山形県内での花笠の生産量が年々減る中、2025年の山形花笠まつりでは初めてベトナム産の花笠が使われた。笠の数を確保することはもちろんだが、県産の花笠を残すために“技術を継承する取り組み”が始まっている。

スポーツクラブで花笠づくり?
山形市の総合スポーツセンターで9月8日に行われていたのは、花笠づくり。

「スポーツクラブで花笠づくり?」と思われるかもしれないが…。
「花笠づくり」を行っている山形市スポーツ協会スポーツクラブは、総合型地域スポーツクラブに登録していて、スポーツ活動のほか文化活動(文化コース)を取り入れ、これまでそば打ち体験・陶芸体験などのプログラムにも取り組んできた実績がある。

その流れで、2025年度は県産の花笠を残すため、初めて「花笠づくり」のコースを設けた。
後継者作りたいベテランと技術受け継いだ弟子が講師
講師を務めるのはベテランの塩野美智子さん(77)と、塩野さんの技術を受け継ぐ吉田淳さん(47)。

じつは吉田さんも花笠作りの担い手不足を知り、2024年に塩野さんに弟子入りしたばかりだが、次世代の作り手を増やしたいと一緒に講師を務めている。

塩野美智子さん
後継者づくりがしたい。
私も年だからみんなに作ってもらいたい、覚えてもらいたい、それが一番の望み。
まさか吉田さんみたいな若い人が受け継いでくれるとは。

吉田淳さんは、「塩野さんと中津川にも行って、80代のおばあちゃんたちから教えてもらった。丸1日作業してようやく1枚できるくらい大変、集中力がいる作業」と話す。

ベトナム産花笠使われたことで県産を見直す人も
これまで飯豊町中津川で作られてきた県産の花笠は、作り手の高齢化などで年々生産量が減っている。
2024年の山形花笠まつりでは、花笠が1000枚足りなくなる事態となった。

そのため、祭りで使われる花笠の9割以上を生産している山形市の尚美堂はベトナムに生産を依頼。
2025年は初めてベトナムで作られた笠1500枚も使われ、祭りの夜を彩った。

花笠づくりの講習に参加した人は、「作り手がいなくてベトナムに頼んでいると知って、自分にもできることがあるかなと思って。難しいとか考えずに、教えてもらえるならやってみようと思って参加した」と話してくれた。

また、「もともと花笠を踊っていて、いつか自分の笠を作って踊りたいと思っていた。県産の笠で踊りたい」と話す人も。
花笠づくりの技術継承し次世代の作り手育成へ
9月から始まった「花笠づくり」の講習会の定員は40人。
1カ月で定員がいっぱいになるほどの人気。

「花笠づくりを楽しみたい」「花笠づくりを学ぶ指導したい」「趣味としたい」など、参加者の参加理由はさまざま。
県内各地から集まり、半年かけて1人ひとつの花笠を作り上げる。

スポーツクラブとしては、伝統的な花笠まつりの文化を身近に感じながら、自分だけのオリジナルの花笠を作り、地域の歴史・文化への理解を深めてほしいと考えている。

山形の“花笠文化”を守るため、講習を通して花笠づくりの技術を伝え、次世代の作り手の育成につなげていきたいとしている。
(さくらんぼテレビ)