住宅密集地での緊迫した対応、全国でも5例目

23日午前、富山市郊外の住宅地でクマ1頭が出没し、「緊急銃猟」によって駆除された。この「緊急銃猟」によるクマの駆除は、県内では初めてのケースであり、全国でも5例目となる珍しい事例である。
フェンスに囲まれ逃げ惑うクマ



23日午前10時前、富山市悪王寺にある熊野公民館の駐車場でクマが目撃された。目撃者によると「(クマは)神社のなかにいて、そこから駐車場に入って、フェンスから出ようとしていたが出られなかった。人がどんどん集まってきて向こうのほうに行ったのかも」とのことだった。


クマが出没した場所は富山市南部の住宅地近くで、周辺には小学校もあり、朝からクマの目撃情報が相次いだ。現場では、クマのものとみられるフンが転々と見つかっており、クマの動きを追跡する手がかりとなった。
緊急対応と住民への警戒呼びかけ

午前10時40分頃、クマのフンが見つかった家の近くで「クマが潜んでいる」との情報を受け、市の職員や警察、猟友会がパトロールを開始。現場から東西500メートル、南北200メートルの範囲に規制線が張られ、周辺住民に警戒が呼びかけられた。
「不要不急の外出を控えて下さい」との車両によるパトロールも行われ、現場近くの熊野小学校では緊急銃猟の発令に伴い、校舎1階の児童を体育館に避難させる措置がとられた。
富山市長による緊急銃猟許可と駆除

猟友会がクマの足跡をたどり、1頭を確認したことを受け、午後0時23分に富山市長が緊急銃猟の許可を出した。そして午後0時47分、猟友会が3回発砲し、クマは駆除された。
富山市猟友会の澤井宏洋副会長は「大体3~5メートルくらいの距離で発砲した。たまたま(クマがひそんでいた)藪が低い位置だった。至近距離で上から下に撃つ形になった」と説明している。

駆除されたクマは成獣で、体長は1メートルほどだった。
安全確保を最優先に

富山市森林政策課の中島光輝課長は「周りを見渡すと住宅密集地。封鎖がちゃんとできるのか、バックストップも農協の施設があり、確保したうえで発砲した。捕獲にいたり、少しでも市民の安全につながったことはよかった」と話している。
住宅地という危険性の高い状況下での銃猟であったため、安全確保には細心の注意が払われた。県内初となる「緊急銃猟」によるクマ駆除は、住民の安全を守るための緊急措置として実施されたものである。