2024年、静岡県内に甚大な被害をもたらした台風10号から1年。異常気象が異常ではない時代に何が必要なのだろうか?
台風10号がもたらした甚大な被害とその記憶
2024年8月末から9月初旬にかけて静岡県内に甚大な被害をもたらした台風10号。
速度が遅い上に進路が定まらず、複雑な動きをしたことから1週間近く雨が降り続き各地で浸水や土砂災害が発生した。

静岡市清水区では道路の冠水が足元まで浸かり、熱海市の火葬場は山が崩れ大量の土砂や水が建物の中まで入り込んだ。
農業用ハウスが土砂に流されたイチゴ農家の澤山秀雄さんは当時「あんなに降るとは思わなかった。初めて、未だかつて。一気に水が溢れた」と話した。

また、裏山が崩れ50基を超える墓石が倒壊した鉄舟寺(静岡市清水区)の世永天山 住職は「青天の霹靂で言葉の1つも出ない。まさか自分のところにもこんな被害がやってくるのかと。本当に何も言葉も出ませんでした」と肩を落とした。
防災気象情報が分かりやすくアップデート
近年、毎年のように全国各地で頻発している台風や大雨にともなう災害。
特に線状降水帯の発生により局所的に大きな被害となるケースも目立っている。

線状降水帯の危険性について、小塚恵理子 気象予報士は「同じような場所で非常に激しい雨が降り続くので、急激に災害発生の危険度が高まる現象」と注意を促す。
また、種類が多すぎてわかりづらいとの指摘が相次いでいた気象庁の防災気象情報については、国土交通省では2026年の出水期から新たな防災気象情報の運用を開始する予定となっている。
小塚気象予報士も現在の防災気象情報について「警戒レベルは1から5まであるが、土砂災害警戒情報や河川の氾濫危険情報など、同じレベル4相当でも名称がバラバラ。大雨警報が『土砂災害』と『浸水害』の2つの災害を対象としているなどわかりづらさが課題」と指摘する。

また、新しい防災気象情報については「大雨浸水・洪水(河川氾濫)・土砂災害・高潮と災害が分類される。それぞれに1から5までのレベルを付けることになります。レベル2が注意報・レベル3が警報・レベル4は新たに危険警報が新設される」という。
万一への備えは大丈夫?
いつ訪れるかわからない大雨災害。
県民はどのような備えを進めているのだろうか?

静岡市内でインタビューをしたところ「水と食べ物・非常食は防災訓練と同じように人数分リュックに入れてある」「普通のレトルトパックを置いておき、思い出した時に食べてまた買い足しておくという感じ」「ペットを飼っているのでペットのご飯を備えている」などの答えが返ってきた。
こうした中、ハンズ静岡店で人気を集めているのが水を入れるだけで完成するフリーズドライのご飯だ。

ハンズ静岡店の藤下泰子さんは「期限があるので、期限を見ながら買い足すと常に新しいものを用意できる」と、少しずつ消費し使った分を買い足すローリングストックの重要性を説く。
また、普段はクッションやひざ掛けとして使いながら寝袋に早変わりする商品やクギなど固いものを踏んでもケガをしにくいスリッパも販売。
普段使いしても違和感のないデザインが好評を博し、日常で使いながらも万が一の際に役立つのが特徴となっている。
災害発生リスクを「キキクル」で確認
また、いま改めて活用が期待されているのが気象庁が提供している危険度分布、通称・キキクルで、土砂災害や浸水のリスクを自宅や出先で簡単に調べることができる。

小塚気象予報士は「キキクルは、どこで災害の発生の危険度が高まっているのか確認することができる」として「土砂災害・浸水害・洪水災害の3つの要素を見ることができ、赤の表示がでたところは警戒=高齢者等避難にあたり、紫の表示が出た場合は危険=災害が発生する可能性が高い状態を示す。大雨が降っている場所はレーダーを見れば把握できるが、災害が発生する場所や時間とは必ずしも一致しない。強い雨を感じたり、ここの地域は大丈夫かなと不安に思った場合には雨雲レーダーに加えて、キキクルも是非活用してもらいたい」と呼びかける。

異常気象が異常でなくなりつつある昨今、命を守る最善の行動とは何かひとりひとりが改めて考え、備えていくことが重要だ。
(テレビ静岡)