忙しいときや災害時など、様々な場面で手軽に食べられるフリーズドライに注目します。
実は鹿児島はフリーズドライの研究開発が盛んな先進県なんだそうです。
無添加で素材のおいしさを味わえるフリーズドライ、その最新事情に迫ります。
味噌汁や雑炊などずらりと並ぶフリーズドライの商品。
お湯や水を注ぐだけで手軽に食べられる食卓の強い味方でもあります。
フリーズドライとは、食材や食品を凍結してから真空状態にし、水分を抜いて乾燥させる技術。
低温でゆっくりと乾燥させるため栄養価や食感、風味が損なわれにくいのが特徴です。
業界関係者によりますと、フリーズドライ製品の生産量は年々増えていて、「おいしい」「手軽で持ち運びも軽い」といった理由から今後も市場規模が拡大する可能性が非常に高いということです。
このフリーズドライ、実は鹿児島で熱心に研究が行われているそうなんです。
鹿屋市にある県の研究施設・大隅加工技術研究センターを訪ねました。
開発・試作室に案内してもらうと…。
県大隅加工技術研究センター・山崎栄次さん
「これが小型のフリーズドライ真空凍結乾燥機です」
フリーズドライ専用の機械です。
県内の農産物の付加価値を高めるため10年前のセンター開業時に導入されました。
山崎さん
「できたばかりのものが入っています。今は真空状態になっていますので、解除して取り出します」
中から取り出した緑色の四角い物体。
実はこれ、緑茶のフリーズドライなんです。
5年の開発期間を経て2025年1月に特許を取得しました。
山崎さん
「味も薄くなりがちなんですけど、しっかりおいしく召し上がれる濃度に持って行くのが技術的に大変でした」
通常の方法でお茶をフリーズドライにしても水分が多く、乾燥させる際にその分、空洞が増えてもろくなってしまいます。
しかし、ぎゅっと濃縮したお茶の成分を取り出す新技術で緑茶のフリーズドライ化に成功したということです。
お湯や水をかけるだけで完成する緑茶のお味は?
中西沙綾記者
「おいしい。すごくすっきり甘くて、最後に香りが抜けていく感じが心地いいですね」
山崎さん
「おいしいお茶を提供したいというお茶屋さんに(技術を)ぜひ利用してほしい」
近年、茶葉を急須で入れる手間が敬遠され全国的に減っているリーフ茶の消費量。
2024年、荒茶の生産量日本一になったお茶所・鹿児島にとっても手軽なフリーズドライは救世主となる可能性を秘めています。
この大隅加工技術研究センターには、もっと大型のフリーズドライの機械があります。
これは全国的にも珍しくこの10年で開発を支援した175の製品のうち、実に4割がフリーズドライでした。
まさにフリーズドライ先進県の鹿児島。
実は、専門店もあるんです。
この日、鹿児島市のイベントに出店したのは牧山寿志さんと利美さん夫妻が営む牧山商店です。
牧山商店・牧山寿志さん
「おいしくてフレッシュを味わえるのに、日持ちもして軽くて栄養もとれるのが魅力」
2年前、愛犬を病気で亡くしたことをきっかけに、全く違う業種からフリーズドライの世界へ。
自宅に機械を購入し「人にも犬にも健康であるために」をコンセプトにした商品づくりに取り組んでいます。
主力商品は鹿肉などを使った犬用のフリーズドライ。
イベントには、多くの愛犬家が集まっていました。
試食品は鹿肉。
水を注ぐとあっという間にしっとりとした肉に戻ります。
来店客
「いつも使わせてもらっているんですけど、食いつきがよくて助かる」
「新鮮さ(が違う)。水に溶かすとすぐ食べられるので」
一方、こちらは人間用に開発された果物のフリーズドライです。
あえて水で戻さずにサクサクした食感が楽しめます。
来店客
「珍しいですよね 食べるまでは『大丈夫かな?』という感覚はあるけれど、実際食べてみたら甘みもあって、生の果物より甘みを感じてとてもおいしい」
なかなかの高評価ですが課題もあります。
牧山商店・牧山寿志さん
「ものによって温度設定を変える。何回も失敗して苦くなったり」
凍結や乾燥をする際に、味や栄養分を損なわないための温度設定が難しいこと。
そして乾燥には半日から一日の時間が必要なため、製造コストがかかる点です。
牧山商店・牧山利美さん
「フリーズドライという言葉を知っている人は多いが、ほかの乾燥方法となにが違うかを知らない方が多いので、地道にイベントに出て試食してもらっておいしさを広めたい」
まだまだ課題はありますが、忙しい時の時短や災害時の利便性など高まるニーズを受けてフリーズドライ先進県の挑戦は続きます。