かつての自然豊かな姿が少しずつ戻りつつあるようです。〈生物多様性の保全〉と〈洪水被害の軽減〉を図ろうと、球磨郡相良村で進められている湿地再生のプロジェクト。先日、復元させた水田で田植えが行われました。
【MS&ADのグループ社員(東京から参加)】
「田植えは『すごく体力が必要なんだ』ということを実感した」
【MS&ADのグループ社員(埼玉から参加)】
「楽しかった。結構ふれあいもできたし、また来たいと思った」
相良村役場の近くにある瀬戸堤自然生態園です。
かつては『深水湿原』と呼ばれ、腰までつかるほどの湿田が広がっていました。
しかし、30年ほど前に耕作放棄地となり、湿原にはヨシなど背の高い植物が生い茂り、陸化が進行。そこに生息していたハッチョウトンボなど希少な生き物は徐々に姿を消していきました。
【熊本県立大学 共創の流域治水研究室 一柳 英隆 学術研究員】
「いろんな生き物がすめる場にすることと、洪水緩和の機能を高めるための取り組みをやっています」
2020年の7月豪雨をきっかけに球磨川流域で流域治水の研究を行っている熊本県立大学を中心とした産学官のグループが〈生物多様性の保全〉と〈洪水被害の軽減〉を目的に湿地の再生に着手。損害保険大手の『MS&ADホールディングス』のサポートを受け、ヨシなどを取り除いたり、湿地を耕したりする作業を定期的に行っています。
【MS&AD サステナビリティ推進部 須藤 達哉 部長】
「自然災害が起こる前にどういう備えをしておくのか。防災・減災という観点からこういった活動は大事だと思っている」
6月14日は復元させた湿田で田植えが行われ、大学の研究者や地元の住民のほか、関東や関西から駆けつけた『MS&AD』のグループ社員など合わせて約40人が参加しました。
参加者は胴長を着てもち米の品種である黒米と赤米の苗をぬかるむ田んぼに時折、足をとられながら手作業で植えていました。
【MS&ADグループ社員(埼玉から参加)】
「田植え自体がほぼ初めてなので」
「靴下びっしょびしょ」
3年前に始まった〈湿地再生のプロジェクト〉。田植えができるような水場も増え、徐々にかつての姿を取り戻しつつあります。
【球磨湿地研究会 宮川 続 代表】
「少しずつやった効果が出てきている」
「あの背の高いヨシが見られなくなりつつある。でも地中に根っこはたくさんあるので、刈る作業をしなくなると、おそらくまた元のようにヨシが茂ってしまうので、ずっと手を加え続けいくことが大切」
また、この日は水場にどんな生き物が生息しているのか、観察会も行われました。
子供たちがすくった網の中からはフナやドジョウが出てきた一方で、水草類の生息を阻害する特定外来生物の〈アメリカザリガニ〉も大量に確認されました。
【熊本県立大学 共創の流域治水研究室 一柳 英隆 学術研究員】
「ドジョウやメダカなどが増えてきている点ではうまくいっていると認識している。ただ、ハッチョウトンボが当初期待していたほど戻ってきていない点と、水草類が戻ってきていない点については課題が残っている」
かつての自然豊かな湿地を取り戻そうと産学官と地元住民が連携し、課題を一つ一つ解決しながら前に進んでいます。