増加する「特殊詐欺」被害ですがいま、新たな手口が県内でも発生しています。使われているのは金塊。背景には金の価格の高騰が指摘されています。
【警察官を名乗る男(イメージ)】
「私、警視庁捜査二課の〇〇と申します資金洗浄に加担しているのではないかという容疑がかかっておりますが…」
県内で去年の秋ごろから増えている警察官をかたって金銭を要求する特殊詐欺。
広島県警によると、県内の特殊詐欺による被害は、今年に入って先月末の時点で71件、被害額は5億円を超えています。
【県警減らそう犯罪情報官:直原順一警部】
「警察からの電話にびっくりして焦る(警察官が)捜査の対象になっている容疑がかかっている逮捕するという話をすることはない」
こうした中、県内では今年4月、警察官をかたる新たな特殊詐欺の被害が発生。
【不審な電話(イメージ)】
「あなたに携帯電話の不正契約の嫌疑がかかっている。このままでは逮捕することになる」
警察官を名乗る男からこう言われたのは広島市中区に住む80代の女性です。
さらに検察官を名乗る男から。「あなたの資金調査をする必要がある」
男は潔白を証明するために資金調査が必要と告げ、金塊を購入するよう女性に指示。女性は指定された実在する貴金属店の口座に現金およそ1000万円を振り込み、金塊600グラムを購入。
金融機関の職員に振り込んだ理由も聞かれましたが…。
「金の価値が上がっているので現金を金に換えるため」
指示通りに説明し、疑われませんでした。
さらに…「その金についても調査の必要がある」
検察官をかたる男から、こう指示され、自宅付近の指定された場所に金塊を置いたところ、何者かによって回収されました。
その代わりにポストへ届いたのが「資産お預かり証」。金融庁と記されています。
女性は資金調査というウソを信じ込んでやり取りを続け、あわせて現金2002万円をだまし取られたということです。
警察庁によると、こうした手口の詐欺は全国で起きていて、去年6月から12月の間で同様の被害が21件発生し被害額は9億円を超えています。
なぜ、今、「金塊」が詐欺に利用されているのでしょうか。
【県警減らそう犯罪情報官:直原順一警部】
「金融機関は客が詐欺にあわないように水際対策を強め振り込みを確認している犯人グループは手を替え品を替え考えている」
広島市中区の貴金属店では金を使った特殊詐欺が多発していることから客の目につく場所へ注意喚起するポスターを貼っています。
イスラエルとイランの交戦で中東情勢が緊迫化する中、金の価格は高騰し続けおととい、金の小売価格は1グラムあたり1万7678円となり、過去最高値を更新しました。
【ナカオカ:中岡英也専務取締役】
「金は今の価格より将来的にもっと上がるかもしれない特殊詐欺で盗った金をそのまま置いてすぐに売らずもっと上がったら売る」
投資熱が高まり、不審に思われにくい「金」。
店や金融機関は客の異変に気付き、声をかけることが求められています。
【スタジオで辰巳キャスターが詳しく解説】
そもそも特殊詐欺は犯行グループが役割を分担して組織的に犯罪を行っています。
犯行グループは「指示役」を中心として電話をかけ、被害者から金をだまし取る「かけ子」や、被害者の自宅などで現金やキャッシュカードを受け取る「受け子」、被害者からだまし取ったキャッシュカードを使ってATMから現金を引き出す「出し子」などがそれぞれ役割を分担し、組織的に犯罪を犯します。
特殊詐欺に関わり有罪判決を受けた被告のうち、執行猶予が付かない実刑判決を受けた人の割合は組織の末端である受け子・出し子でさえ過半数を占めています。
吉中先生、これは裁判所が重い刑罰を科しているということでしょうか。
【広島大学法学部:吉中信人教授】
そうです。窃盗や一般的な詐欺に比べると、実刑になる率は明らかに高いと思います。理由として特殊詐欺は被害金額が非常に大きい。金額が大きいと実刑判決を受ける確率が高くなります。
そのあと、示談がおこなわれるかどうかも重要です。被害金額が高いほど示談は難しいです。
さらにこうした特殊詐欺は組織性をもっていて計画的であるとこともあると思います。
【加藤キャスター】
特殊詐欺は被害額が大きく悪質性も高く、示談も成立しないことが多いということです。
初犯でも実刑となる傾向が高いSNSなどで「短期間で高収入が得られる」などと犯罪の実行者を募集する闇バイトの投稿が掲載され、安易に応募してしまうことが大きな社会問題になっています。絶対に手を出さないでください。