明治から昭和にかけて使われていた伝統的な衣服や晴れ着など、鹿児島の「装い」の歴史に触れられる企画展が鹿児島市で開かれています。
鹿児島市の県歴史・美術センター黎明館で開催中の企画展「装いの民俗」。
鹿児島の伝統的な衣服や仕立てに使われる道具など、約70点が展示されています。
その多くは県内各地から寄贈された物です。
こちらは、南西諸島を中心に自生する植物「イトバショウ」を使って作られた衣服。
奄美大島などで古来から作られてきた物で、普段着や仕事着として用いられてきました。
通気性や吸水性に優れ、高温多湿な気候に適しています。
植物から衣服を作るのはとても時間のかかる作業で、半年ほどかけて1着完成させていたといいます。
昭和初期まで甑島でさかんに作られていたクズタナシ。
葛の茎を使って織られたもので、その丈夫さから山や海での仕事着として重宝されていました。
祭りや祝いの場で使われた晴れ着も展示されています。
特別な日に身につけるものならではの思いを込めた細工について、学芸員の古殿さんに聞きました。
県歴史・美術センター黎明館 学芸課・古殿志賀子主査
「袖口に注目してください。赤と白の糸でできた房がついている。(昔は、着物の)袖口や裾、襟から悪いものが入ってくると信じられていた。赤や白の糸を付けることで悪いものを避けるための『魔除け』の意味が込められていると言われています」
細工に込めた祈りがより顕著に表れているのが子供用の衣服です。
古殿志賀子主査
「背中側の襟の下、分かりますか?」
着物の首元や背中に布の飾りや刺繍といった目立つ細工が施されています。
古殿志賀子主査
「この産着には「背守り」といって、赤ちゃんが無事に大きくなるよう願いを込めたお守りが付けられている」
地域性が表れたこんな「背守り」も。
古殿志賀子主査
「これも同じ「背守り」だが、袋の中に牛の角や雑穀類、豆類などが入れられている。もしかしたら、牛を身近に飼っていたとか、そういう地域性もあるかもしれない。長い時間をかけて仕立てられた衣服に、自分の家族の安泰や健康といった願いや祈りが込められていることをこの展示を見て感じてもらえたら」
来館者
「(衣服に)親の思いが詰まっているようでいいなと思った」
「着る人への思いを込めて作られている物だと知りすごいと思った」
貴重な衣服を通じて伝統や人々の思いが感じられる企画展「装いの民俗」は、鹿児島市の県歴史・美術センター黎明館で、8月31日まで開かれています。