた。またかだね」 
*北川博子さん    
「中越沖地震からやっと住みよくなったと思ったところに、こんな短い周期で地震」            
2007年に発生した新潟県中越沖地震。
震度6強の揺れや液状化で1300棟以上の住宅が全壊しました。
この時、北川さんの家は全壊を免れましたが、地区では、半数ほどの住民が家を建て替えました。
去年の能登半島地震でも液状化の被害が出ましたが中越沖地震が発生した当時、地区単位での液状化対策は全国的な例も無く、市からの提案はなかったといいます。
*北川辰雄さん
「18年前はそういう話(地区単位の液状化対策)は全くなかった。言われていれば検討は当然したと思う。」
こちらは北川さんの地区に隣接する山本団地。
この場所も、中越沖地震で約50棟が液状化の被害を受けました。
*山本団地 上野浩明さん
「このラインに亀裂が入って、液状化とそれに伴う地盤沈下で家が前に傾いた。」
今も団地に住む上野浩明さん。当時、壊滅的な被害を受けた団地を再建に導きました。
上野さんは団地の住民に呼びかけ、「山本団地地域再生を目指す会」を結成。
団地一帯で液状化対策工事を進めるため、国土交通省などに直接、補助を要望しました。
*山本団地 上野浩明さん
「1軒が宅地の修復をやっても全体が同じ工事をしないと全く意味をなさない」
国、県、市の補助を受けて最終的に地下水位低下工法と呼ばれる対策工事が行われることになりましたが住民負担は約4000万円。
60世帯で被害の大きさに応じて負担しました。
能登半島地震は団地にとって18年ぶりの大きな地震となりましたが、上野さんは対策に効果を感じたと言います。
*山本団地 上野浩明さん
「地震の規模感で言うと(能登半島地震は)中越沖地震とほぼ同様の揺れだった。幸い自宅も含め近隣も大きな損傷はなかった。地盤改良工事の効果なのかなと」
上野さんは住民の一致団結が復興への近道だったと話します。
*山本団地 上野浩明さん
「我々は費用負担があって、リスクを負いながら何を優先したかというと、みんなで元の生活を取り戻すこと。最終的に対象全戸に協力してもらって、その結果一つの方向にまとまって進んだ」
液状化の被害が出た地区は次の地震でまた被害が出るおそれがある、そして、対策工事に伴う住民負担はゼロ、そうした状況の中で、地区として工事に踏み切るか、県内5つの市の液状化被害地域で暮らす住民たちが判断を迫られています。
            
県内5つの市のうち射水市港町では、対策工事の実証実験が来月から始まる見通しで、高岡市伏木でも実証実験の場所の選定に向けた協議が進んでいます。