7月の参議院選挙に向けて、特定の組織に属さずテロ行為に及ぶいわゆる「ローン・オフェンダー」による前兆を事前に察知し対策につなげる目的で、警察庁は「LO(ローンオフェンダー)脅威情報統合センター」を6月23日に設置します。
安倍元首相が演説中に銃撃され殺害された事件や、岸田元首相が襲撃された事件など、特定の組織に属さずテロの計画から実行まで1人で行ういわゆる「ローン・オフェンダー」への対策が治安上の課題となる中、7月の参院選を前に警察庁は23日、「LO脅威情報統合センター」を設置する。
「LO脅威情報統合センター」は警察庁と警視庁などの都道府県警察の公安部門の警察官で構成され、政治家などへの殺害予告などSNSに投稿された「前兆」となる情報を集め、全国の警察に共有して被害の未然防止を目指します。
これまでも様々なローン・オフェンダー対策が行われていました。
5月には、政治家の街頭演説の様子を撮影した写真とともに「お前らを襲撃する場所が決まりました」と書かれたSNSの投稿を栃木県警が発見し、警察庁から情報共有された警視庁が、都内で活動するこの政治家の警備を強化していたことがわかりました。
さらに、大阪にいた未成年の投稿者を特定し、大阪府警が直接本人に接触して事情を聞くなど対策を行ったということです。
手製の銃で安倍元首相を殺害した事件で起訴された山上徹也被告の部屋からは、事件前から「前兆」といえる金属音などが聞こえていたことなどから、警察庁は不動産事業者と連携を強化し、凶器を製造する際に発するような金属加工の“異音”や、火薬製造時に発生するような“異臭”があった物件について、事業者から警察に通報する体制の確立も目指します。
警察庁は事業者に積極的な通報をよびかけ、「前兆」を察知したい考えです。
また爆発物の製造を防ぐため、警察庁は2025年4月、原料となり得る化学物質としてこれまで指定していた「硫酸」や「尿素」など11品目に加えて、新たに「硫黄」や「硝酸カルシウム」などの5品目を指定しました。
販売事業者には、これらの原料を大量購入をしている人物や不審な情報について、警察に通報するよう促しています。
警察庁は安倍元首相の事件を受け2022年8月、都道府県警が作成した要人警護計画案を事前に審査する仕組みを導入しました。
警察庁によりますと導入後、2025年5月末までに約9700件の審査を行い、このうち約74%に修正を行ったということです。
警察庁幹部は「テロ事件は起こされた時点で負け。未然に防止することが極めて重要」と話しています。