来年4月から導入される自転車の「青切符制度」の“反則金額”が決定した。「ながらスマホ運転」は1万2000円、「2人乗り」は3000円といった具合に、 違反行為ごとに3000~1万2000円が科される。
“主な違法行為”として、他にも「歩道通行」「信号無視」「一時不停止」などが取り上げられることが多いが、実際に対象となる違反行為は110種類以上。ついやってしまいがちなものの中にも違反対象があるのではないか。
毎日、往復20キロの自転車通勤をしている本田聡弁護士に詳しく聞いた。
なぜ青切符に?刑事罰から反則金へ
【本田聡 弁護士】
『青切符制度』とは、「交通違反に対して、反則金を納めることで、刑事罰を免れる」というもので、現在は自動車、二輪車、原付バイクなどに適用されています。
一方、自転車の交通違反は、従来は刑事事件となり、場合によって『赤切符(刑事罰)』が交付され、主に罰金が科せられました。「刑事罰」ですから、場合によっては警察の捜査、検察への送致、起訴、裁判という流れに進む可能性もあり、裁判で有罪になれば前科がつくことになります。
つまり、『青切符制度』のある自動車やバイクより、『刑事罰』となる自転車の方がより重い処分となることが多い状況になってしまっていたのです。そこで、自転車と自動車等との均衡を図りつつ、自転車の交通違反に対する取り締まりを進めるために、自転車にも『青切符制度』を導入することが決まりました。

警察庁の資料によると、青切符の対象となる違反行為は約110種類。自動車、二輪車、原付バイク、自転車等に適用されます。 このほか、自転車にしか適用されないものが「歩道の徐行等義務違反」など5種類あります。
ベルを鳴らすだけで反則金3000円?
自転車は身近な乗り物だけに、気を付けなければいけない点がたくさんあります。
例えばベル(警音器)は、基本的に鳴らしてはいけないことになっています。
よく、道を空けてほしい時に鳴らしている人を見かけますが、これは違反行為で3000円の反則金となります。
道路交通法54条で、法令の規定で鳴らさなければいけない場合を除き、警音器を鳴らしてはならない。ただし危険を防止するためにやむをえない時はこの限りではない、と定められています。
つまり、「どいて下さい」ぐらいで鳴らしてはいけないのです。

ではベルは何のためについているのか?
山道など見通しの悪い道で「警笛鳴らせ」の標識がある場所では、鳴らさなければいけないことになっているので、その法令を遵守するためにはベルが必要ということになります。
買い物袋を手首にかけるのはNG
(Q.スーパーでたくさん購入し、カゴに入りきらない荷物を、手首にかけた状態でハンドルを握って走行することがあるのですが、これは青切符の対象になりますか? )
なります。
各都道府県には、それぞれの公安委員会が定めた『道路交通規則』があります。
例えば大阪の条例には「傘を差し、物をかつぎ、または物を持つ等、視野を妨げ、もしくは安定を失うおそれがある方法で自転車を運転しないこと」とあるので、これに違反する可能性があります。
道路交通規則に違反するということは、青切符制度の『公安委員会順守事項違反(道交法71条6号)』にあたるので、5000円の反則金になるのです。
各都道府県の道路交通規則はほぼ同じなので、どこも青切符違反の反則金対象となります。
水たまりで『泥はね』は反則金5000円
違反行為の中に「泥はね運転(道交法71条1号)」というのがあります。
その名の通り、「ぬかるみ、または水たまりを通行する時は、泥よけ器を付け、または徐行する等して、他人に迷惑を及ぼすことがないようにすること」なのですが、この「他人」の中には、歩行者や、車両等の運転者だけでなく、沿道の土地、建物の所有者なども含まれるのです。
ですから、水たまりをはねて、店舗の看板や壁面、住宅の外壁などを汚した場合も、反則金5000円の対象となってしまいます。 自転車の走行は道路状況なども確認しながら慎重に進みましょう。
買い物の数分間でも駐停車違反で反則金リスク
駐停車違反は、大変なことになるかもしれません。 道路交通法44~49条などに、「駐車禁止(停車禁止)とされている道路の部分においては駐車してはならない」とあって、違反すると違法駐車として6000円~9000円の反則金が科せられます。
しかし、例えば都内は、ほとんどが駐車禁止場所です。 駐車は停車とは区別されますが、自転車を置いて店に入り、買い物などをすれば駐車になるので、目の前の店で買い物をする数分間でもダメなのです。
自転車の場合、車などより簡単に停めてしまいがちです。
コロナ禍以降、自転車で移動する人も増え、迷惑自転車も目立ちますから、取り締まりを強化することは必要だと思いますが、駐輪場所の整備なども同時に行ってほしいと思います。自治体が行っている放置駐車の撤去などの仕組みとの整合性もまだはっきりしない部分があります。
「法整備」と「インフラ整備」はセットで
青切符の取り締まりは、警察官が違反を直接目撃する『現認』によって行われますが、実際にどのようにして取り締まりを運用するのか、まだよく分からない部分があります。
また、約110種類の違反行為の中には、自転車とは基本的には関係のない内容、例えば「ドアを不用意に開けると違反」「高速道路違反」なども含まれています。これは、自動車等の青切符制度の内容をそのまま自転車に適用させたことでこうなっています。
自転車は子供から高齢者まで多くの人にとって身近な乗り物です。歩行者や自動車とうまく尊重しあうためにも、ルール作り(法整備)とインフラ整備を同時に進めることが重要です。
違反をしないように気を付けることは当然ですが、これを機に、ぜひ自転車を利用しやすい環境も整えていってほしいと思います。 (本田聡 弁護士)
取材:高知さんさんテレビ