6月20日金曜日、地震と豪雨の二重被災から立ち上がる能登の復興を願う映画が県内で先行公開されます。
タイトルは「生きがい IKIGAI」
主演は金沢市出身の俳優、鹿賀丈史さん。そして監督は30年ぶりにメガホンをとったという演出家の宮本さんです。石川テレビを訪れた宮本さんに、映画に込めた思いを伺いました。
宮本監督:
「僕、元々自分の母が21歳で亡くなったりとか、自分が交通事故で死にかけて、生きているのが不思議だと言われたりとか、そのあと親父が死んで自分ががんになったんですね。がんサバイバーになったりとか…『死』というものがガンガンガンっと、僕の人生で大きく目の前に立ちはだかる。その経験が多くなると、最初はその度に落ち込んでいたんですが『冗談じゃない』と。『死』に焦点を当てるんじゃなくて『まだ生きてる』という事を僕は言いたいってなってきたんですね。それで、能登にいる特に高齢者、おじいちゃんおばあちゃんたちに…被災関連で気持ちが弱くなって亡くなるという方たちが多くなるその前に、何か心を伝えることができないかと、これだけです」
映画の舞台は、被災した能登の山奥。土砂災害で崩壊した家から救出された元教師の山本信三は、近隣住民から「黒鬼」と呼ばれ、距離を置かれている孤独な男。自分の生きる意味を見失い、自暴自棄となっていた信三だが、ボランティアで家を訪れたある若者との心の交流を通して少しずつ前を向き始めます。
映画を作るきっかけとなったのは去年9月、宮本さんが個人的にボランティアで能登の各地を訪れた時の出来事でした。
宮本監督:
「『(住民の方が) 亞門さん何しに来たの?カメラ付いてきてるの?』『いや、カメラはついていなくて個人でボランティアに来てます』って言ったら、『えーっ』て言われて…『あなたねぇ、ボランティアしなくていいよ』って言うんですよ」「僕が軟弱で重いものを運べないからかなと思ったらそうじゃなくて、『あなたみたいに名前がある人は、この状況を少しでも広めてほしい』と…。やられちゃった…と思って。僕は舞台の演出家なので、この様子を伝えることはできない。映画監督でもないし、報道の人ではないのでこの様子を伝えることはできないと…『本当に申し訳ない、僕出来ないんですよ、僕にできるのは荷物を運ぶことぐらいなんです』といって、別れた後にガツンと来ちゃって…『お前は名前があるのに広げることもできないのか』みたいに自分を責め始めちゃったんですね…」
30年ぶりにメガホンを取ることを決意した宮本さん。信頼できるスタッフを集め、去年12月から輪島市、七尾市、穴水町などで撮影を行いました。
宮本監督:
「僕たちがエネルギーをもらったんです、撮影していてずっと…撮影現場どこに行っても皆さんが『ありがとう』と。『能登のことを伝えてくれてありがとう』と差し入れしてくれたり、化粧室を貸してくれたり、家の中まで…もう皆さんの優しさに、僕たちが方言もちゃんと言わないと失礼だなというか」
いよいよその作品が19日、輪島で試写会が開催されます。
宮本監督:
「すごく嬉しいとともに、僕が監督として失礼がないかな、大丈夫かなという心配があります。やっぱり地元の、一番痛みを知っている方々達が観て『いやー』と。思い出したくないという方や色んな思いを持つ方がいらっしゃる。それぞれのご意見でいいと思うのですが、私としてはただ、変にドラマを作りたいというのではなくて、少しでも寄り添う事ができるならと思って…ドキドキして明日を迎えます」
地震と豪雨の二重災害で心を閉ざした一人の男性が見つけた「生きがい」とは?
映画「生きがい IKIGAI」は20日から県内で先行上映。来月11日から順次全国公開されます。
宮本監督:
「能登の皆さん、大好きです。色んな笑顔や勇気をもらったので、僕こそ能登に助けられています。僕の小さなお返しとしてこの映画を作らせてもらったので…映画には鹿賀丈史さんや常盤貴子さんらの熱い思いが凝縮していますので、もし宜しかったら映画を見てください。これからも皆さん、人生楽しんで、存分に死ぬ瞬間まで出来ることをやっていきましょう。
「生きがい IKIGAI」と同時上映されるのは、映画のメイキング映像の撮影をきっかけに訪れた能登で、人々の声を収めるうちにドキュメンタリー作品として生まれた手塚旬子監督作「能登の声 The Voice of NOTO」フィクションとノンフィクションを同時に体感することで、二度の災害に苦しむ「能登の今」を知り、想いを馳せることが、能登の未来への一歩に繋がってほしいという願いが込められているそうです。
そして、この作品の収益の一部は、能登復興のために寄付されます。