高校生が起業する時代へ
富山県では県立高校でも「起業」を学ぶ授業が行われるなど、若い世代の起業家育成に力を入れている。上市高校では先月から始まった授業で、生徒たちが地域課題を解決するアイデアを会社として形にする取り組みが進んでいる。ある生徒は「起業は『大変なこと』『自分でやったらつらい』と思っていたが、この授業で『ちょっと楽しそう』と感じるようになった」と話す。

上市高校はアルバイト解禁など独自のキャリア教育で知られるが、「起業学習」もまた生徒の進路の幅を広げる狙いがある。こうした教育環境の中、すでに起業家として活躍している高校生がいる。
高校1年で会社設立 プログラミングで社会貢献

高岡市に住む高校3年生の油谷駿杜さんは、高校1年生のときにアプリ開発などを行う会社を設立した。中学生の頃から動画編集を手がけ個人事業主として活動していた油谷さんは、自分の得意分野が人の役に立つ喜びを知り、特技のプログラミングを生かした本格的な起業を目指すようになった。

「これはプログラミングの画面。主に工場向けのAIの『不良品認識システム』を開発して販売している」と話す油谷さん。取締役でありエンジニアでもある彼が選んだ進学先は、全国最大級の通信制高校、N高グループだった。

「富山県内の高校はアルバイトが禁止っていうところもすごく多い。起業が禁止とは言われていないが、ウェルカムな雰囲気じゃないかなと。周りの子にも少し迷惑をかけてしまうかなと思った。『この学校』を選んだ」

N高グループには「起業部」があり、事業計画書の作成・指導や最大1000万円の活動費など本格的な支援がある。「実際に起業している子もいっぱい。挑戦しているのが自分ひとりじゃないっていう安心感が入学していちばんよかったなと思う要素」と油谷さんは語る。
地域貢献への想い ー 高校生が高岡を変える

今年の夏、油谷さんは自身のビジネスとは別に大きなチャレンジをした。高校生が高岡のまちづくりを考えるイベント「変革祭」を企画・開催したのである。県内外から高校生を無料招待し、2泊3日の合宿形式で高岡の課題や解決策を探り、地域活性化のアイデアを市長に提案した。
「高岡の力があったからこそ、今この状態にあるかなと。まずその恩返しをしたいなとすごく思った。じゃあ自分が高校生という身分でいちばん役に立てることは何だろうと、同世代を巻き込むことかなと思って。学生の力で高岡を元気にする活動をつくろうと立ち上げたのが最初のきっかけ」
この活動のために学生団体「takaoka」を立ち上げ、同じ高校生のメンバーと現在もミーティングを重ねている。来月には地方に関心を持つ学生のネットワークを展開し、イベントや企画につなげていくための新会社設立も予定している。

「この『変革祭』っていうネットワークを使って地方を一体で盛り上げていくような仕組みに昇華させていければすごくうれしいなと」
10代の感覚が地域を変える
将来の目標を聞くと、油谷さんは「地域を代表するような会社をつくることを目標に」と語る。「『起業』は学生として過ごすというのとは全く違った視点になってくる。より地域に目を向けていくことになるので、視点が変わった」
10代ならではの感覚や行動力がこれからの地域づくりにつながっていく可能性を感じさせる。そのための社会のサポート、また教育の在り方というのも富山ではもっと考えられていく必要があるだろう。
