6月21日に組み合わせ抽選会が行われる全国高等学校野球選手権 静岡大会。今大会には県内で初めて特別支援学校の選手が参加。連合チームで挑む最初で最後の夏に懸ける思いに迫りました。
6月中旬、連合チームの選手たちが一堂に会しました。
県東部と西部、距離にして約200キロ。
選手は3校あわせてもわずか10人です。
熱海と佐久間は2023年も連合チームとして夏を戦った盟友ですが、2025年、この輪に1校加わりました。
県高野連に初めて加盟した浜北特別支援学校です。
部員は3年生の池田謙信 選手ただひとり。
浜北特別支援学校・池田謙信 選手:
野球の面白いところは、ミスしてもみんなで声をかけたりするのがおもしろいなって思いました
2年前、侍ジャパンが世界一になったWBCでの雄姿を見てから熱い思いがこみ上げてきました。
「自分もあんなバッティングをしてみたい」
そんな彼に特別支援学校の袴田裕之 教諭がある取り組みを紹介しました。
浜北特別支援学校・袴田裕之 教諭:
私自身が“甲子園夢プロジェクト”というもののスタッフとして携わっていたので、「こういう活動をしている場があるよ」ということで本人に勧めました
甲子園夢プロジェクト。
知的障がいのある特別支援学校の生徒たちにも甲子園を目指せる環境を整えようと4年前に発足し、池田選手も2025年1月、このプロジェクトで硬式野球を始めました。
浜北特別支援学校・池田謙信 選手:
初めてやってみた時はまだできてないなっていう感じで、難しいプレーはたくさんありますけど、課題を見つけながらそれをつかんでいって、そこからやり直していくと僕は行けるなという感じだと思いました
全国でも数えるほどしか例がない特別支援学校の挑戦。
知的障がいだけでなく、生まれつき耳が聞こえない池田選手は人工内耳と補聴器をつけながらプレーをしています。
もちろん最初は硬式ボールへの恐怖心もありました。
それでも地道な練習で少しずつ克服していったのです。
また…
熱海高校の選手:
謙信、エンドランっていうのは、今のがボール球でも謙信は絶対に当てなきゃいけない。だから、ボール球を振らなきゃいけない
チームプレーである以上、習得しなければならないのがサインプレー。
試合がある休日しか集まることができない彼らにとって、この練習時間は1分1秒たりとも無駄にはできません。
必死で食らいつくその姿。
仲間たちも確かな成長を、そして、互いに高めあえる存在として彼を認めています。
浜北特別支援学校・池田謙信 選手:
僕はこの中にいると楽しいです
経験の差から試合では控えに。
それでも彼は“いま自分には何ができるか”をよくわかっています。
仲間を盛り立てるコーチングは「一番得意なプレーだ」と彼は言います。
自分が打席に立てなかったとしても、チームの勝利のために。
心の底からそう思えるのも必然でした。
浜北特別支援学校・池田謙信 選手:
(仲間に)感謝しています。家で練習して、学校で練習してというだけなので、それでもまだ足りなかったので、今ここにいるメンバーで一緒に教えてくれて僕もこうやってついていけるようになったという思いがあった
ひとりじゃない。
彼には“仲間”がいます。
野球で結ばれた絆とともに挑む“最初で最後”の夏。
支えてくれる全ての人への感謝を胸に…新たな歴史を刻む戦いが始まります。
浜北特別支援学校・池田謙信 選手:
笑顔のある、みんなで最後まで笑えるような試合にしたいなって。そういう大会にしたいなって思っています