遅れているといわれる日本の性教育。
そうした中、千葉・木更津市の中学校が行っている、全国でも数少ない踏み込んだ性教育の授業を取材しました。

木更津市立金田中学校では、この日、3年生38人が体育館に集まり性教育の授業が行われました。
授業を行うのは学校の先生ではなく、産婦人科の専門医です。

よこすか内科小児科・はるこレディースクリニック 副院長・横須賀治子医師:
性教育とは自分の体や心のこと、セックスや妊娠や出産。幸せに生きていくために自分や相手の権利を守るための話です。

最初のテーマはプライベートゾーン。
他人に見られたり触れたりしてはいけない体の部分について学びました。

よこすか内科小児科・はるこレディースクリニック 副院長・横須賀治子医師:
嫌なことをされそうになった時にどうすればいいのか。大声でやめてと叫んだり、安心して話せる大人に話を聞いてもらいましょう。

続いて、避妊する重要性についての説明がありました。

よこすか内科小児科・はるこレディースクリニック 副院長・横須賀治子医師:
皆さんはいきなり目の前に裸の赤ちゃんが現れたらどうしますか?一人の人間を育てる覚悟と準備がなければ、妊娠は避けるべき。

さらには、体験型の学習もありました。

生徒や先生たちにコップが配られます。
コップのうちの1つだけ感染源に見立てたアルカリ性の液体(水酸化ナトリウム)が入っており、他は水です。

その後、ランダムに3回、他の人とコップの液体を混ぜ合わせ、最後にアルカリ性でピンクに変わる試薬(フェノールフタレイン)を垂らすと、40個のうち19個がピンクに変化。
性感染症の広がるリスクを実感しました。

かなりの数がピンク色に染まり、生徒たちは驚いた様子でした。

授業の締めくくりは、性的同意についての理解です。

よこすか内科小児科・はるこレディースクリニック 副院長・横須賀治子医師:
相手の気持ちを確認しながら対等な立場で触れ合うこと。これが性的同意です。相手の好意を嫌だと感じても、相手に遠慮して自分の意見を言えなくなってしまった時は、性暴力につながってしまうかもしれない。

さらに、月経や射精、色々な性の在り方を表すLGBTQ+など幅広いテーマが取り上げられました。

授業終了後、生徒たちからは「ネットに流れている情報も、合っているのか合っていないのかという部分もあって、正しい情報を知れてよかった」「性感染症についてよく知れたと思う」という声や、「(性的同意についての理解は)自分勝手なことではなく、しっかり相手の気持ちを考えて一回聞いてみたりすることは大切だと思った」といった声が聞かれました。

このように、性に関する様々な問題を包括的に学ぶ授業は全国的にはまだ限られていて、地域や学校によって取り組みに大きな差があるのが現状です。

さらに、学習指導要領の「歯止め規定」により、性交渉や妊娠などで具体的な内容に踏み込むのが難しいとされています。

「歯止め規定」の部分を授業に盛り込んだ理由について、よこすか内科小児科・はるこレディースクリニックの副院長・横須賀治子医師は「性交渉と妊娠ということをしっかり入れないと、どうやって自分を守っていくのか正確な話が伝えられないので、避けて通れない部分だと思う」と話します。

専門家を呼んで授業を行った理由について、木更津市立金田中学校・保健体育科教諭の小林征史さんは「私たちだけでは知識や彼らに届くところが、本気で届くところまでやってあげたい。しっかりと知識をつけようというところでなった」と話します。

誰もが安心して学べる性教育。
生徒たちは、自分や他者をより深く理解するきっかけを得たようです。