大衆魚として昔から親しまれてきたサバ。
しかし、いま異変が起きています。
村田彬 記者:
午前3時前です。港ではこれから漁に向かうために荷積み作業が行われています
静岡県伊東市の富戸港。
6月17日、漁に出るという1隻の船に同行しました。
城ヶ崎海岸富戸定置網・秋元正樹 漁労長:
きょうは(海が)穏やかで良いと思います。道中は潮が良いかな速くないかなとか、何がいるかなとかワクワクしながら向かっていますね
船を走らせること20分。
沖合8kmの漁場に仕掛けられていたのが定置網です。
海底に設置された網をモーターで巻き上げその後漁師たちが手でたぐり寄せていきます。
村田彬 記者:
いま網が引き上げられました中を見てみるとたくさんの魚が確認できます
船上で仕分けされていくのはイサキやメジナ、それにヒラマサ。
一方…
城ヶ崎海岸富戸定置網・秋元正樹 漁労長:
サバもいたんですけどほんの少しですよ
この日獲れたサバは700kgほど。
かつて、多い時では1度の漁で約10t水揚げされたこともありました。
県水産・海洋技術研究所によりますと、県内の主要4つの港で水揚げされたサバは2017年に2万tを超えたのを最後に減少傾向が続き、2024年は5000t未満に。
全国でも2024年は25.6万tと、50万tを超えていた7年前から半減しています。
県定置漁業協会・日吉直人 会長:
サバはもともと静岡県の県魚ですから、一番生産高の多い魚種なんですけれども、味噌煮なんかに入れる大きなサバがあるじゃないですか、あれが非常に少ない
サバの不漁は地元の特産品にも影を落としています。
創業76年の老舗山六ひもの店。
キンメダイやカマスなど地元で水揚げされた魚を中心に50種類ほどのひものを扱っています。
山六ひもの店・中嶋健太 常務取締役:
一番人気があるのが脂が乗ったアジなんですけど、その次にサバのみりんとサバの塩は常に人気上位の主力の商品です
いま店にある伊東で水揚げされたマサバの開きは2枚のみです。
山六ひもの店・中嶋健太 常務取締役:
これ(ひらき)は毎年1月くらいに揚がるマサバなんですけど、1月くらいが一番脂がのっているのでそれを冷凍して販売しているという
また、ノルウェー産のサバも扱っていますが、円安に加え国内産のサバの流通量減少で仕入れコストが上がり、2割ほど値上げせざるをえなかったといいます。
山六ひもの店・中嶋健太 常務取締役
非常に心苦しいところ。ただ、自然のものなので僕らも水揚げがあって初めて商売ができるので、限られた資源の中でより良いサバを見つけて加工して販売していこうと思っています
では、不漁の原因は…。
県の研究所に勤める専門家は、そもそもの資源量の減少に加え、海水温の上昇が要因として考えられるといいます。
静岡県水産・海洋技術研究所
市川喬雅 研究員:
マサバは北の方から段々南下して降りてくるんですけれども、そこで回遊の妨げになるような水温になってしまっていた。漁場形成しにくいような水温が沿岸部に形成されていたというのが原因の1つだと思います
その上で資源の回復には長期的な漁獲量の管理が必要だと指摘します。
静岡県水産・海洋技術研究所
市川喬雅 研究員:
親になるまでにゴマサバは2年、マサバに関しては成長成熟が遅れていると言われているので3~4年。親になるだけでそれだけの年数がかかるので、ずっと何年も(サバが)増えないままでいるので難しいんですけど、5年~10年の長いスパンで考えないといけないと思います
安定的な水揚げ量の確保と資源の保護。
両立させていくための対応策が求められています。